学習棟A棟 屋上。
夕方なのに急にまぶしく感じられた太陽のせいで周りの落下防止のため設置された鉄製の柵に両腕でもたれかかってしまう霧斗はつい、しまった、と思ってしまう。
「こんな学校を一体どこの誰が、」
そんな少年の思いも知らず、何事もなかったようにまた話を進めようとする茶髪の少女もまた鉄の柵に上半身を預けるようにもたれていた。
「な、なぁ。こんなところで話して大丈夫なのか?」
そう割って入ったのは当然隣にいた少年の方で、
「ああ、作戦の話以外ならね。」
とあっさり言ってしまった少女は少し笑ってしまう。
「ええ!騙された気分だ…」
「なに?」
そんな初耳を聞いてすっかり落ち込んでしまった霧斗だったが、その理由となったあすかと言えば、全く気付いた様子もなく、首をかしげきょとんとしている。
「…いや、ってそれ缶コーヒーか?」
少年はあすかが手に持ったどこか見覚えがある缶コーヒーを指摘した。
「ティーコーヒー、おいしいわよ。…それが質問?」
「ああ、いや、あいつ等は?」
「ん?」
霧斗が今度指差したのは校庭で部活に励んでいる生徒たちだった。
丁度あすかが少し身を乗り出して見ると陸上部の選手がたった今走り出したところで、自然と目が追ってしまう。
「今は部活やら帰宅やらの真っ最中ね。」
「お前らはやらないのか?」
「そんなことやってたら殺されちゃうじゃない。」
「ああ?」
少年は怪訝な顔を作った。
「この世界の言いなりになって授業や部活なんてしてたらいつかアンドロイドたちに抵抗できず、私たち人は殺されてしまう。」
「人が?まるであいつらが人じゃない、みたいな言い方だな。」
大橋に入た学生二人をどうでもよさそうに見ていた少年がそんなことを言った直後だった。
驚くべき返答が返ってくる。
「その通り。彼らは人間じゃない。」
「え?」
De-tao-ba-araibu16 end