小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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「せ…殲滅?」

霧斗はついメンバー全員が一斉にアンドロイドに向かって突撃していくのか、と想像してしまった。

しかしそんな少年の妄想とは裏腹にあすかはまた不敵な笑みを浮かべて、

「昨日倒し損ねたアンドロイド数機がまだこの学園内に潜伏しているはずよ。
連中も昨夜の戦闘で大分ダメージを負っているはず。そこで、油断しているロボットに付け込んで一気に裏から叩く!!」

「そっちの殲滅かよ!!」

昨夜の出来事にあったようなことを連想していた霧斗にとっては明らかにこちらが正しいことをしているはず、と信じていたのだが、今となってはどちらが正義なのかも希薄になってしまった。

「しかもそれ不意打ちじゃあねぇか!いじめかよ!失望したぜ、武器や頭数だけ揃えやがってよ!!」

少年がそう吐き捨てるように言ったのと同時に、

「貴様、それはあすかに対する侮辱発言だ。撤回してもらおうか。」

その霧斗の言葉に瞬間的に反応したのは当然、木刀を持ったあの男・渦巻で、そういうや否や間も開けず腰にぶら下げた木刀を伸ばして少年の首元に狙いを定める。

「…なんでだよ!!」

そこで今度は横綱なみの大男・松山が割って入った。

「我々がやっているのは消して不粋な真似などではない。こうでもしなければ俺たちが殺されるやもしれん。」

「でも殲滅するって言ったじゃないか!!」

「ええ、文字通り殲滅するわ。」

そう言って校長の机に置かれたパソコンを起動させたあすかは素早くマウスを移動させてダブルクリック。
数秒してスクリーンに映し出された映像が変わり、今度はこの学園の模型図のような立体図形が展開された。

「いい?あなたはアンドロイドの動きを止めるバリケード班。作戦ポイントおよび出現ポイントである食堂を取り囲むようにそれぞれ指定のポジションで武装待機。安心しなさい、楽なところにおいてあげる。細かい位置は後で大村君か高杉君に確認して。」

そう言われて後ろに振り返った霧斗は出入り口の方で手を振ってくれている小柄な少年と一々メガネを持ち上げる実はバカ、…らしい男が目に入った。

そして最後にあすかは半被掛けるように一言。

「岩崎さん、今日も期待しているわ。」

「ああ」

ソファーに座っていたピンク髪の少女は適当な調子で返答したがそれ以上はなかった。実は彼女こう見えてこのチームの狙撃班かつ、リーダーなのだ。

確かに見ればそんなオーラが身に沁みついているように思えるが。

あすかは再度、確認をするように説明を続ける。


「アンドロイドが来たら各自発砲。それが増援要請の合図になるわ。どこかで銃声が聞こえたらあなたも駆けつけるように。」

少年は黙ってうなずく。

そして茶髪の少女は付け足すように、

「作戦開始時刻は十八時三十分(ひと・はち・さん・まる)」

スクリーンに映し出された学園大食堂の立体図形がズームされより青白い光を強く発している。あすかが見るパソコンには、作戦開始時刻・作戦終了予定時刻・現在時刻が表示されもうカウントダウンが始まっているようだ。

この部屋にいる全員がリーダーの言葉を待つ。

ベレー帽を被った茶髪少女は大きく深呼吸をすると、決めるように告げた。

「オペレーション・スタート!!」

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