小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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第二連絡橋。

アンドロイドの攻撃が再度霧斗を襲う。

身構える暇などなかった。

わずかに離れたところに斬撃が直撃し衝撃波が炸裂した。ゴパァァ!!という閃光のような速さで地面を引き裂いていく音は、一瞬遅れて霧斗の聴覚を叩く。

衝撃波によって耳の感覚はやられているはずなのに、さらにその上からこじ開けるように莫大な音が襲いかかってきたのだ。

だが、いちいち苦痛に文句を言っている余裕はない。

(現れた…本当に表れやがった…ッ!!)

振るえる腕を強引に伸ばしてアンドロイドに拳銃の狙いを定める。

対する白いロボットと言えば凶器と化した太刀を地面に引きずるようにしながらゆっくりと少年に歩み始めた。

そこで彼はようやく気付く。

(完全に見くびられてる…くそっ、撃ってやる!!でも当たるのか?)

アンドロイドの進行は止まらない。
今なら完全に無防備だ。

(やらなきゃ、やられるんだ。何の容赦もなく、な…)

少年はとっさに瞳を閉じる。
そしてついに覚悟を決めた。

震える指先で勢いよく銃の引き金を引く。

直後。
ドン!と。
少し遅れて鈍い音が響き、何かが砕け散るような破裂音が辺りに広がった。

霧斗はおそるおそる目を開けると驚愕する。
発射された銃弾がアンドロイドの右腹部を粉々に粉砕していたのだ。

ロボットは少し驚いた様子で首をかしげる。見ると破壊された右腹部の破片がアンドロイドの体に数多く突き刺さっており、肝心の腹部は片方だけくっきり穴が開き所々で火花が散っていた。

おそらく初心者が射発してもあたらないと予測していたのだろう。

(あ、当たった!!)

予想外の結果にアンドロイド思考の機能が一瞬停止し、しばらく動かなくなった。
これは間違いなく偶然によって引き出されたものだろう。単純に運が良かっただけだ。

動きを止めたアンドロイドを見て安堵した霧斗だったがその考えはすぐに改めさせられる。

光を失ったロボットの瞳に紅蓮の色が戻った。
再びアンドロイドは殺戮のため起動される。投げ出されるように地面に転がった二メートルはありそうな太刀に腕を伸ばすと、そこですべてが元に戻った。

唯一の誤算は腹部の損傷のみ。

ターゲットを補足したロボットは速やかに行動を開始する。
一方霧斗は橋の地面足がへばりつき動くことが出来ずにいた。

もはや距離の概念などとっくのとうに消え失せている。

(くそっ、足だ。足に当たれば十分だったのに…ッ!!)

迷っている時間はない。

少年は意を決して銃を連射した。

パンパンパン!!
乾いた音が連続して銃弾がロボットを襲う。

しかし。

まるで曲芸のようだった。
一発目を難なく交わしたロボットは続いて二発目の銃弾を前に構えた長い刃ではじくと最後の弾を一瞬の間合いで二つに切り裂く。

小さな爆発が起こり、爆風により吹き飛んだ砕けた銃弾が少年の頬の真横を通過した。
額から汗が噴き出し始める。

とたんに足が驚くほど軽くなり、それは自身の体が警告しているからだと理解したのは差もない事だった。
そのまま本能に従いその場から駆け出した霧斗は最後に絶叫する。

「くそっ、なんだよそれ!!」

連絡橋を後にする少年と、それをあざ笑うかのように追跡するアンドロイド。

形勢はいっきに逆転した。

アンドロイドの逆襲が始まる。

De-tao-ba-araibu21 end

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