小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


霧斗は第二連絡橋付近を全力疾走で駆け抜けていた。

途中振り返り何度か発砲したが、そこが限界だった。

少年は舌打ちする。

「くそっ!当たらないッ!!」

銃弾は正常に射発されていた。しかし、それ以上がない。

後ろでは裂かれるような甲高い金属音が鳴り響き、火花が散るよう音が連続する。同時に小さな爆発が生まれた。

ドォォン!と。
小規模な爆発が引き金となり、それと連鎖するように爆風と炸裂音が続く。

恐怖がせりあがるには十分だった。

「ッ…!!」

恐怖の権化と化した敵対者は当たり前のように追ってくる。

距離は一向に縮まっていくばかりだ。
アンドロイドに体力と言う概念は存在しないのか。

考えている時間などない。

「なんで、なんで追ってくるんだッ!!」

もはや奇声も近い声で叫ぶ少年は、そこで不意に視界に入った校舎の屋上に小さな明りが灯っていることに気付く。

直後。

ツツツツツツツツツツツツッ!!
もはや音が消えた。

一瞬、まばゆい光が直撃したのかと思ったが、違う。
そもそも、霧斗の体は数メートルノーバウンドで飛ばされ、床に叩き付けられる。

正直な話。

あれは銃撃の一線を越えていた。

「ご…ぐがっ!?」

遅れるようにすさまじい爆音が辺りを埋め尽くした。
地面はその衝撃に耐えられなくいくつもの断層を生みバラバラに砕け散る。

轟風が吹き荒れた。

辺りは大量の粉塵で包まれ、一面が白銀の世界と化す。

滑腔砲と言うものをご存じだろうか。
戦車の主砲などに使われるタイプの砲である。

その砲撃を正面から受けてしまった場合、どうなるかは一目瞭然だろう。

率直に言って。

五体不満足でいるのが逆におかしいくらいだった。
地面に叩き付けられたまま起き上がることの出来ない霧斗の視界が一気にぶれる。

周辺の人工物はすべて破壊され、衝撃波で木々が根こそぎ吹き飛ぶ中、大きな影が地面に立っているのがわかった。

アンドロイドだ。

十メートルくらいの距離がある。

ここからでは無事かどうか解らない。が、少なくとも無傷ではないようだ。滑腔砲でまともに狙われたにしては奇跡と言っていい状況だ。

ドォン!ドォン!という、複数の砲撃にも近い音が霧斗の耳を叩いた。

砲撃に近い狙撃がまた再度再開される。
撃っているのは同じチームの狙撃班だろうか。

どうやら自分の事は全く考慮されていないらしい。
あえて標準が定まっていないのは狙撃手なりの良心だろう。

霧斗の手足も、だいぶ力が戻ってきた。

「体…は、まだ動くみたいだ…」

ロボットの生死を確認するため、そして今度こそ確実にその息の根を止める。
ふらつく体を無理やり起こすと、彼は身を低くしたまま走った。

少年は戦火の嵐の中にあえて飛び込んでいく。

De-tao-ba-araibu23 end

-23-
Copyright ©いろは茶 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える