砲撃に近い銃弾の雨が降り注ぐ中、少年はアンドロイドの元へ走った。
恐ろしいほどの衝撃波と地割れ同然のぐらつきが霧斗を容赦なく攻撃する。
暴風が吹き荒れた。
「くッ…!!」
全身で受ける莫大な破壊のエネルギーを前に彼は身動きすることすら許されなかった。
このままでは動くことが出来ない。
不意に視界が移動してその場に立ち尽くしたロボットを映し出す。
距離はまだ十メートルほどあったがロボットの姿ははっきり捉えることが出来た。
気味の悪い機械音が鳴り響く。
アンドロイドが反応した。
白色に加工された鋼鉄の二本脚でこちらに近づきつつ、こちらに赤き輝きを放つ太刀のような武器を躊躇なく
向けてくる。
片腕を失い腹部の一部を粉々にされたにも拘らず、ロボットはまだ動く。
絶望と恐怖がどうしようもなくせりあがった。
カラカラに乾いた喉からは悲鳴すら出せなかった。
ただ一言。
(やっぱり生きてる…!!)
少年は無我夢中で身構える。
斬撃が来た。
音よりも早く飛来する死の一撃が、霧斗の真横を一瞬で切り裂いた。
だがそこで終わりではない。
地面の内部まで切り裂いた斬撃の衝撃波はそのまま全体に広がり、外側の面から放射状にまき散らされた。
大地そのものを大きく震わせ、巨大なスピーカーのように。
ッッッドン!!!!という爆音が、霧斗の耳を打った。
「ぶっ……、げ、ほっ!?」
なぎ倒される。地面が衝撃に耐えきれず、数ミリ単位の細かい破片が剥離して霧斗の腕に突き刺さっていた。とっさに両腕で身構えたのは、我ながら運が良かったと少年は思う。
(あれだけ銃弾の餌食になったのになぜ動ける!?)
自分が生き残った事よりも、まず目の前の疑問を優先させる霧斗。
(銃撃を、すべて避けた?いや、それは無理だ。数秒も間のない百発くらいの弾を回避することは不可能だ。)
となるとSFによく出てくるような、とんでも道具があるというのか。
いや、こんないかれた世界だ。秘密道具の一つや二つぐらいあっても不思議じゃないだろう。
(ってことは、なんでも跳ね返しちまうような超SFアニメ的かつ、お約束…)
のろのろした動作で立ち上がり、霧斗は黙って考える。
(まてまてまてッ!!彼にもしそうだとして、その突破口はなんだ?)
高い機能を持ち合わせているがゆえにそのロボットに弱点が生まれる。戦いにおいて最もじゃまなリスク。それは…
(今までの攻撃パターンから見ると何とも言えないけど、あの銃撃を受けている時だけは一向に攻撃はしなかった。つまり、その機能の欠点ってのは…)
これはあくまで自分の妄想であり勝手な推測。
しかし、試してみる価値はある。
「そうか」
霧斗は顔を上げた。
この状況を一気に打開するわずかな突破口。
少年は今更諦めたようにわずかに笑いながら、
「ハハハ、やっぱ戦うしかないんだよな」
この世界の規律など関係ない。
もし、殺されるのがこの世界のルールだとすれば。
―――そんなものぶち壊してやる。
この日、学園のどこかで誰かが言った。
「抗ってやる、この世界にもお前らにもな。」
De-tao-ba-araibu24 end