小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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オペレーション実行中にも拘らず学園の庭園で昼寝をしていた戦闘員のリーダーおよびマフラー少女の栞は、大きな木のてっぺんで眠たそうな瞳をクワァ!!!!と大きく見開いた。

「大村くんが悪の道を走ろうとしている!!」

学園 第二連絡橋付近 庭園

「まったく栞さんには困ったものです」

と呟いているのは、長身メガネの参謀役、高杉だ。夜の庭園をのそのそ歩く少年の隣には、力士並みの巨体を誇る若横綱の松山が歩いている。

元々高杉は参謀役のため基本的にあすかのそばで指示のサポートを行っている立場であり、オペレーション時の戦闘には一切出ていかないのだが、今回はそのあすかが新型アンドロイド討伐のため外に出てしまっていた。

高杉は両手で頭を抱えて、

「きっと栞さんには団体行動という概念が存在しないのですよ。あー、このままだと戦闘員リーダーの捜索だけで時間が潰れてしまう。ただでさえ探すのが大変だというのに…」

「あれで今まで何とかなっていたのが不思議なくらいだな。」

松下は言いながら右手に持った懐中電灯を適当に振り回す。

「戦闘員のリーダーである以前に、根本的な知識が欠けているのですから性格が謎めいてしまうのも当然です。その時間、単に居眠りこけている訳ではないのだから代わりとなるものが詰め込まれているんでしょうが…一体栞さんの頭の中は何に占められているんですか?」

疑問視する高杉を余所に歩みを進める松山はライトの光で人気は大きい大樹を照らし出すと、

「あの人なら、忍者の修行をやっていてもおかしくないかも。」

「人生に役立たねぇ!!せめて平穏に暮らしていくために必要な知識や技術でも詰め込んでおけってんだ!!」

メガネを持ち上げた高杉がついにギャーギャー叫び始める。

大村はそれを仕方なさそうな感じで眺めていた、その時。

ガサガサガサァァアアアアアアアアアアアア!!と。
光で照らし出した大樹の木の葉から人影のようなものが飛び出す。

絶句した松山の片手から小型の懐中電灯が転げ落ちた。
地面に落下したライトの光が回転し、丁度少年たちの前方で光を固定させる。

「あ、なたは…」

高杉が震えた様子で呟く。

そして、少年二人の瞳に映し出された光景は―――-―

光が映し出したその先には一人の影が伸びていた。
より正確に言えば、特徴的なマフラーを身にまとった少女のものだった。

栞。
このチームにおける戦闘員のリーダーであり、最高の戦力を持つ者。
あのあすかを凌駕するほどの実力を持ちながら単独行動を前提として戦う謎めいた少女。
その栞が今目の前に立っている。
少女は閉じた瞳をゆっくり開くと、静かに言葉を紡ぐ。

「仲間の身が危ない。」

たった一言だけ。
しかし、
直後だった。

ゴパァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!と。
連絡橋付近で大規模な破壊が炸裂した。

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