アンドロイド。
少女はそう言うと自分の敵だと言うそのロボットに銃口を向けた。
彼女は静かに標準を合わせると引き金に手を掛ける。
だがその一方で少年が見る限り、グランドできょろきょろしているあの黒髪ロングヘヤ―の少女が彼女の言うアンドロイドには全く見えなかった。
(おいおい、どう見たってあれふつうの女の子じゃないか。…なに言ってんだこいつ?)
だが真剣に銃を構えている少女は大まじめのようだ。
少年はなんだか自分が馬鹿にされているような気分になり、冗談交じりで彼女に尋ねててみることにした。
「あのさ…むこう行っていいかな?」
「はぁ!?」
どうやらその言葉が相当耳にさっ割ってしまったのか、少女が絶叫にも近い声を張り上げて立ち上がり,そのま
ま彼の方に降りかえった。
さらに、よっつんばえになって思わず座り込んでしまった少年の元に急接近する。…銃を近くの地面に放り投げたままでだ。
少年の耳に、怒った少女の言葉が続く。
「なんで!?訳わかんないわ!どうしたらそんな思考に至るの!?バッカじゃないの!!?」
そして気わ目付には、
「死んだら終わりなのよッ!?」
その言葉に無理やり作っていた少年の作り笑いが大きく引きつった。
少女はその彼の表情を見てはっとしたのか、よっつんばえの体勢から上半身だけ体を起こして、目を瞑った。少し間があって彼女は落ち着きを取り戻したのか、静かに瞳を開く。
「これは死がいつも付きまとってくるこの世界での笑えないジョークなんだけど…どう?笑えるかしら?」
少年はしばしだまって言い返す言葉を考えようとしたが、言い返すまでもない。
「その笑えないジョークの感想はいいとして…、少なくとも銃を女の子に向けている奴よりはまともな話が出来そうだからさあ。」
少女はしばらく「うぅ…」と唸っていたが、とうとう諦めたかのような顔をして立ち上がった。
「わたしはあなたの味方よ?銃を向けるなと言うのなら向けないわ。私を信用しなさい!」
少年はどう返答すればいいか迷い、言葉を失ってしまった。
ついに汗が頬を通過したその時。
「おーい、あすか!新人確保の手筈はどうなってるんだ!?人出がたりねぇ今だ、どんな汚い方法を使ってでも…」
突然、真横の通行路から男の声がした。
少年は男の声がした方に振り返ると、そこには走ってこちらに近づいてくる薄紫色の髪をした自分と同年代くらいの少年の姿が見て取れた。
ちなみにその彼の手にも、少女と同じ狙撃銃が握られている。
そうか、なるほど。
座り込んでいた少年の目が一瞬細めいた。
薄紫色の髪を揺らしながら走ってくる少年は座る込んだままの彼のすぐ真後ろに到達する。
そこで、二人の少年の目が交差した。
最初に声を上げたのは薄紫色の髪をした少年の方だ。
「あ…」
しばらくの沈黙。そして、
「俺、やっぱあっち行ってくるわー」
立ち上がって花壇のそばを後にした少年を黙って見送る事しか出来なかった男女二人はそのまま顔色を変えて絶叫した。
「「勧誘に失敗したあああああああああ!?」」
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