クランドへ続く階段を降り切るころに聞こえた少年少女の叫び声に背をむきながら、なるべく気にしないように歩いた。
(訳が分からない。なんなんだ、あいつら。)
率直にそう思った彼は急に頭から痛みを感じ額に手を当てたが、その時にはすでに痛みは引いていた。
(なんだぁ?)
そんな出来事を交えながらとぼとぼグランドを進む彼の目の前に突然あの少女が姿を現した。
月の光が二人を等しく照らし出して輝いている。
当然前に現れた黒髪ロングヘヤ―の少女は黙ってこちらを見つめていた。
何度見てもあいつらが言っていたロボットには見えない。
冗談抜きでこっちの少女の方がまだまともそうに感じられる。
少年はぎこちない笑顔を強引に作ると、とりあいず会話をすることにした。
「あ…こんばんは。…えと、あんた銃で狙われてたぞ?あんたがロボットだーとかなんとか言って。」
その正気のさなかではない言葉に少女は不思議そうな表情で頭をかしげる。
「私はロボットなんかじゃないわ。」
あまりにあっけなく否定されてしまったが、考えてみればそれが当たり前だ。
彼は小さくため息をすると残った空気をすべて吐き出すかのような調子で言う。
「だよなーじゃぁ…」
「アンドロイド」
少女の何気ない一言に少年は頭を抱える。こいつら全員頭がくるってんのか?
彼は追に吹っ切れてしまった。
「ああ、分かった!お前もグルなんだな!!俺を騙そうとしてるんだろ!!なんだぁ?この記憶喪失もお前らの仕業なのか?!」
「記憶喪失なんてこの世界では当たり前のことよ。元の世界で消された時の衝撃で頭もやられるはずだから。」
少女は無表情のまま恐ろしい言葉を連発し、ついには彼に薄く微笑みかける。
少年の怒りはもう限界にまで達していた。
「じゃぁ、本当なのかよ!お前、アンドロイドなのか!?」
辺りが一瞬運沈黙に支配される。
そして、
「洗脳解除(ジャミングアウト)。」
その冷徹非常な声と共に、世界が少年に牙をむいた。
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