小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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霧斗達は、細い校舎の路地を何度もおり曲がった。

アンドロイド対策だったが、立ち止まった事に、特に根拠があったわけではない。単に、彼らの体力が持たなかったからだ。

二人とも、息が上がっていた。

「霧斗くん……」

あすかが、疲れ切った声でメンバーの名前を呼んだ。

疲労の色を見せながらも、それでも笑みを作って顔を上げた霧斗に対し、あすかは自身の片腕を校舎の壁に叩き付けた。

「……これじゃぁ、ほんとの軍隊だったらみんな死んで全滅じゃないッ!!酷いリーダーね……」

ギリギリと、あすかは歯を食いしばった。

それは霧斗に対する怒りではない。

彼を無責任に関わらせてしまった、自分自身に向けた怒りだ。

まるで、昨日、あそこで彼に話しかけてしまった事、ALIVEのメンバーとして強引に向か入れてしまった事すら失敗だったと告げているかのようだった。

「……私は、みんなを守らなくちゃいけない責任があるのに」

ある程度抑えようとしていたあすかの声は、途中で爆発した。

「完全に舐めて掛かっていた!!この作戦を開始するところからすべて罠だったんだ!!何で。気付くチャンスはどこにだって転がっていたはずなのに。前提となった監視映像の情報源がすべてアンドロイド発見に集中していた時点で、何か別の意図を付け加えられる可能性があるって思うべきだった!!」

対する霧斗の瞳には、明確な意思などなかった。
ただ彼は弱々しく首絵お横に振っただけだった。

「俺だって、本当はあんなもんに関わりたくなかったよ」

格好なんてついていない。
ボロボロの言葉は、逆にそれが霧斗の本音であることを示している。

「でも、抗うって決めたんだ」

「……、」

「一人の女の子がやばいことに関わっていて、それにはアンドロイドっていうロボットが絡んでいて、みんなの顔が浮かんで、他にも……他にも、この世界には色々あって……」

自分でも考えがまとまっていないのか、霧斗の言葉は断片的だ。
やがて彼は、自分の意見を綺麗にまとめることを諦め、もう一度だけ繰り返した。

最も重要なことだけを。

「……それでも、抗うって決めたんだ……」

くそっ、とあすかは吐き捨てると、校舎の壁から手を離した。

壁に背をつけたまま、霧斗はずるずると座り込む。彼はあすかの顔を見上げながら、こう質問した。

「これからどうする?」

「私たちが使っていた『対アンドロイド用作戦本部』は使えないと考えた方が得策。ほかの皆に連絡できれば何とかなるかもしれないけど、生憎、外部から何だかの通信妨害を受けていて使用不可能。おそらくこれもアンドロイドの策略の一つね。大体、他のメンバーと合流するためにもある程度安全な場所と時間が必要になる。……霧斗くん、短時間で言いの。身を隠せる場所に心当たりはない?」

「……隠れ家って、その辺の男子高校生に求めるようなもんか……?」

言いかけて、そこで霧斗はあることを思いついた。

「いや、あるな」

「どこ?」

あすかが尋ねてくる。

霧斗の配置場所はとある鉄筋でできた大橋だった。

『連絡橋』。
学習棟及びグランドと学生寮を繋げるための連結部分にあたる重要な役目を担う連絡関係にある場所。
小柄な少年と木刀男がなんだかの理由で使っていたが……、

「第二連絡橋の真下にある小さな窪地。多少狭いかもしれないけど、あそこなら使えそうだ」

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