小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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学園 大グランド中央

二本脚の『新型』アンドロイドは左腕の調子を確かめると、逃亡者の行先を辿るように、学習棟に続く階段へと足を向ける。

そこで、通信が入った。

『おしまいだ。アームズバスター』

――もう良いのか

『段階的な作戦の目的は達せられた』

――おいおい、必要なのは一人だけだったはずだ

アンドロイドは通信相手の言葉に対し、訝しげな声を上げる。

――つまり、あすかって言う反逆チームのリーダー。二人目はいらない。必要のない護衛を生かし続けていると、また脇道に逸れるかもしれないぞ

『あそこまでやれば十分だろう。ここから再び立ち直れるとは思えない』

通信相手は鼻で笑ったような息遣の音を発し、

『やられ役は大変だな』

――まったくだ。出力全開の斬撃波を使っていれば一発だったのに

『そもそも、お前のモデルは長時間の戦闘に向いていなかったんじゃないか?学園内で短時間の戦闘を想定して生み出されたお前にとっては、力を制御するのも大変だっただろう』

――インパクトが重要なんだよ。その点では俺、アームズバスターが最適だ

アンドロイドは左腕の復旧を諦め、

――これから一時的に帰還するが、もう片方はどうなっている?あっちも動かない事には始まらないんじゃなかったのか

『心配はない』

その言葉を聞きながら、アンドロイドは科学の先端技術を使用して自身の姿を周囲に同化させていく。このタイプのロボットは、長時間の戦闘を基準に生み出された訳ではない。つまりこまめな体力補給が重要となってくる。しかし、されだけ短時間に特化しているため一撃の破壊力はかなり高い。

ところが、

途中まで風景に同化していたはずのボディーがたちまち元の状態に戻っていく。

――反応しろ。どうした、うまく機能しない。反応しろ。……くそっ、何が起きているんだ

『だから言っただろう、心配はないって。向こうも動き出しているよ』

嘲笑うかのように、通信相手は付け足した。

『やられ役は大変だな』

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