小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第二連絡橋 真下 窪地

「いきなり今回の『新型』に触れてもよくわからないと思う。だから、まずは『新型』が最初に仕掛けた大きな罠、監視映像について説明するわ」

とあすかは言う。

霧斗にとっては、すでに移動中に聞かされた事なのか、彼はあすかの話を聞いているものの、その表情に大きな驚きはない。

やはり、メインの聴衆となるべきは大村、渦巻、栞、日村、高杉、松山の六人だ。

「監視映像は、みんなの考えている通り、防犯カメラから膨大な映像を記録したものよ。いわゆる、レコーダーね。これを使えば、敵の行動を先読みできるし、相手の移動パターンも把握できる」

そんなに便利なものを、なぜ問題視する必要があるのか。

そんな薄紫髪少年・日村の疑問に対し、あすかはチラリと霧斗の方を見た。

霧斗は焚火から少し離れた所から、こう話す。

「だけど監視映像だってそんなに便利なものじゃないんだ。高い応用性がある反面、敵にも利用されやすい」

「簡単に言えばダミー情報の可能性よ」

結論を出すように、あすかが締めてくる。

当然ながら、人間は専門の道具がなければそんな事はできない。
この世界が生み出すアンドロイドなら可能かもしれないが、それにしたって、『科学的なアプローチ』という後押しがあっての事だ。

それが、電気刺激などを利用した人工的なものであってもの。

「利用された」

あすかは舌打ちする。
彼女にしては珍しい、とても忌々しそうな表情で。

「まだ映像も確認していない頃、何かしらの方法で私たちに気付かれないよう校内に潜入し、監視映像に偽造を施す機能を持ったアンドロイドにね。そして、それを気付かないまま放置した結果、私にだって分からなかった、複数機のアンドロイドが学園内に潜伏しているっていう偽の映像になってしまった。そこが混乱の始まり」

だからこそ、危うく一人ずつ『新型』に殺されかけた。
今回のオペレーション自体、最初から敵に仕組まれてしまっていた。

新入りの少年はこんな事を言う。

「……それでも皆が『新型』にやられなかったのは、やっぱり、さっきの戦闘が相当響いているのかもしれないな」

あすかは少し元気を取り戻した様子で、

「たしかに、アンドロイドがアンドロイドなりの理由があって生み出されたのなら、その耐用したものに対しては便利かもしれないわ。だけど、それが『短時間で人間を一掃する』ことに特化しているのだとしたら、『新型』は長時間の戦闘及び滞在はできない可能性も出てくる」

「それは、まぁ、」

そう言ったのはメガネ男・高杉だ。

ただし、彼自身が直接『新型』に会ってはいないため、あまり実感はなさそうだった。

変わりに補足したのは木刀少年・渦巻だった。

「長時間戦闘を行わねェタイプのアンドロイドは、ベースとなる攻撃法をさらに応用するか強化するかして、一発で仕留めようとしてきやがる。銃を使うロボットの場合は、弾を改造して威力を高めたり、拡散弾にしたりしてな。それがどォしたってンだ」

答えたのはあすかではなく、霧斗だった。

「だからこそ、『新型』は一気に切り札を使ってくる。でも、そこが『弱点』になるんだ」

「その通り、序盤でほとんど出力を使ってしまえば、近いうちに必ず弱り始める。だから、そこが逆転のチャンスに転じるわけ」

あすかが焚火に枝を投げると、さらに炎の勢いは増していく。

「勝機はある」

揺らめく炎を見つめながら、あすかは確かにそう言った。

De-tao-ba-araibu37 end

-37-
Copyright ©いろは茶 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える