小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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第二連絡橋 真下 窪地

「勝機はある」

あすかはさらに付け足して、

「もちろんこんなことを言えるのは、『前例』があるからなんだけど」

「前例?」

日村が呟くと、あすかは無意味に胸を張った。

「『新型』アンドロイド。もし『長時間の戦闘』に特化しているなら、きっと今頃私達は戦いを続けている」

だが実際にそれはなかった。

「……一度『新型』の系統が分かってしまえば、後はずいぶん楽になるな」

栞は泥酔した少年に抱き着いたまま、そんなことを言う。

「実際、簡単よ。『新型』の弱点を逆手に取った作戦を講じてしまえば、後は自分の望むように組み合わせて作戦をセッティングできる」

もちろん、繊細な調節にはそれなりの苦労は付き物だけど、とあすかは補足した。

それが本当なら、と霧斗は思う。
大村や、渦巻、栞、そして日村や高杉、松山。彼ら達をさらに危険にさらしてしまうかもしれない、と。

しかしそこで、あすかがこんなことを言った。

「でも、だからって、あなた達は真正面から勝負を挑んじゃ駄目よ」

「えっ、どういう事だよ」

日村は怪訝な声を上げたが、霧斗は何かを知っているのか、特にリアクションをしない。

あすかはこう言った。

「さっきも言ったでしょう?作戦を立てるの。作戦は、才能のない人間が、才能のある人間に追いつくために作られた異種の技術。要は強さの問題よ。元から人間を殺す事に特化した『新型』は人間に倒されるために造られたものじゃない。無理に言えば、『ステータス』をさらに強化させた『新型』に単純な戦闘で勝てるはずがないの」

あすかに続いて霧斗もこう言った。

「だから武装した数十人で勝負に挑んでも、人間の力の限界をさらに上回ることを想定して造られた『新型』に単純な戦闘能力で勝つことはできないんだ。……おそらく、戦闘員の全員でもな」

「なら、どォして俺達に長々と講釈を垂れやがった?」

「『新型』を倒す方法はほかにもあるからよ」

とあすかは渦巻の質問に答えた。

「単純な戦闘で勝つことはできなくても、対策を講じるために『新型』の特性を知っておくのは悪い事じゃない。それとも、いつまでも『未知の特性を持つアンドロイド』なんて手探りを続けるき?」

「……具体的な手順は?」

渦巻は低い声でそう言った。

「まぁ、その時の状況によるんだけど」

「ここまで来て、はぐらかす気か?」

「そんな面倒な事しないわよ。ただ、この『作戦』についても、さらに下準備が必要なの。そっちの方があなた達には苦痛でしょう?だから、とりあえず内容はさておいて、『作戦』の名前から入った方がいいと思って」

「……、」

「『作戦』の名前に関しては極めてシンプルよ。『新型』をこの世から消し去る意味で付けたものだからね。下手に小難しくて誰にも伝わらないんじゃ意味がないわ」

ここに入る全員があすかの話を聞いていた。
少女はさらりとした口調で言う。

「そう。『作戦』の名前は……」

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