小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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光の槍を日本刀で切り落とし、悠然と姿を現した幼馴染み、鬼山梓乃。
そのまま、俺の目の前に歩いてきた梓乃は、

ガツン

日本刀の鞘で俺の頭をぶっ叩いた。

「いってぇ!!!何すんだ!?」
「…………言ったよね?」

俺の非難の声を無視して、梓乃は続ける。

「私言ったよね?英志には向いてないって、家に帰ろうって言ったよね?。」

確かに、以前廃屋で言われた。あのときは仲間を襲われたから
頭にきて、梓乃を攻撃したんだ。

「あんな偉そうな事言ったくせに、死にかけてるってどうゆう事なの?ねぇ?」

恐い……。堕天使より、こっちの幼馴染みの笑顔は恐い。
梓乃は完璧に怒ってる。そりゃ、善意で注意したのに無視した俺が悪いんだ。
それに、泣かせちゃったしな。

「………悪かったよ、梓乃。お前の警告は正しい。俺は弱い。けど、仲間を
守れる位に強くなりたいんだ。」
「……………」

梓乃は黙って俺の話を聞いてくれている。

「お前は俺のピンチに助けにきてくれた、なのに俺はお前を拒絶して………最低な事だって
分かったんだ。だから………ゴメン。」

俺は人の心を傷つけた。こんな簡単に謝って許される事じゃ無いことも分かってる。
でも、言わずにはいられなかった。

「……………英志はさ、これからどうしたいの?」
「これから……?」

梓乃は俺に問いかけた。その手には日本刀が握られている。
選択を間違えれば、殺されるだろう。殺されても、文句は言えない。でも、

「俺はこれからも悪魔だし、闘いからは逃げられない。
それを、どうか許してくれ。」

言いたい事は言った。後は梓乃の反応を待つだけだ。

「………それが英志の信念なんだね。」

さっきまで梓乃から感じた圧力が消えた。

「分かったよ。英志が悪魔になったこと、闘うこと、私を
攻撃したこと、全部許すよ。」

驚いて顔をあげると、梓乃は家にいた頃と同じ笑顔を向けていた。

「ありがとう……梓乃……」
「お礼と、その他のお話はまた今度。私も話したいことあるしね。
それより、あっちで趣味の悪い羽根を広げてる人達と闘うんだよね?」
「……ああ。」

俺はゆっくり立ち上がる。全身ボロボロだ。
カラワーナは梓乃を睨みながら、

「貴様……何者だ?」

光の槍をつくり、警戒体制に入る。ミッテルトは両手に光の槍をつくりだしている。
梓乃は表情を変えず、答えた。

「通りすがりの幼馴染みだよ。」
「ふざけるなっ!!!!」

光の槍が投げられたが、梓乃はまた切り落とす。

「英志、ここは私が闘うよ。」
「なんで…そうなる。俺は平気だぜ……」
「嘘だね、立ってるのも辛いんじゃない?」
「ぐっ……」

図星で言い返せない。

「ハァ、ならおとなしくしててよ。かえって邪魔だよ?」
「………分かったよ。」

渋々了承してしまった。

この会話の間にも、光の槍は投げ続けられていたが、梓乃は平然と
全て防いでいた。

「こんな奴が居るなんて聞いてないぞ!?」
「どうしようカラワーナ、これじゃあの餓鬼殺せないよ!!」

堕天使達は混乱してるな、てか強すぎだろこいつ。

「じゃ、そろそろ行くよ。」

梓乃が一歩踏み出したと思った瞬間、堕天使の眼前に梓乃が表れる!!

「な!?」

日本刀を袈裟斬りに振るったが、カラワーナはそれを防ぐ。

「このぉ!!」

ミッテルトが光の槍を構え、刺突を繰り出すが難なく捌く。

「そんなんじゃ、私は倒せないよ?」

そういって梓乃は横凪ぎに刀を振るう。斬撃を受け止めた堕天使二人は、後方に
退く。

「さぁて、そろそろ終わりにしようかな?」

梓乃の身体から発せられる重圧がまして堕天使の顔には焦りが浮かぶ。
これならいける!!そう確信した瞬間。

「そこまでよ、そこのポン刀女!!」

イッセーが相手をしていたレイナーレだ。

「言うことを聞かなければ、この二人を殺すわよ?」

レイナーレは光の槍をイッセーとアーシアさんに向けている。
くそっ……なんて汚い奴だ!!

「私は別に、そこの二人がどうなってもいいけど………」
「いや、梓乃。ここは言う通りにしてくれ……」

イッセーが俺に向かって叫ぶ。

「エージ!!俺はいいからアーシアを……!!」
「うるさい。」

そのイッセーの腹にレイナーレは蹴りを叩き込む。

「グハァ!!」
「イッセー!!」
「イッセーさん!!」

レイナーレはこちらに視線を投げ掛け、

「さあ、どうするの?」
「………分かった。だから、二人を放せ。」
「いいわよ、ほら。」

イッセーを放り投げるレイナーレ。

「おい……アーシアさんを早く解放しろ。」
「それは出来ないわ。」

レイナーレはアーシアさんを抱えて飛翔した。カラワーナとミッテルトもレイナーレに
続く。

「おい!!話が違うぞ!!!」
「私はなにも、二人とも解放するなんていってないわ。アハハハハハ!!」

俺はただ、飛びさって行く堕天使を見ることしか出来なかった。






〇オカルト研究会部室

スパーン

イッセーの頬がぶたれた音が室内に響く。
あのあと気絶したイッセーを部室まで連れ帰ってきたんだ。成り行きで部室には梓乃もいる。
目が覚めたイッセーは部長に

「アーシアを助けに行かせてください。」

そう言って聞かなかった。部長は仲間を大切にしているからイッセーが危険な
所に行くのを止めようと平手打ちをしたんだろう。ちなみに俺も平手打ちを食らった。
それでもイッセーは譲らなかった。

「なら、俺一人でも行きます。」
「貴方は本当にバカなの?行けば必ず殺されるわ。もう生き返れないの、
それがわかっているの?」

部長は冷たく言いながらもイッセーを諭している。

「いい?貴方の行動がここにいる眷族を巻き込むわ!!貴方はグレモリー眷族の悪魔
なの!それを自覚しなさい!!」
「だったら俺を眷族から外してください。俺だけであの教会に乗り込みます。」
「そんなことできるわけないでしょう!貴方はどうしてわかってくれないの!?」

部長が激昂する。構わずイッセーは訴えた。

「俺はアーシアの友達になりました!アーシアは大事な友達です!
俺は友達を見捨てれません!!」
「そうですよ、部長。イッセーはこうゆい奴なんです。」

いい加減、ただ聞いているのにも耐えられなくなった。

「俺も同じ気持ちです。俺もアーシアさんの友達になりました。だから
イッセーと一緒に助けに行きたい。」
「エージ………」

なにもイッセーだけが悔しい思いをした訳じゃない。俺だってあの場所に
居たのにアーシアさんを助けられなかった。

「古城君まで何を言い出すの!?あの子は元々神側の者。いくら堕天使のもとへ
降ったとしても私達悪魔とは敵同士なのよ!彼女の事は忘れなさい!!」

そう告げた部長に姫島先輩が近付く。何か話しているみたいだ。
更に部長の顔が険しくなる。

「急用が出来たわ。私と朱乃はこれから外に出るわね。」
「!?部長!!まだ話は終わって――――」

引き留めようと声をあげる俺達に部長はいった。

「前に言えなかったけど、貴方達は『兵士(ポーン)』よ。『兵士』には
他の駒にはない特殊な力があるわ。それが『プロモーション』よ。」

プロモーション……。でもなんで今こんな事を?

「『兵士』の駒が相手陣地の最新部へ赴いた時、『王(キング)』以外の駒に
昇格することができる。私が『敵の陣地』と認めた場所の一番重要な場所へ
足を踏み入れた時、イッセーと古城君は『王』以外の駒に変ずる事ができるの。」

なるほど………。木場の『騎士(ナイト)』塔城さんの『戦車(ルーク)』姫島先輩の『女王(クイーン)』
に変われるってことか。

「『女王』に変わるには、悪魔になったばかりの貴方達には厳しいけれど他の駒なら可能よ。
そして最後に、『神器(セイクリッド・ギア)』について。『神器』は想いの力に応えるわ。
その力が強いほど、『神器』は力をくれるわ。古城君なら分かるでしょう?」

確かに、俺が『神器』を発動できたのは、俺が強く想ったからだ。

「『兵士』でも『王』は取れる。チェスでも、悪魔の駒でも変わらない事実だわ。
それだけは忘れないこと。貴方達は強くなれるわ。」

それだけ言い残して、部長と姫島先輩は魔方陣からジャンプしていった。
部室には、俺とイッセーと木場と塔城さんだけが残った。

「イッセー……」
「ああ、いこうぜ。」

二人で部室を去ろうとすると、木場が声を掛けてきた。

「行くのかい?」
「当たり前だ。」

答えたのはイッセーだ。

「………殺されるよ?いくら『神器』を持っていても、プロモーションを使っても
エクソシストの集団と堕天使を相手にできるわけがない。」

木場の言ってる事は正しい。でも……

「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす。」
「いい覚悟、と言いたいけど、やっぱり無謀だ。」
「だったら、どうすりゃいいんだよ!!」

怒鳴るイッセーに木場はハッキリと言った。

「僕も行く。」
「なっ……」
「………私も行きます……」
「塔城さんまで!?」

驚きを隠せないでいる俺とイッセーに木場と塔城さんは続ける。

「君たちは僕の仲間だ。部長はああ言ったけど、僕としては君たちの意思を
尊重したいんだ。それに、堕天使とエクソシストには個人的に好きじゃないんだ。憎いほどにね。」

仲間か……木場からその言葉が出るなんてな。

「………私はスケベな先輩達だけでは不安なだけです 。」

さらりと酷い事言うね、塔城さん……
でも、先輩嬉しいよ!!

「部長がおっしゃっていただろう?プロモーションの事を。
あれは遠回しに『教会をリアス・グレモリーの敵のいる陣地』だと認めたんだよ。」

やっぱり部長は俺達に出撃許可をしてくれてたんだ。ありがとうございます、部長!
必ず帰って、チラシ配り頑張ります!!
あと、部室の隅にいる梓乃に一言言ってから、行こう。

「えーと、悪いけどさ、これは俺達グレモリー眷族の闘いなんだ。だから、梓乃は連れていけない。」
「ううん、いいよ。そのかわり、絶対帰ってくること。晩御飯作って待ってるから。」

満面の笑みで送り出してくれた。ありがとな、梓乃!!

「それじゃ、四人でいっちょ救出作戦と行きますか!待ってろ、アーシア!!」

イッセーに続き、俺達は教会へ向かった。

-10-
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