小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第3章 目覚める力

町外れの教会、その近くの茂みに俺達は潜んでいた。すでに陽は落ち、辺りは暗くなっていた。
にしても、教会からは嫌な感じかする。鳥肌が止まらないぜ。

「これを見てよ」

木場が図面を取り出す。どうやら教会の見取り図らしい。

「まあ、相手陣地に攻め込む時のセオリーだよね。」

☆キラッ
そんな効果音がつきそうな爽やかな笑顔を見せる木場。眩しすぎる……

「聖堂の他に宿舎。聖堂が怪しいね。」

図面の聖堂を指差す木場にイッセーが疑問の声をあげる。

「宿舎は無視していいのか?」
「多分だけど『はぐれ祓魔師(エクソシスト)』の組織は決まって聖堂に細工を
施してるんだ。聖堂の地下で怪しげな儀式を行うものなんだよ。」
「どうして?」

次のイッセーの質問には俺が答えた。

「おおかた、自分達が今まで敬ってきた、聖なる場所で儀式を行うことで神を否定してるんだろ。」
「その通りだね、愛していたからこそ、捨てられたからこそ、憎悪の意味を込めてわざわざ聖堂の地下
で邪悪な呪いをするんだよ。」

苦笑しながら木場が俺の意見を補足する。話を聞く限り、救い用のない奴等だぜ。

「入口から聖堂まで、一気に行けると思うけど……問題は聖堂の地下への入口を探すことと、
待ち受けてる刺客を倒せるかどうかだね。」

なんか……緊張してきたな。いや、腹を括るんだ古城英志!!アーシアさんを助けるんだ!!
気合いを入れるため、自分の両頬を両手で打つ。よし、覚悟はできた!!

教会の入口で顔を見合わせて、頷きあった。

ダッ!

入口から一気に聖堂まで駆け抜ける。恐らく、堕天使は俺達が乗り込んだのを察知しただろう。
もう退けない、退く気もない!!
聖堂へ足を踏み入れた俺達。教会に入ったことはないが、テレビで見る教会と変わらないな。
長椅子が並べられ、中央には祭壇がある。薄暗い聖堂内を蝋燭と電気が照らしている。
一際目を引かれるのは十字架に磔にされた聖人の彫刻の頭部が破壊されたものだ。悪趣味な……

パチパチパチパチ

「ブラボーブラボー!!ホントに来るとわねぇ」

拍手をしながら現れたのは、神父の格好をした白髪の少年だった。
イッセーの顔が険しくなる。

「フリード・セルゼン!!」
「ご対面!再会だねぇ!感動的だねぇ!」

イッセーと顔見知り?じゃあこいつがイッセーを襲ったエクソシストか!!

「アーシアはどこだ?」
「いや、イッセー言うわけないだ…」
「んーそこの祭壇の隠し階段から行ける祭議場にいるんじゃないんすかねぇ。」

こいつ、あっさり話しやがった。ここで俺達を殺す自信があるのか。
へらへらした笑みを浮かべながら、神父、フリードは言った。

「俺としては二度会う悪魔はいないってことになってんだけどさ!ほら、俺、メチャメチャ強いんで
悪魔なんて初見でチョンパなわけですよ。一度あったらその場で解体!死体にしてグッドバイ! でも、
お前らが邪魔したせいで俺のスタンスがハチャメ……」
「うるせぇぞ。」
「は?」

フリードの話を遮り、俺が言った。

「うるせぇって言ったんだよ。頭もイカれてるのに耳もイカれてんのか?」

フリードの顔から笑みが消えた。

「悪魔のくせに言ってくれやがりやすねぇ。てか、お前誰よ?前いなかったっしょ?」
「イッセー、木場、塔城さん。こいつは俺がやる。先に行ってくれ。」
「無視してんじゃねぇよ!!糞悪魔!!」

怒鳴り散らすフリードを無視して話を続ける。

「エージ!一人じゃ無理だ!ここは皆で戦うべきだぜ!!」
「兵藤君の言う通りだ。君じゃあの神父に勝てない。」
「………無謀です。」

皆が反対するけど構わない、フリードに 一歩近付く。

「大丈夫だよ、俺は負けない。」
「あれ?なに、なに、なに?君一人でやるのぉ?死んじゃうよぉ?
ギャハハハハハ!!!!」

目を閉じて深く息を吸い、吐く。それを数回繰り返す。部長は言ってた。想う力が『神器(セイクリッド・ギア)』
の力なると。なら、想え。強く想え。こいつを倒す、自分の姿を!!

「応えろ!!セイクリッド・ギアァァァ!!」

俺の叫びと共に俺の身体が蒼白いオーラに包まれる。

「な、なんでやんすか!?」

フリードは驚きの声をあげている。

「早く、アーシアさんを助けに行け!!彼女はイッセーが来るのを待ってるんだ!!」

俺にイッセーは頷いた。そのまま木場と塔城さんを連れて祭壇の隠し階段に向かっていく。

「エージ!絶対に勝てよ!!死んだらお前のエロ本全部俺が貰うからな!!」
「すまない、古城君!」
「………すいません、古城先輩。」
「気にすんな!あと、木場と塔城さん、俺のことはエージでいい!!仲間だからな!!」

聖堂には俺とフリードだけが残った。

「んー、まさか神器持ちだとは驚いたよ悪魔君。そんじゃ……死ねぇ!!」

懐から剣の柄らしきものと銃を取りだし、突撃してくるフリード。
銃口が向けられ、そこから光の弾が音もなく射出された。俺は右手にオーラを集中し、弾を防ぐ。
柄に光が集まり、光の剣となって俺に振るわれるが、なんとか避ける。
フリードは距離を置き、俺を睨む。

「んー!やるねぇ!うざいねぇ!ムカつくねぇ!この糞悪魔がぁ!!」

フリードのスピードが上がった!目で追えない。なら……

「プロモーション『騎士(ナイト)』!!」

ナイトにプロモーションして、スピードアップだ!!フリードに追い付き、腹に拳を叩き込む。

「プロモーション!?てめぇ『兵士(ポーン)』か!!」

ドゴン!

完璧に決まったがフリードは俺を掴んで投げ飛ばした。ステンドグラスを突き破り、
教会の外に放り出される。

「くそっ!!」

なんとか着地をして、振り向くとすでに外に出ていたフリードが俺に銃を向けていた。

「チェックメイトだ!」

放たれた光の弾が脚に命中する。痛みを堪え、標的を見る。まだ、こいつを倒す力がないのなら、もっと強く想え!!

「まだまだぁ!!」

俺の右手のオーラの密度が濃くなり。形を成形する。
それは蒼白い手甲だった。手の甲には黄色い宝玉が嵌め込まれている。

「次から次えと何なんですかぁ!?もう死ねよ!!」

銃をまた俺に向けるが、『騎士』になった俺は一瞬で間合いを詰める。

「な!?」
「おらあぁ!!!!」

拳を顔面にめり込ませ振り抜いた。フリードは吹き飛び、動かない。

「はぁ、はぁ…………」

俺は膝をついて、倒れそうになる。まだ、倒れるわけにはいかない。
アーシアさんを助けにいくんだ!

散らばったステンドグラスを踏みしめながら、聖堂の中に再び足を踏み入れた俺は、地下への階段へ向かった。

「……いってぇ……」

フリードの光の弾丸で撃ち抜かれた足を引きずりながら前に進もうとした時だった。階段を登ってくる足音が聞こえた。

走って階段から表れたのはイッセーだった。アーシアさんを抱き抱えている。無事助け出す事が出来たのだろうか?

イッセーは俺に見向きもせずにアーシアさんを長椅子に横にしていた。様子がおかしい。足を引きずってイッセーに近寄る。嫌な予感がする。

「……イッセー」

そこでやっと俺の存在に気付き振り返ったイッセーの顔は涙に濡れていた。

「エージ……アーシアが…………アーシアが……」

俺たちの声に反応したのか、アーシアさんが目を開けた。その顔色は悪い。

「イッセーさん……エージさん……」

イッセーはアーシアさんの手を取り元気付ける様に言った。

「待ってろアーシア!もうすぐアーシアは自由なんだ!いつでも俺たちと一緒に遊べるようになれるんだぞ!」

アーシアさんは苦しげに微笑んだ。

「……私、少しの間だけでも友達ができて…幸せでした。もし、生まれ変わったら、また友達になってくれますか……?」

その一言で理解できた。アーシアさんは死んでしまう。やっと友達ができたのに、死んでしまう。
俺は、嫌だった。この子が死を認めたくなかった。

「何言ってんだよ!!アーシアさんは俺達の友達だ!!これからだって沢山、友達ができるんだぞ!!」
「そうだよアーシア!松田と元浜にも紹介するよ!みんなでワイワイ騒ぐんだ!!」
「……きっと……この国に生まれて……イッセーさん達と同じ学校に行けたら…」

アーシアさんはイッセーの頬を撫でながら囁いた。

「私のために泣いてくれる……もう、何も…」

アーシアさんの手から力が抜け、ゆっくりと落ちていった。

「…ありがとう…」

彼女は微笑んだ。アーシアさんは、もう動かなかった。

俺は涙が止まらなかった。
一緒にいた時間は本当に少しだけだったけど、アーシアさんとは友達になった。
その友達が目の前で息を引き取った。俺は何も出来なかった。

友達を救えなかった。

「なあ、神様!いるんだろ!?見てるんだろ!?この子を連れていかないでくれよ!頼むから……この子はただ友達が欲しかっただけなんだよ!ずっと俺が友達でいるから!なあ、頼むよ!神様!!」

イッセーは叫んだ。その声はただ虚しく聖堂に響くだけだった。

「俺が悪魔になったから…駄目なんスか!?悪魔の俺が友達じゃ駄目なんスか!?」

俺は泣き叫ぶ親友を見ることが出来なかった。

「あら、こんな所で悪魔が懺悔?」

俺達を嘲笑いながら、レイナーレは姿を表した。

こいつだ。アーシアさんを殺したのは、堕天使。こいつらの下らない計画に捲き込まれて、アーシアさんは……!!

「結局、死んじゃったわね、その子。可哀想に、あれだけ守るだの、救うだの言っておいて、あんた達何も出来てないじゃない!本当におかしな子達ね!アーシアの力は私が使ってあげるから、感謝しなさい!アハハハハ!」

アーシアさんを殺した、堕天使は高笑いをしている。なんでお前が笑ってる。俺の友達を殺したお前が!!

「てめぇが……!!笑うんじゃねぇェェェ!!!!!!」

右腕に蒼白い手甲を纏い、俺は『騎士(ナイト)』のスピードで飛び出した。

レイナーレは俺の突撃を軽く回避し、光の槍を作り出した。

「それがあなたのセイクリッド・ギア?色違いの『龍の手(トウワイス・クリティカル)』じゃない。二人揃ってお似合いね!!」

ザクッ

俺の左肩を光の槍が貫いた。

「があぁぁ!!」

地面に縫い付けらるように突き刺さった光の槍を抜くことができない。

「あら、少しカスッたかしら」

レイナーレの腕に小さな切り傷ができていた。レイナーは傷口に手を翳し

「あの子の力は本当に便利だわ。堕天使の治癒までできるのだから」

その手から緑色の光が発せられ、傷が治っていた。
あれはアーシアさんの力だ!!

「それはアーシアの光だ。お前の光じゃない!アーシアを返せよォォォ!!」

今まで立ち尽くしていたイッセーが叫んだ。左手に赤い籠手を装着し、宝玉に紋章が浮かんでいる。

『Boost!!』

イッセーは力任せに駆け出し、拳を突きだした。
だが、レイナーレは俺の時と同じように華麗に避けた。

「無駄よ。まだ力の差が分からないのかしら?」

光の槍をイッセーの両膝に撃ち込んだ。

「こんなもの!アーシアの苦しみに比べたらぁ!!」

イッセーは光の槍を引き抜いた。イッセーの両膝から鮮血が飛び散る。

『Boost!!』

また宝玉の音声が響く。イッセーは一歩前に足を踏み出した。

「う、嘘よ!!私の光を受けて立ち上がれるわけないわ!!」

イッセーは立ち上がった。光の痛みに負けず、まだ戦おうとしている。俺も、負けるわけにはいかない!!

「ダチが頑張ってんだ……俺だけ寝てらんねぇ!!」

右手で槍を持つ。焼けるように痛い。構わず力を込め、槍を引き抜いた。
ふらつきながらも俺も立ち上がり、相手を睨む。

「下級悪魔がっ!!潔く死になさい!!」

レイナーはまた光の槍を作り出し、俺達に投げようとしたが

『Explosion!!』

イッセーは光の槍を拳で粉砕した。凄いパワーだ!
レイナーレの表情はさっきまでの余裕が失せ、青ざめている。

「い、いや!」

黒い翼を羽ばたかせ、レイナーレは飛び立とうとした。逃がすわけねぇだろ!

俺は右手にありったけの魔力を集め撃ち出した。レイナーレの翼を撃ち抜き、バランスを崩した。

「いけぇ!!イッセー!!」
「吹っ飛べ!クソ天使ッ!!」

その一瞬にイッセーはレイナーレの顔面に拳を叩き込んだ。

勢いよく後方へ吹き飛んだレイナーレは壁をぶち抜いて、地面に転がった。

「ざまーみろ」
「……ああ、やったなイッセー」

互いに顔を見合わせ笑いあった。けど、すぐにその笑みは消え、涙が頬を伝った。

「……アーシア」

彼女の笑顔は二度と見れない。

-11-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D リアス・グレモリー ~先輩のおっぱいひとりじめフィギュア~ (PVC塗装済み完成品)
新品 \3426
中古 \3753
(参考価格:\7980)