小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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勢いで部室をでて街に出てきた俺こと、古城英志。
現在、街を徘徊中。

「何も手がかりがない……。はぁ〜やっぱり無理なのか?」

あれから6時間。街をウロウロして捜していたが、いっこうに見つからない。
悪魔の俺が歩き回ってれば、襲いかかってくると思ったんだけど………。

グゥ〜

そういえば、昨日の夜から何も食べてない。財布を除くと、500円が一枚
だけ。俺の小遣いは梓乃が管理している。その梓乃がいないのだから財布も寂しくなる。
辺りを見回し、近くにあった
ファーストフード店で遅い昼食をとることにした。

レジで注文を済ませて渡されたハンバーガーを持って
ソファーに座る。すると後ろの席から

「美味しいです!!ハンバーガーって美味しいですね!!」

興奮しているような、綺麗な女の子の声がした。それじたいは興味なかったが
その後の男の声には聞き覚えがあった。

「ハンバーガー食べたことないの?」

!?
それは昨日の夜、『はぐれ祓魔師』に襲われて怪我を
したイッセーの声だった。

あいつ、もう起きたのか……。相変わらず、ゴキブリのような生命力だ。

女の子となにかしら喋ったあと、イッセーは提案した。

「今日は遊ぶぞ、先ずはゲーセンだ!!」

移動をしはじめるイッセーたちを追いかけるため、残りの
ハンバーガーを口に詰め込み、二人の後を尾行した。

イッセーは女の子とゲーセンに向かった後、いろいろな所に行った。
どれもこれも、カップル向けの場所で一人で歩く俺は惨めな気持ちになった。

あとで一発殴ろうかな……。

よく見れば、イッセーと一緒にいる女の子は俺たちと同じ年齢
のようで、綺麗な金髪がよく似合ってる。シスター服を着ていて、教会関係者だとすぐにわかった。

そして、最後に訪れたのは公園だった。
イッセーと俺が堕天使により、殺された場所だ。嫌な記憶が蘇る。


イッセーと女の子はベンチに座り話していたる。俺はその後ろの茂みに潜むことにした。

目を向けると、イッセーが昨日の傷を抑えて辛そうな顔をしている。
まだ完治していないのだろう。無理してくるからだ。そんなイッセーに彼女は手を翳した。

緑色の光がその手から放れたと思ったら、次の瞬間には
イッセーが何事もなかったように動きまわっている。

怪我を治す神器!?凄いな……。

そして、その女の子は自分の生い立ちを語り始めた。

その怪我を治す力のお蔭で、聖女と呼ばれるようになった。だが、一人の悪魔の命
を救ったことで、彼女の生活は一変した。悪魔を癒す力をもつ魔女だと蔑まれ、
異端の徒として、教会を追放された。

そりゃないよな、自分たちが勝手に祭り上げておいて、自分たちの
思い通りにならないからって彼女を捨てたんだ。

教会か……俺たちよりよっぽど悪魔らしいじゃないか……!!

彼女の声は涙声で、背中しか見えないが寂しさ、悲しさが伝わってきた。

「俺がアーシアの友達になってやるよ。いや、俺たちはもう友達だ!!」

イッセーはそう宣言した。アーシアと呼ばれた彼女は驚いたようだ。

イッセーのくせに、いいこと言うじゃねぇか。

ゾクッ

なんだ……?この感じ……。
嫌な汗が背中を伝い、本能が俺に危機を知らせる。
ヤバい……………。

イッセーとアーシアさんは気付かない。楽しそうに、笑いあっている。

そんな二人を嘲笑うかのように、堕天使レイナーレが降臨した。

二人の会話を遮るように、冷たい声が響く。

「無理よ。」

その声の主を見てイッセーは絶句していた。それはそうだろう。目の前に自分を殺した者がいるのだから。
綺麗な黒髪でスレンダーな体型。
天野夕麻。堕天使、レイナーレ。

「ゆ、夕麻ちゃん?」

困惑した声に返されたのは嘲笑だった。

「へぇ。いきてたの。しかも悪魔?嘘、最悪じゃないの。」

その声には明らかに見下したような響きがあった。

「…レイナーレ様……。」

アーシアさんは震える声で呟いた。

「レイナーレ…それがあんたの名前か。堕天使さんが、何か用かい?」

レイナーレはゴミを見るような眼でイッセーたちを見ている。

「汚らしい下級悪魔が話しかけるな。その子、アーシアは私たちの所有物なの。返してもらえるかしら?アーシア、逃げても無駄なのよ。」

やはり、アーシアさんは堕天使から逃げていたのか。イッセーと遊んでいる時も辺りを警戒していたのも頷ける。彼女はイッセーの陰に隠れて恐怖に震えていた。庇うようにイッセーは一歩前へ歩み出る。

「見ての通り。アーシアは嫌がってる。ゆう、いや、レイナーレさんよ、あんた達はアーシアを連れ帰ってどうするつもりだ?」

その質問に、レイナーレは顔をゆがめる。

「下級悪魔風情が、私の名を呼ぶな。私の名が汚れる。貴方達に私たちの計画は邪魔させないわ。さっさと主のところに帰りなさい。それとも……死にたいのかしら?」

レイナーレの手から光の槍を生み出した。それを見たイッセーが一瞬怯む。
悪魔にとって光は猛毒だ。俺たちの様な新入りの悪魔が喰らえば、死ぬ可能性だってある。

「せ、セイクリッド・ギア!!」

イッセーの左手に赤い籠手が装着され、構えをとった。レイナーレは驚いたような顔をしたが、次第に笑みを浮かべた。

「上の方々が貴方の『神器(セイクリッド・ギア)』が危険だといったけど、勘違いだったようね!それは
『龍の手(トウワイス・クリティカル)』ありふれた神器の一つよ。所有者の力を一定時間、倍にする力があるけど、貴方の力が何倍になっても怖くもなんともないわ!!」

大声で笑い続けるレイナーレ。確かにレイナーレの言うとおりだ。神器を発動しても今のイッセーが堕天使に勝てるか分からない。

「やってみなきゃわかんねぇだろ!!」

イッセーはレイナーレに吠える。完全にでるタイミングを見失ったけど、友達が戦ってるのをただ見てるわけにはいかない。

「無理よ、ただの人間が堕天使に勝てるわけ……」
「黙れ、糞堕天使。」

俺はイッセー達とレイナーレの間に割って入った。両者、突然の闖入者に驚いているようだ。

「エージ!!なんでここに!?」
「悪いな、イッセー最初から見てたよ。詳しくはまた今度言うから、今は目の前の敵をなんとかしよう。」
「あのぉ、イッセーさん。この方は?」
「ああ、コイツは……」
「俺は古城英志。イッセーの友達で悪魔だ!!」

俺はイッセーが言うより速く自己紹介をした。アーシアさんは面食らっていたが、すぐに姿勢を直してお辞儀をした。

「私はアーシア・アルジェントと申します。はじめまして、古城さん。」
「エージでいいよ。」
「でも……失礼では…」
「イッセーの友達なんだろ?なら俺の友達でもある!遠慮なんてしなくていいんだよ。」
「はい……分かりました。そのっ…エージさん。」
「……おい。」

不機嫌そうなレイナーレの声がしたので、振り向き挨拶をする。かなりイライラしているようだ。

「よう、久しぶりだな。あんときはよくも俺を殺してくれたな。」
「まさか、貴方も生きているなんてね。それに二人揃って悪魔になっているなんて呆れるわ。」
「神様に見捨てられて堕ちたお前らよりはマシだと思うぜ。」
「!!……餓鬼が!!」

レイナーレは光の槍を俺に向ける。

「貴方の生死を確かめに行かせたドーナシークはなにをやっているのかしら?生きていた場合は殺せと命令したのに。」
「ドーナシークなら俺が殺したよ。」

俺の一言でレイナーレの表情が変わる。

「堕天使が人間に殺されたという噂は本物だったの?こんな魔力も感じられない屑に!!」
「信じられないなら、ここで試してやってもいいぜ?お前は死ぬけどな。」

嘘だ。ろくに神器を使いこなせないのに堕天使に勝てるわけがない。今の俺のできることはハッタリでコイツを追い返すことだ。小声で隣のイッセーに告げる。

「イッセー、もしあいつが攻撃してきたらすぐに神器で力を倍にしろ。少しはマシになる。」
「……分かった。」

レイナーレは俺の挑発で爆発寸前だ。肩がプルプル震えている。

「死にたくなければ今すぐ二人を見逃して帰れ。」
「見逃すわけないでしょう!!下級悪魔が図にのるな!!」

やっぱりだめか!!
レイナーレは光の槍を俺に投げつけた。俺は何とかそれを回避する。

「分かってるな、イッセー!!あの槍には当たるなよ!!」
「分かってる!!動きやがれぇ!!セイクリッド・ギアァァァァ!!!」
『Boost!!』

イッセーの籠手の宝玉か音声が発せられた。

「これで倍だ!!いくぜぇ!!!!」

イッセーはレイナーレに向かってダッシュする。俺もイッセーの援護に行かなきゃ!!
だが、俺の目の前に立ちはだかるように二つの影が舞い降りた。
短い髪のスーツを着た女性と、金髪縦ロールのゴスロリの女の子。二人の背中からはレイナーレと同じ漆黒の翼が生えている。

「堕天使、カラワーナ。ドーナシークの仇は貴様か?」
「堕天使、ミッテルト!!あんたはここで死んでもらうよ。」

ここで、敵の援軍!?ただでさえ厳しいのに。

「ぐああぁぁ!!」

!?イッセーの声だ。
見ると光の槍がイッセーの腹に突き刺さっていた。必死にアーシアさんは神器で傷を癒している。

「イッセー!!」
「どこを見ている?」

ドゴッ

カラワーナの蹴りが俺に直撃した。
凄い勢いで蹴り飛ばされ、俺はベンチを粉々にしてやっと止まった。
悪魔になって頑丈になったが、今の蹴りで身体が動かない。

「これで、おっわりぃ♪」

ミッテルトは光の槍を俺に投擲した。

槍を避けようとするが、動かない。ヤバい…死んだ。
死を覚悟したが、その槍は叩き落とされた。

!?なんで、一体だれが……

「だから英志には向いてないって言ったんだよ、弱いんだからおとなしくしてなきゃだめでしょ?」

俺の目の前には日本刀を肩に担いだ、幼馴染が立っていた。


-9-
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