小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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俺は屋上に向かう途中、生徒会室に寄り『女王(クイーン)』にプロモーション、
これで少しは身体が動くはずだ。
ダッシュで屋上に続く階段を登り、屋上の扉を開けた。

そして見たのは……

ボロボロになったみんなと平然と立っているライザーの姿だった 。

「な……んだ…と?」

俺は絞り出すようにそう言った。
あの部長が焦った顔で肩で息をしている。あの姫島先輩が余裕のない表情でライザーを睨んでいる。
あの木場が剣を地面に突き立てて方膝をついている。

イッセーはそんな中一人諦めずライザーに殴りかかっていた。
その顔は殴り返され腫れ上がり、身体のいたるところか出血をしている。
見ているだけで痛々しい。もう戦闘のできる状態じゃないのは明白だ。
なのにイッセーは突き進んで………俺はそんな親友の姿に目が熱くなった。
同時に怒りも湧いてきた。

「イッセー、交代だ!」

眷族のみんなは俺に気付いていなかったようで、俺の参戦に驚いているようだった。
ヨロヨロと歩んでいくイッセーの身体を止め、アーシアさんに治療を頼んだ。

「イッセー……お前、途中から意識なかったんだな………」

俺はイッセーをアーシアさんに任せ、ライザーの方を見る。

「リアス、これで君の負けだ。今さら二人味方が増えても、俺を倒すことは
できない」
「まだ、俺が居るだろ!決めつけるじゃねぇよ!!」

俺はライザーを指差し怒鳴るが、ライザーは冷ややかに笑うだけだ。
この野郎ぉ!!

「お前じゃ俺を倒せないんだよ。お前と俺の間にある力の差が分からないのか?」

コイツの言っている事は確かにその通りだ。
悪魔に成り立ての元人間と純血の上級悪魔。なにもかも違っていた。
だけど……俺が諦める理由にはならないんだよ!!
俺は本日四回目の魔方陣を展開した。これを使ったら確実に俺は倒れる。
なら、俺の残りの魔力を全部使う!!

「イッセーは……諦めなかった!!俺が諦めてどうする!?」

魔方陣に魔力を込め、発射した。ライザーは避ける素振りすら見せない。
俺の攻撃は直撃し、ライザーの上半身を吹き飛ばした。

「ハァハァ………」

俺は身体から力が抜けていくのを感じた。
でも……アイツを倒し……………
俺はそこで絶句した。
俺が吹き飛ばした部分から炎が立ち上ぼり、形を整形していく。
そして、ライザーの身体は元通りになった。

部長から教えてもらった知識がもう一つ。フェニックス家の力、不死身……倒しても倒しても蘇る。
そんな相手を倒すには精神を磨り減らすか、神クラスの一撃で押し潰すか。
どちらも俺には出来そうにない………

「少し驚いたが、この程度か………お前ももう終わりだな」

ライザーの炎が俺に目掛け飛んできた。俺は動けず、その炎に身体を焼かれた。







○???

暗い………ここは……どこだ?
辺りは真っ暗でなにも見えない。そして俺はそこに浮いていた。

この場所には来たことがある………天野夕麻に殺された時だ。
じゃあ俺は死んだのか?
レーティングゲームはどうなったんだ?

「貴様は死んではいない」

突然かけられた声に、俺は聞き覚えがあった。
あの時の女の人か?

俺は辺りを見回すが姿が見えない……

「ここだ」

俺の上から声が聞こえた。その声の主を見て、俺は目を見開いた。
それはこの前の女の人ではなかった。
大きな金色の瞳。大きく裂けた口。そこから覗く、鋭い牙。
蒼白い鱗が体表を覆い、巨大な腕には鋭利な爪。頭部には逞しい角。
そして背中から生えた美しい両翼。

まるで……そう、神話の中の…………

「ドラゴン……」

俺の一言を聞いたソイツは不敵に笑った気がした。

「……まあ、そういうものだ……私は『古代龍(エンシェントドラゴン)』ランサス
だ」

こ、古代龍?

「遥か昔の時代に棲息し、永い生の中で多くの知識を蓄え、
最も神に近いといわれていたドラゴンだ。今は私しかいないがな」

最も神に近いドラゴン!?なんでそんな化物が……

「化物とは酷い言い様だな……お前には色々と貸してやっているんだが」

!?
今、心読まれた!?

「死んだお前の身体を私がわざわざ蘇らせてやったのにな。
お前のピンチには力も貸してやったというのに………」

は?なにを言っているんだ?

「まだ分からないのか?もう少し頭のキレる奴だと思っていたんだが……」

なんか俺、ドラゴンに呆れられてるんだけど………

「だから私は、お前の中に宿っている力の源なのさ」

じゃあ、お前が俺のセイクリッド・ギアなのか!?

「その通りだ……む?ソロソロ目覚めるようだぞ」

目覚める?
すると次第に俺の身体が光の粒になり消えていく。

「な、なんじゃこりゃあ!!」
「驚かなくていい。ただ、お前の意識が戻るだけだ、ここセイクリッド・ギアの中枢からな。
この話はまたいずれ……お前がどのような選択をするか楽しみにしているぞ……

そう言って、ドラゴンは姿を消し、俺の意識もそこで途絶えた。



目を覚ますと、知らない天井が広がっていた。
辺りを見回すと、薄暗い部屋で俺はベッドに寝かされているらしい。
身体を起こそうとするが、動かない。
両手、両足がベッドに固定されていた。

「なんだこれ?」

ゲームでリタイヤした悪魔は医療設備の整った所に強制転送されるんじゃないのか?

俺が思考を巡らせていると、部屋の入り口から黒衣を纏った男達が入ってきた。なんだこの怪しすぎる連中は!?

「目が覚めたか、気分はどうだ?」

豪奢な黒衣を身に纏ったリーダーと思われる人物が俺に声をかけた。

「最悪だよ。お前ら誰だ?」

俺は睨みながら聞いた。

「答える義務はないな……お前はこれから我々の道具となるのだから」
「どういう意…ガァ!」

異議を唱えようとした俺の腹に男の一人がハンマーを降り下ろした。

「お前の力を利用して、この腐りきった冥界を改革するのだ!」

なんなんだよコイツら……

俺の腹にもう一度ハンマーが降り下ろされようとした時だった。

ドガァ!

壁が砕かれ、そこから誰かが入ってきた。

「よぉ、エージ。元気してたか?」

陽気に俺に手を振っていたのは十二枚の翼を展開したアザゼルさん!

「ア、アザゼルだと!?何故、貴様がここにいる!!」
「そこの坊主に用があってな、お前らは邪魔だ」

アザゼルさんは一振りの光の槍を造りだし、横に一閃。それだけで黒衣の男達は悲鳴をあげる間もなく絶命した。これがアザゼルさんの力かよ……レベルが違うぜ……
俺はアザゼルさんに拘束具を外してもらった。

「あ、ありがとうございますアザゼルさん……コイツら一体なんなんですか?」

俺はベッドから立ち上がりながら聞いく。

「コイツらは悪魔だ。といってもテロリストだがな」
「な、なんで俺が狙われなきゃいけないんですか!?」
「多分、ゲームを見てお前を洗脳でもして利用しようとしたんだろ。ゲームの強制転送に細工してお前をここに転送したんだろうな」

マジか……ただの悪魔の俺に一体何が起きてるんだ?

……そう言えば

「部長は?俺達のゲームはどうなったんですか!?」

俺は捲し立てる様にアザゼルさんに質問をする。

「お前がリタイヤした後、リアス・グレモリーが投了して敗北した。お前は転送のミスで行方不明になってるが、ほぼ死亡扱いだ」

そんな……部長が負けた?

「じゃあ、部長はライザーと結婚したんですか?」
「いや、赤龍帝の坊主がフェニックスの餓鬼をぶっ飛ばして、結婚式は無くなったみたいだぜ」

赤龍帝ってのはイッセーのことだろう。やったじゃないかイッセー!!
……って喜びたいけど……

「俺が死んだことにされてるって言いましたけど……俺はどうなるんですか?」
「………いきなり悪魔側に戻るのは危険だな。上級悪魔の中にもテロリストと通じている奴がいるかもしれん。暫くは『神の子を見張る者(グリゴリ)』で匿ってやるよ」

『神の子を見張る者』は堕天使の中枢組織だ。
アザゼルさんは笑顔で言ってくれるが……

「……俺一応悪魔なんですけど……大丈夫ですか?」

堕天使にはいい記憶がない。どうしても警戒してしまう。

「大丈夫だよ、俺がつれてきたって言や誰も文句は言わないさ」

そう言うと俺はアザゼルさんに腕を掴まれる。

「じゃ、行くぞ」

足下に転移の魔方陣が展開される。

「ちょっ、まだ俺返事してない!!」

俺の反論は聞いてもらえず、俺の身体は光に吸い込まれた。




side イッセー

部長をライザーから取り返してから一週間。

部室には活気がなかった。
エージが行方不明になったからだ。

ライザーの炎に呑まれて
転移した筈のエージの姿は医療施設にはなかった。

グレイフィアさん曰く、強制転送された時に何らかの不具合が出て何処かに飛ばされたらしい。

あの業火に焼かれたんだ、直ぐに治療をしなければ死んでしまうかもしれない………だけど、エージは見つからなかった。

レーティングゲームを開発した現魔王、アジュカ・ベルゼブブ様に依頼して居所をさがしてもらっているが依然として居所が分かっていなかった。

部長も朱乃さんも元気がない。特に落ち込んでいるのは小猫ちゃんだ。ゲーム中にもなんか熱っぽい視線を送ってた気がする………

くそっ!!こんな可愛い後輩を置いて死ぬわけないよなエージ!!早く帰ってきやがれ!!




―後書き―

どうも、波瀬です。

どうにか二巻の内容まで書き上げることができました。

アザゼルは個人的に好きなキャラなので登場させてみました。個性的で上手く表現できてるか心配です……

ご意見、ご指摘をくれた皆様らありがとうございます。参考にし、取り入れていけたらいいと思っています。

これからも、よろしくお願いいたします。

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