小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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バシャア!

「おわっ!!」

突然水をかけられ飛び起きる。

「ゴホッ、ゴホッ」

顔をあげるとヴァーリがこちらを見下ろしていた。

「弱い」
「ぐ……」
「お前の力は極めれば確かに恐ろしい力になるだろうが、それも使用者次第だ。
お前がこの程度じゃそのセイクリッド・ギアを使いこなす前に死ぬぞ」

手も足も出ずにヴァーリにボコボコにされてぐうの音も出ない。

「そう言うなヴァーリ。これでもマシになった方だぜ」

アザゼルさんがなにやら機械を弄りながら言う。
辺りを見ると、先程の何もない空間から研究室らしい、機材がごちゃごちゃした部屋にいた。

「あとヴァーリ、この部屋で水ぶちまけるんじゃねぇよ。機械が壊れたらどうすんだ」
「そんな事、俺の知ったことじゃない」

無言で睨み合う二人。
この二人が暴れたら俺の身が危ない。
止めようとした時だった。

「英志!!」
「ん?」

扉が勢いよく開かれ、誰かが走ってくる。そのまま俺に抱きついてきた。

「うわっ!……って梓乃じゃねぇか!!」

俺の胸に飛び込んできたのは幼馴染みの鬼山梓乃だった。

「無事でよかったよ〜。本当に心配だったんだから〜」

梓乃は涙目で顔を俺の胸に埋めている。……不覚にも可愛いと思ってしまった。

「ア、アザゼルさん……なんで梓乃がここにいるんですか?」

俺は現状を理解するためアザゼルさんに聞いた。
アザゼルさんは面倒くさそうに頭を掻きながら、

「お前らのゲームを一緒に観戦してたんだが、お前がリタイヤするなり冥界に乗り込むとか言い出してな……俺がエージを連れてくるからって、なんとかなだめてここで待たせてたんだよ。部屋まで貸して泊めてやってんだ」

そうか……

「心配かけて悪かったな」
「……うん」

俺は泣きじゃくる梓乃の頭を撫でた。

「古城英志、お前には『鬼』の知り合いがいるのか?」

唐突にヴァーリが意味の分からない事を聞いてきた。

「鬼?何の事だ?」

梓乃の身体が一瞬ビクッと震える。

「古来から日本に棲息する妖怪だ。知っているだろう?」
「いや、それぐらいは知ってるけど……」

ヴァーリの言いたい事がよく分からないでいると梓乃が俺の胸から離れ立ち上がった。

「私は……その鬼なんだよ」
「は?」

突然の告白に俺は呆けた声を出してしまった。

「私の家の先祖には鬼がいたみたいなんだ……その子孫である私達には鬼の力が宿るみたいなの。でも最近その力は薄れてきて大人達は自分が鬼である事を知らずに暮らしてるんだ。でも……」

そこまで言って梓乃の顔は暗くなる。

「私は何でか知らないけど……鬼の力が強く発現したんだ。貴方には分かるみたいだね」

ヴァーリを見ながら梓乃が言う。

「これでも俺は白龍皇だからな。力のある鬼を見るのは初めてだ。是非とも戦ってみたいよ」

そう言ってヴァーリは好戦的な笑みを浮かべる。
こういう奴の事を戦闘狂って言うんだろうな。

「馬鹿共、今日はもう寝ろ。明日からはエージをビシバシ鍛えなくちゃならないからな。
梓乃も手伝ってくれ」

アザゼルさんは相も変わらず機械を弄くりながら言ってきた。

「それもそうだな……では古城英志。また明日」

ヴァーリは踵を返し手を降りながら部屋を出ていく。
続いて梓乃が扉に向かう。
部屋をでる間際、梓乃は振り返り困ったように俺に聞いた。

「えっと……英志は…私が鬼だったこと…………どうおもう?」

うーん……どうって言われても……
でも、コイツが悪魔である俺達と互角に戦えたりしたのも鬼だからって事だろ?
ならさ……

「お前がその力をどう思ってるかは知らないけど……お前の力で俺は何度も助けられたんだし、感謝してるよ」

俺の言葉を聞いて梓乃は複雑そうな顔をして

「……そっか……ありがとうね英志」

そう言って部屋を出ていった。

「青春だねぇ〜」

アザゼルさんの陽気な声が部屋に響いた。


そこから二週間、俺の特訓という名の地獄は始まったのだ。



○二週間後

ヴァーリにボコボコに負けてから二週間がたった。
俺はこの二週間、アザゼルさんに光の槍で追いかけ回されたり、梓乃と素手で組手したり、ヴァーリに魔法の基本を身体で覚えさせられたり………

まぁ、色々あって俺は死にかけていた。

だってあり得ないもん!
あの三人、容赦という言葉を知らないに違いないんだ!!
広辞苑で調べてこいっての!!

俺は現在、アザゼルさんから与えられた自室のベッドに横たわっていた。

今日も厳しい訓練で、身体の節々がギシギシと悲鳴をあげている。

「……まだまだだな」

俺は手を開いて天井に向けて伸ばす。

訓練中は忘れる事が出来るが、こう大人しくしているとどうしても思い出してしまう。

みんな元気だろうか……
あの部室に行って部長と話して、姫島先輩のお茶を飲みながら塔城さんとお菓子を食べて、アーシアさんに日本の文化について教えたり、イッセーと一緒に木場をからかったり……

俺が失ったものは大きい。

俺が弱いばかりに負けたあの試合は、色んな意味で俺を変えた。

もう負けない。負けて失いたくない。

だから絶対に戻るんだ。
みんなが驚く位に強くなって駒王学園に帰るんだ!

天井に向けて開いた手を強く握り締め、俺は強く誓った。

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