小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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第7章 禁手化

俺は帰るなりアザゼルさんにコカビエルについて聞いてみた。

「コカビエルか……確かに奴は何か企んでいやがるが……まさか全勢力に喧嘩を売るつもりか?」

アザゼルさんは珍しく怒りを露にしたように苛立たしげな顔をしていた。

「アイツの事は調べておく、それまでお前はいつも通りに訓練してろ」

俺はアザゼルさんに従い、いつもの様に訓練をこなした。

それから数日、アザゼルさんに俺とヴァーリが呼び出された。

「呼び出して悪かったな。今からコカビエルを止めにいってもらいたい」

厳かにそう言った。アザゼルさんの顔はいつものチャラチャラした顔ではなかった。

「この度は俺達、『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部であるコカビエルが教会側から三本の聖剣を奪い、魔王の妹であるリアス・グレモリーの活動領域、駒王学園にケルベロス二体を引き連れ向かったと情報が入った。
これは天使、悪魔への宣戦布告になりかねない。
俺はこれ以上の戦争をのぞんじゃいない。もしそんなことになれば、堕天使は確実に滅びる。
それを避けるために、お前達にコカビエルを止めてほしい」

俺は拳を強く握り締め、アザゼルさんに言った。

「分かりました……いかせてください!みんなが戦ってるなら俺だけ見てるわけにはいきません!!」

コカビエルは駒王学園に向かったんだ。なら、部長達が応戦してるに違いない。

「俺は別に楽しめればそれでいい」

ヴァーリは腕組みをしながらクールに言い放つ。

「よし……お前ら二人はとっくにコカビエル程度、圧倒できる力がある。
俺が保証するぜ」

マジか!?あの地獄の訓練が俺をそこまで強くしていたのか!!

「あとエージ、お前はこれを着けてみろ」

そう言って渡されたのは見知らぬ文字が幾重にも刻まれたリングだった。

「そいつはセイクリッド・ギアの力を抑え、制御する役割を果たす。使えばお前も『禁手化(バランスブレイカー)』になれるかもな」

「バ、バランスブレイカー ?」

初めて聞く単語に俺は眉を寄せる。

「セイクリッド・ギア所有者の意思がこの世の流れに逆らう転じ方をしたときにセイクリッド・ギアが至る境地――――それが『禁手化』だ」

頭に?マークが幾つも浮かんでいる俺を見かねてヴァーリが補足した。

「ようは世界の均衡を崩す程の強大な力を得ることができるって事だ」

俺たちは転移用の魔法陣まで移動した。そこで、

「ヴァーリ、手本を見せてやれ」

アザゼルさんに促され、ヴァーリが背中に光翼を展開する。
次第に光翼の光はヴァーリの体を包みこむ様に広がり形を成形していく。

そして光が止んだとき、そこには白く輝く全身鎧を纏った者の姿があった。

圧倒的な存在感、心臓が押し潰されそうな圧迫感を発するその姿は神々しさすら感じさせる。

これがヴァーリの禁手化!!
こんなの組手で使われてたら俺は殺されてたな……

「これが『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』の禁手化、『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル)』だ 」

ヴァーリ……本当に凄い奴だ

「ほらエージ!お前も禁手化してみろ」

アザゼルさんが無茶を言ってくれる。

「む、無理ですよ!まだランサスとろくに会話してないの……『私を呼んだか?』…で、でた」

俺の声を遮り、あれだけ呼んでも応えなかったランサスが反応した。

「なんですんなり出てきてんだよ……」
『タイミングを測っていたのだ。私の復活が世に広まるなら、何か大きな出来事と重なった方がいいだろう』
「お前…!!そんな理由で俺を無視してたのかよ!!」

なんてドラコンだ!見ろ!アザゼルさんとヴァーリが呆れてるぞ!?

「まぁ、結果オーライだ。
エージ、お前だって強くなったんだ。自信もっていってこい」

アザゼルさんが俺の頭をグリグリしながら言った。

「そういや、お前のセイクリッド・ギアの名前、無かったよな?」
「はい」

俺のセイクリッド・ギアは謎が多く名前が無い。

「なら俺がつけてやるよ。
『古代龍(エンシェントドラゴン)』……
お前の能力はそのドラゴンの知識を引き出して再現するものだ……
『古代龍の腕甲(エンシェント・ドライバ)』でどうだ!?」

なんかアザゼルさん、嬉しそうだな……

「いいですね、それに決めましょう!」

俺は腕にアザゼルさんから貰ったリングを装着する。

「禁手化――――」

途端、俺を可笑しな感覚が襲う。
これが禁手化の兆候なのだろうか……

『エージ、初の禁手化だ。今のお前がどこまでもつかわからんぞ?』
「分かってるよ、ランサス。みんなを助けられるだけの時間があればいい」

俺から蒼白い魔力が迸る。
さあ、力を見せてみろ!!

「うぉぉぉぉぉ!!バランスブレイクゥゥゥゥ!!!!」

俺の叫びに呼応したかのように、蒼白い魔力が俺を覆う。

そして次の瞬間、俺はヴァーリと似たような鎧を着ていた。

鋭利な蒼白い装甲に身を包み、頭部には一角の大きな角。ランサスにもあったな。
背中には一対の魔力でできた翼が生えていた。金色の宝玉も鎧のいたる所についている。

身体の底から力が溢れてくるみたいだ!!

『お前のイメージを構築していったら鎧の姿になったか。
先ほどの白龍皇の禁手化を見た後では当然だな』

ランサスが言う。

「イメージを構築?どういう事だ?」
『もともと私のセイクリッド・ギアは形を持たず、力だけを与えるものだが……
お前の闘いの中での想いに応え形を持ったのだ。それがお前の右手の手甲。イメージは赤龍帝の籠手だ』

フリードとの闘いの時に俺が思ったから手甲の形になったってわけか。

「俺がこの鎧姿になったのもヴァーリの鎧を見た俺のイメージって事だな?」
『そおいう事だ』

俺は自分の手を握ったり開いたりして感触を確かめる。
全然不自由に感じない。

「やりゃあできるじゃねぇか!!」

アザゼルさんが歓喜の声を上げる。

「…少しはマシになったな、今度は禁手化どうしで戦ってみたいよ」

顔は鎧に隠れて分からないがヴァーリはきっと笑ってるに違いない。コイツはバトルジャンキー
だからな。

「そうだ、こいつにも名前つけなくちゃな……『古代龍の鎧(エンシェント・ドライバ・フルアーマー)』
で決まりだな!!」

本当にアザゼルさんは嬉しそうだな…流石はセイクリッド・ギアの第一人者だ。

「そろそろ向かうか……アザゼル転移してくれ」

ヴァーリの言葉にアザゼルさんは頷き、床に魔法陣を出現させる。

「転移先は駒王学園の上空付近だ。それじゃ、行って来い!!」

魔法陣が光輝き、俺たちは転移した……

そこは地上から遠く離れた上空で、周りには雲が漂っている。
月明かりに照らされながら、俺は空に浮いていた。

背中の翼を羽ばたかせ、ヴァーリが真下にとんで行く。
俺も行かなくちゃ!!…ってどうすればいいんだぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!!!!!
空を飛んだ事がない俺はただ真下に落ちていく。

「なにをやってるんだ古城英志!翼を広げろ!!」

ヴァーリが珍しく俺を叱咤するが、そんなこといきなりできるほど俺は器用じゃなかった。

「おぉぉぉちぃぃぃぃるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううぅぅ!!!!!!」

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