小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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ゼノヴィアのマンションから出て、二時間。
すっかり日も暮れて、夜の闇が辺りを支配していた。街灯の灯りに照らされた道を一人で歩く。

今日もアザゼルさんを見つけられないでいた。

「今日はもう帰るかな……」

人目につかない場所で転移をしよう。
場所を探していると、町外れの公園に辿り着いた。
俺がレイナーレに殺された公園だ。

「……ここでいいか」

抵抗はあったが選り好みもできないので、俺は公園の中央で魔方陣を展開しようとした。
だが俺はその手を止めた。

目の前に舞い降りた、漆黒の翼を持つ美女。レイナーレが表れたからだ。

「……趣味の悪い連中だ」

レイナーレは光の槍を俺目掛けて投げつけるが、それは俺の身体に突き刺さる事はなかった。

槍がまるで実体を持たないかの様に俺の身体をすり抜けたからだ。

このレイナーレは幻覚だ。

「……俺に幻術はきかねぇよ。テロリスト共」

レイナーレの姿が段々ボヤけていき、そして消えた。

俺の言葉を聞き、回りの茂みからフード付きのローブを着た魔術師が表れた。二十人はいるだろうか?

「あんたらが……禍の団(カオス・ブリゲード)か」

魔術師達は答えない。
ただこちらを見ているだけだ。

「そうかよ……でも、俺に幻術を仕掛けたんだ。死ぬ覚悟はできてんだろなぁ」

威嚇するようにドスの効いた声で術師達に言い放つ。

魔術師達は警戒し、魔法陣を展開し俺に向ける。
そこから様々な属性の魔術が放たれた。

俺に魔術で挑むとか自殺行為だぞ?
俺は自分の回りに防御障壁を作り、全ての攻撃を防ぐ。

動揺したのか、魔術師達がざわめきだす。俺も強くなってんだよ。

「お返しだ」

今度は自分の回りに小さな魔方陣を幾つも展開した。

瞬間、その魔方陣から細いビームが放たれ、魔術師達を貫いた。

「俺の訓練相手は堕天使総督に白龍皇だ。負けるわけねぇだろ」

にしても……禍の団。
胸くそ悪い連中だぜ。







○神の子を見張る者(グリゴリ)

俺は自室で今日の出来事を振り返った。

黒歌にゼノヴィア。
そしてテロリスト。

色々ありすぎて疲れた一日だった。

「ランサス」
『なんだ?』

俺はセイクリッド・ギアに宿るドラゴン、ランサスに話しかけた。

「これからどうなるんだろうな。眷族に戻れないかもしれない。テロリストに命を狙われる。
これもドラゴンを宿す者の宿命ってやつなのか?」
『ドラゴンは力を呼び寄せる。良くも悪くもな。どうなるかはお前の選択次第だろう』

選択か……

「そっか……」

俺のせいで眷族のみんなが傷付くなら……俺は…………
俺はそのまま眠りについた。






目を覚まし、いつものように身体を動かそうとベッドから降りる。
タンクトップと短パンに着替え訓練用のフィールドに転移した。

筈なんだが……

「どこだここ?」

転移した先はいつもの何もない空間ではなく、薄暗い空間だった。

「やあ、ようこそ。古城英志」

後ろからの声に振り向くと、そこには漢服を着こんだ男がいた。

「俺は曹操。禍の団、英雄派のリーダーだ」

禍の団…またか。
俺の転移魔法陣の移動ルートに細工して俺をここに呼び出したんだろう。

「ここに呼んだのは、君のデータが欲しくてね。手合わせ願うよ」

曹操は槍を手に出現させ、俺に向ける。
その槍から危険なオーラをビンビン感じる!!

「それがあんたのセイクリッド・ギアか?」

俺も右手に腕甲を装着する。

「『黄昏の聖槍(トウルー・ロンギヌス)』俺のセイクリッド・ギアだ」

黄昏の聖槍!?

「おいおい……『神滅具(ロンギヌス)』の代名詞になったセイクリッド・ギアの使い手が
テロリストかよ」
「人間のままどこまで行けるか試してみたくてね」

人間のままね……

「君のセイクリッド・ギア『古代龍の腕甲(エンシェント・ドライバ)』の力を見てみたいのさ。
じゃあ……始めようか!!」

曹操が一気に俺に突っ込んでくる!
俺はギリギリで鋭い刺突を避ける。そのまま槍を横に薙ぎ払うように振るってきた。
障壁を創り出すがまるで役に立たない。止まることなく俺に向かってくる槍。

「くそっ!」

しゃがみ込んでかわし、俺は曹操の足元に魔法陣を展開する。
その魔法陣から鋭利な氷柱が生える。

「おっと!」

曹操は後ろに飛んで回避した。
着地の瞬間を狙い、火球を放つが槍をくるくる回してそれを防ぐ曹操。
本当に人間かよ!?

「まだまだだよ!」

再び俺に飛びかかってくる。

「あんまり俺を……舐めんじゃねぇ!!」

俺の身体を光が覆い、鎧を形造った。
禁手化(バランス・ブレイカー)だ。
俺に飛びこんでくる曹操に向けて俺も飛び出す。

ゴウッ!

予想外のスピードに驚いたのか、曹操の目が見開かれる。

「おらぁ!!」

拳を突き出すが、横に大きく飛んで避けられる。

「それが君の禁手化、『古代龍の鎧(エンシェント・ドライバ・フルアーマー)』か!
面白い!!」

こいつらが俺のセイクリッド・ギアの名前を知ってるのはなんでだ?
神の子を見張る者に裏切り者がいるってことか?

「喰らえ!!」

俺は目の前に幾つもの魔法陣を展開した。

「それはまずいな……」

光がその魔法陣に集まり、そこから無数のビームが放たれる。
曹操はそれを避けるが、ビーム一本一本が曹操をホーミングした。

「にがさねぇぞ!!」

曹操は尚も回避し続ける。

「キリがないな!」

そう言うと、曹操はビームを全て弾いて見せた。

「マジかよ……」
「いや、いい攻撃だ」

曹操は肩に槍をトントンしながら余裕そうに言う。
なら……!

曹操の真上に魔法陣を展開、雷を降らす!

「ハハハ!なんでもありだな!!」

それも避けて曹操はまた俺に突っ込んでくる。
接近戦で打ち勝つしかない!

俺も構えをとり、拳を打ち出す。
曹操の槍が俺の鎧に掠る度に、俺の鎧が砕ける。なんて威力だよ!

「ランサス!鎧の修復頼む!」
『了解した』

あいては生身の人間なんだ、一発当てれば俺の勝ちなのに……
その一発が当たらない。
それだけコイツの戦闘技術が高いってのかよ!

「おぉぉぉぉぉぉ!!」

俺は蹴りに雷の魔法陣を纏い、曹操めがけて蹴りだすが当たらない。
空を切った俺の蹴りから雷が迸りこの空間の壁に穴をあけた。

「空間を破壊する程の威力!本当に数カ月前まで只の人間だったとは思えないぞ!!」

笑いながら攻撃を繰り返す曹操。コイツもヴァーリと同じ戦闘狂だ!!
焦って打ちだした拳を掻い潜り、曹操が俺の懐に入ってきた。

「しまった!」
「はっ!」

ザシュ!

心臓を狙って突き出せれた槍を身体を捻ってかわそうとしたが、かわしきれずに俺の腹に突き刺さった。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

刺された所から肉が焦げた臭いと、煙が上がる。
聖槍ってだけあって悪魔を滅する力もあるのか!
曹操が槍を引き抜いた。そこから鮮血が噴き出す。
光が俺の身体を駆け巡り、身体機能が低下するのが分かる。

「ここまでか」

残念そうに呟き、曹操は転移魔法陣を展開した。
俺の足元にも転移魔法陣が描かれる。

「君のデータは充分にとれた。また戦えるのを楽しみにしているよ」
「ふざけんな!俺はまだ……」
「確かに、まだ戦えるだろうが……俺が禁手化すれば、君を殺すことなんてたやすい。
本気で殺し合うのは君がもっと強くなってからだ」

魔法陣の光に包まれ、俺はグリゴリの自室に居た。

「世の中……広いな」

俺は鎧を解除して傷口を抑えながら、呟いた。

「みてろよあの野郎!!」

もっと強くなってリベンジしてやる!!

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