「うまい!」
俺は部長と姫島先輩が作ってくれた料理を食べていた。
「おかわりはまだあるから、たくさん食べなさい」
「はい、部長!」
隣には塔城さんが俺と同じように料理を平らげている。相変わらず凄い量だ。
「リアスちゃんの料理美味しい☆」
「うん、流石は部長だ」
レヴィアタン様とゼノヴィアも満足したようだ。
「はい、エージ君。これもどうぞ」
姫島先輩が俺の前に料理を並べてくれた。どれも美味そうだ。
「その料理は私が作ったのよ。どうかしら?」
「姫島先輩の料理が不味いわけ無いですよ!!」
姫島先輩も部長に負けず劣らず料理上手なんだよな。
楽しい時間は直ぐに過ぎていき、賑やかな夕食は終わった。
食後の軽い休憩の後、レヴィアタン様が何故か持っていたトランプで遊んだ。
ポーカーフェイスな塔城さんは無敵を誇り、俺は毎回最下位の屈辱を味わった。
「はぁ……疲れた」
時刻はもう十二時を指していた。他のみんなは風呂に入りにいって、リビングには俺一人だった。
「そういえば……今日はやってないな」
日課となった朝晩の訓練をしていない事に気付いた俺は、立ち上がり、自室に向かった。
俺の自室にはアザゼルさんが作ってくれた訓練用のフィールドへの転送魔法陣がある。
俺は朝と夜、訓練用のフィールドで身体を鍛えているんだ。
階段を登り、俺は部屋に入った。
床に大きく描かれた魔法陣から俺は転移した。
何もない真っ白な空間だ。
「さて……始めるか」
動きやすい服装になり、準備体操を開始した。
そんな時だった、
「み〜つけた☆」
裸も同然の格好でレヴィアタン様が転移してきた!
風呂からあがったばかりなのか、その身体はほんのり赤く、水が滴っていた。
「レヴィアタン様!服を着てください!!」
鼻を抑え、レヴィアタン様に背を向けた。エロすぎて直視できない。
「ごめんごめん☆」
背後から衣擦れの音が聞こえてきて、俺は胸を撫で下ろした。
心臓に悪いよ……魔王様。
「OKだよ☆」
レヴィアタン様に言われ、振り向いた。
相変わらずのコスプレ服が肌に張り付いていて、身体のラインがクッキリ分かってしまう。
目をそらしながら俺は聞いた。
「なんでここに……」
「リアスちゃん達が入浴してる間にエージ君と遊ぼうと思って☆リビングに居ないから魔力を
追ってきたんだよ☆」
軽く言ってのけるが、魔力で俺を追ってきたって……
やっぱり魔王の名は伊達じゃないんだな。
「で、何してるの?」
「日課の訓練ですよ。俺は弱いから、仲間を守れる力を身につけなきゃいけないんです」
「じゃあ、私が相手してあげようか?」
「ホントですか!?」
レヴィアタン様の申し出は有難いものだった。
いつもは俺一人でやる訓練も相手が居れば効率も上がるだろう。
しかもその相手が四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタン様なら尚更だ。
それに……今の俺がどれ位通用するのか試してみたい。
「是非お願いします、レヴィアタン様。全力で挑ませていただきます」
「うん。私も手加減するけど、死なないように気をつけてね☆」
ゾクリ
急にレヴィアタン様からとてつもない威圧感を放たれた。
それが俺の心に恐怖となって押し寄せてくる。
いつもと同じように立っているだけなのに、レヴィアタン様は俺を威圧してきたのだ。
「ビビってちゃ……始まらないよな!バランス・ブレイク!!」
恐怖を払いのける為、俺は叫び声を上げた。
蒼白の光が俺を包み、鎧を纏った。
「行きますよ!」
先制攻撃を仕掛ける!
背中の翼をはためかせて、俺はレヴィアタン様に突進する。
突進するなか、無数の魔法陣を宙に展開。
各魔法陣から様々な属性の魔法がレヴィアタン様に向かって放たれた。
ドオォォォォォォォォォォン!!
次々と俺の魔法がレヴィアタン様に直撃する。爆煙が舞い上がった。
普通の相手ならこれで充分かもしれないが、相手は魔王だ。油断はできない。
掌に大きな魔力弾を創り出し、煙の中に投げ込んだ。
グッと拳を握る。
「弾けろ」
先程の魔力弾が弾け、大きな爆発を起こした。
圧縮して放出した魔力を解放したのだ。
これで少しはダメージを与えられた筈だ。
「まあまあかな」
突如、煙が渦を描き掻き消えた。
そこには傷ひとつないレヴィアタン様が悠然と立っていた。
「並みの悪魔なら楽勝かもしれないけど……私相手には足りないかな☆」
レヴィアタン様は右手を突きだした。
氷がその手に巻き付く様に生成されていく。やがてその氷は鋭い槍となりレヴィアタン様の手に収まった。
「死なないでね☆」
レヴィアタン様は氷で出来た槍を投擲した。
凄まじい速度で飛来するソレを防ぐため、俺は何重もの防御障壁を出現させる。
だが、槍は止まらなかった。
一枚、また一枚と槍は障壁を突破していく。
「そんな!?」
防ぎきれず、とうとう槍は隙だらけの俺を串刺しにしようと向かってきた。
身構え、回避しようとする俺の耳にレヴィアタン様の声が届いた。
「バン☆」
その一言で槍は霧散した。あまりの出来事に俺は対応できなかった。
キラキラと氷の破片が辺りに降り注いでいた。
なんだ?
俺の身体に異常が起こる。氷の破片が身体に触れた瞬間、それが大きな雹と成った!!
連鎖したのか全ての破片が雹となり、俺を包んだ。
氷の槍を解放して散った破片で俺を氷漬けにしたのか……これが……魔王……
薄れゆく意識の中、俺はレヴィアタン様に畏怖の念を感じた。
目覚めると、俺は自分の部屋のベッドで寝ていた。
裸で。
あれ?俺って裸で寝る主義じゃなかったよな?
どうしたんだっけ?
…………思い出せない……
とりあえずベッドから降りよう……そして服を着よう。
ムニュ
立ち上がろうとベッドに着いた両手から妙な感触を感じとった。タオルケットの下に何かあるのか?
右手には柔らかいがしっかりとした弾力がある。
左手には小さな膨らみが……
ムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュ
いつまでも触っていたいようなこの柔らかさは何なんだ…………
謎の物体Xを触っていると、タオルケットの中がモゾモゾと動いた。
な、なんだ?
次の瞬間、顎に衝撃が走った。
「オブッ!!」
綺麗なアッパーカット……
再びベッドに横たわった俺に声がかけられた。
「……触りすぎです先輩」
「うふふ、エージ君は朝からお元気ですね」
タオルケットから這い出てきたのはパジャマ姿の塔城さんと姫島先輩だった!
「な、何故……」
するとベッドの下、床の方から声が聞こえた。
ひょっこり顔を出したのはレヴィアタン様だった。
「気絶したエージ君とベッドで寝てたら、皆からブーイングされちゃって……じゃんけんで勝った二人がベッドを勝ち取ったの☆」
床の方を見ると、布団が敷いてあって部長、ゼノヴィアが寝転がっていた。
可愛い寝顔は見ているだけで心が癒された。
不意にレヴィアタン様が俺に抱きついてきた。
「それにしても、エージ君気に入った☆私の眷族にほ〜し〜い〜☆」
「いや……それはちょっと……俺なんかが魔王様の眷族なんて恐れ多いですよ」
「エージ君なら戦力になるし、可愛いから大丈夫よ☆」
「それは出来ません」
レヴィアタン様の声を遮ったのは部長だった。
ムクリと布団から立ち上がってレヴィアタン様を見下ろしている。その背にはうっすらと紅い魔力が漂っていた。
「いくら魔王様といえど、私は眷族を手放したりしません」
「部長………」
こんな俺の事をそんな風に言って貰えて嬉しいっす!!
「でも……朱乃と小猫の胸を触った事は償って貰わないとね」
…………………すいませんでした。
俺はその日、下僕のなんたるかを部長に教え込まれたのだった。