小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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魔王領に着いた俺とアザゼルさんは黒い服を着たSPみたいな三人に囲まれながら、大きなビルの最上階に向かっていた。

今はロビーに入ったばかりたけど、内装が豪華で圧倒されてしまった。

それに……このビルから物凄く強い魔力を感じるんだけど……
間違いなく、四大魔王様だよね。

ルシファー様とレヴィアタン様はお会いしたことがあるけど、他のお二方には会ったことがない。
一体どんな人達なんだろうか?

最上階に行くため、エレベーターを使おうとしたとき、

「失礼ながら、貴方は別の道から向かって頂きます」

黒服の一人がエレベーターに乗り込もうとする俺の前に立ちはだかった。

「おい、ソイツは俺の部下みたいなモンなんだが……」

既にエレベーターに乗っているアザゼルさんが言うが、黒服達はまったく動じない。

「分かっております。アザゼル殿はお先に魔王様の下へ向かってください」
「…………サーゼクス達のお遊びってわけか。じゃあ、先に行かせてもらうぜ」

扉が閉じ、アザゼルさんを乗せたエレベーターは上昇していった。

その場に残された俺は、黒服達を鬱陶しそうに睨む。

「………何か用事でもあるんスか?」
「黙れ小僧」

黒服達はさっきまでのうやうやしい態度とは一変し、攻撃的なオーラを発した。

「アザゼル殿の手前、抑えてはいたが……貴様の様な餓鬼が魔王に謁見などど無礼千万」
「貴様が魔王様とお会いする資格があるかどうか、私達が見極めてやる」

魔王様は魔界を統べる偉大な方々だ。
その方々に俺みたいな馬の骨が会う事じたい、滅多に無いらしい。

今の悪魔社会は純血の上級悪魔が人間から転生した下級悪魔を排他的に見る傾向が強い。

俺が魔王様に会うのを面白く思わない連中がいてもおかしくないって事か……

「場所を変えるぞ」
「………ねぇぞ」

黒服は俺を引っ張って、エレベーターに連れ込み、地下へのボタンを押した。
重い機械的な音が木霊する。

「後悔しても知らねぇぞ」

俺の警告の声は、エレベーターの起動音に掻き消され、黒服達に届くことは無かった。






○地下

エレベーターに乗って数分、地下十階で停止した。俺は黒服達に押される様にエレベーターから降りた。

「ここは………」

そこはまるで闘技場の様な場所だった。
中央には円形の何もない武骨なフィールドがあり、回りには野球場の観客席みたいな物があった。
観客席はその大半が埋まっていた。熱気が凄まじい。

「このコロシアムで私達と闘ってもらう。尚、この闘いは……魔王様も御覧になられる」

……不様な闘いはできないな。

「ここはレーティングゲームとは違い、悪魔同士が己の力のみで闘う『デュエル』のコロシアムだ」

黒服の一人が俺に説明する。
『デュエル』ねぇ……面白そうじゃないか。

「やるんなら、早くやろうぜ。
魔王様を待たせるわけにはいかないだろ」

黒服達は俺の言葉に顔を歪めるが、直ぐに落ち着きを取り戻した。
無言でフィールドに続く道を歩いていく。

俺がフィールドに降り立つと、実況放送が流れた。

『おおっと!今届いた資料によりますと、フィールドに姿を表したのは……あのリアス・グレモリー様の「兵士(ポーン)」古城英志だぁぁぁ!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

鼓膜を揺さぶる歓声に俺は身震いした。
部長の眷族だからってだけでこんなに歓声が上がるなんて……グレモリー家、恐るべし。

『対するは……このコロシアムでも目覚ましい成果を上げている三人組、コンバッド、ダニー、グレックだ!!』

俺の時と同じように歓声が沸き起こる。
どうやら黒服達はコロシアムの中ては有名人らしい。

「……三対一かよ」
「魔王様に会うからにはそれぐらいの事をしてもらわなければな、まぁ無理だろうが……クク」

完全に俺を見下した物言いにカチーンときたが、我慢する。

『それでは今回のルールを確認するぜ!内容は三対一の変則マッチ。相手が敗けを認めるまで、戦闘を続けること。それでは…………」

あれだけ騒がしかった観衆も、戦闘開始前の独特の空気に口をつぐんだ。
辺りを静寂が支配した。

『始め!!』

実況の合図と同時に観衆から待っていましたと大きな歓声が上がる。
さぁ……見せてやるよ。古代龍の実力をなぁ!!

右手にセイクリッド・ギアを装着し、三人に対面した。

「かかってこいよ。おっさん」

俺は一言そう告げて、相手の出方を伺った。

「餓鬼が……死んでも文句を言うなよ!」

黒服は散開し、フェイントを織り混ぜながら俺に向かって高速移動してくる。

俺の前まできた瞬間、三人同時に殴りかかってきた。

後ろから正拳、左右から手刀と中段蹴りか。
コンビネーションは確かに素晴らしいけど……

「俺には通用しない」

俺は一瞬の内にその全てを弾き、身を守った。
ヴァーリやアザゼルさんに比べたら遅いくらいだ。

「馬鹿な!?」

動揺する三人に追い打ちをかけるように俺は前進した。腕甲に嵌められた宝玉が輝き出す。

三人は魔力弾を作り出し、乱射した。
俺が居た辺りが、魔力の一撃で大きく抉れる。
土煙が舞い上がり、俺を包み込んだが障害にはなり得なかった。

「バランス・ブレイク」

俺の呟きに呼応し、宝玉は更に光輝いた。
身体の底から力が湧いてくるイメージ………全力で潰す!!

鎧を纏った俺の魔力の余波で、地面は抉れ、土煙は霧散した。

「貴様……!!一体何なのだ!?」

やはりと言うか……敵さんは俺の事をなにも知らないらしい。

「俺は古代龍を宿す者だ。言っとくが……俺は現赤龍帝より強いぞ」

イッセーは先ずバランス・ブレイカーにも至ってないし、まだまだこれからだ。

右手を付きだし、魔方陣を展開する。
その、魔方陣から不気味な異形が姿を現した。

「初めて挑戦するけど……上手くいったな。マンティコア」

会場全体が俺が呼び出したモノを見て絶句している。

俺が今使ったのは召喚魔方陣だ。
ランサスのデータに入っているモンスターを魔方陣で構築し、俺の魔力で再現したのだ。

頭部と胴体はライオン、背中には蝙蝠の翼、尻尾は蠍の形をした怪物。それがマンティコアだ。

「何でもアリなんだろ?」

マンティコアに指示を出し、目の前の敵を狙わせる。

「ゴォアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ギラリと目を光らせ、マンティコアは咆哮した。
怪物と呼ぶに相応しい、おぞましい叫びだった。

「クッ……」

呻く男の目の前に、マンティコアが突如姿を表した。
驚きで硬直した男に無慈悲な爪が降り下ろされる。

ザシュ

鮮血が辺りに飛び散り、男は気を失った。
血に塗れた爪が生々しい。
マンティコアの予想以上のスペックに、俺は感心した。

「殺すなよ」

俺がそう言ってる間にも、マンティコアは尾の針を黒服の一人に突き立てていた。

「……貴様ぁぁぁぁぁ!!」

最後に残った男は激情に駆られ、俺に突っ込んできた。
俺に向かって打ち込まれる拳を、俺は難なく掴む。

「……俺は上級悪魔で下級悪魔を見下す奴が嫌いだ。俺を燃やした、トサカ野郎を思い出すからな」

俺はレーティングゲームで上級悪魔、ライザー・フェニックスにより致命傷を受けた。
ソイツは下級悪魔を見下して、馬鹿にするような奴だった。

「……でも、今は感謝してる。間接的にだけど、アイツのお陰で俺は強くなれたんだからな」

ギリギリと、拳を握る手に力を込める。
レヴィアタン様には惨敗したけど、今の俺は……上級悪魔だって相手にできる!!

「血とか才能とか関係ねぇ。努力は……才能を凌駕する!!」

一気に手を引き、相手のバランスを崩す。
無防備になった顔面に、渾身の拳打を打ち込んだ。

ドゴンッ!!

拳打の衝撃は男を通り抜け、後ろのフィールドを裂いた。
男は吹き飛び、そのまま動かなかった。
そこで再び実況の声が響きわたる。

『圧倒的!リアス・グレモリー眷族、古城英志!!凄まじいパワーで勝利を手にしましたぁぁぁぁぁ!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

俺は会場を割らんばかりの大歓声を浴びた。
こんな風に歓声を受けることなんて無かった俺は変な気分になった。

『ここで……なんと魔王様から回線が繋がってきました!』

ざわめきだす会場も、魔王という単語が出た瞬間からどんどん静かになっていった。

魔王様のカリスマ性には脱帽だ。

『久しぶりだね、エージ君。流石はリアスの眷族だ。早速上がってきてくれたまえ』

ルシファー様の声が聞こえて、俺はようやく魔王様との謁見を許された。

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