小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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夢を見ていた。

なんで夢だと分かるかというと、俺の視点はどこか宙にあって禁手化した自分を眺めていたからだ。
夢の中の俺は光輝が満たしている空を全力で飛行しているようだ。

風景が凄まじい速度で流れていき、ゴウゴウと耳には風をきる音しか聞こえない。
やがて停止した俺は見た、辺りに建ち並ぶ神殿のような建物を。
荘厳なオーラを纏っている神殿は幾つも乱立している。

その内の一つに夢の中の自分は急降下した。
視界の隅に何かが映る。黒いフリルの着いた可愛らしいドレスを着た幼い少女。
だが、その目は暗く見つめていると吸い込まれそうになる。

「オーフィス!!」

夢の中の自分がそう叫び、少女に突撃していく。
拳を叩きこむ直前、夢の中の自分の身体が何かに弾き飛ばされた。

それは人ぐらいの大きさの赤い龍だった。
胸の部分がスライドし、砲門が現れる。
そこから赤いビームが放たれた。
夢の中の俺はそれをかわしたが、ビームは地面を抉り遥か彼方で爆発した。

爆発の余波で神殿が崩れる。
いや、空間そのものが悲鳴を上げているかのように揺らいでいた。

(なんだこの化け物は?)

すると、夢の中の俺に異変が起こる。
蒼白い鎧が奇妙な音を立て、夢の中の俺は苦悶の声を上げている。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

次第に鎧は形を変えていき、色も空の様な蒼から闇を閉じ込めた漆黒へと変色する。
赤いラインが漆黒の鎧の上を駆け巡る。
そして咆哮した。

「ゴギャオアアアアアァァァオォォオォアアオアアアオアァァァ!!!!!!!!!」

先程の叫びと違い、人の発する声量でも音でもなかった。
別のおぞましい怪物の絶叫だ。

近くにあった神殿は完全に砕け散り、地面は大きく抉れた。
空間にはヒビが入り、次元の狭間が覗いていた。
声だけでここまでの破壊を引き起こしたのだ。

(俺……なんだよな?)

赤い龍と黒く変貌した夢の中の俺は相対した。
高速でぶつかりあう赤と黒。

衝突の瞬間、声が聞こえた。

『我、目覚めるは

覇の理を体現せし、古代龍なり

無限を目指し、夢幻を馳せる

我、全てを滅ぼす災禍となりて

世界に終わりをもたらそう』


禍々しい声だった。
更に脳内に直接響く。

『壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ』

(頭がっ!……おかしく…なりそうだ)

宙にある俺の視界は段々暗くなっていき、完全に途切れた。





目を覚ます。
見上げる天井はいつもの自分の部屋の天井ではなく、豪華に飾られていた。
部長の家に居るんだったな……

しかし…嫌な夢を見ていた気がする。思い出せないけど……

Tシャツは汗で濡れていて、呼吸も荒い。
なんなんだ…?

身体を動かそうとするが、何かが乗っているようにで動かなかった。

「……何だ?」

タオルケットの中を覗くとパジャマを着たゼノヴィアが居た。
スウスウと寝息を立てている。

「なっ!?」

タオルケットを再び被せ、俺はベッドから飛び退いた。

「今度はゼノヴィアかよ!!」

激しい心臓の鼓動を抑えながら俺は毒づいた。
前にも俺のベッドに姫島先輩と塔城さんが潜り込んできた事があった。
でも、今は全員に個室が用意されている筈だ。

「うん……もう朝かい?」

ゼノヴィアはタオルケットを払いのけて伸びをした。
まだ寝ぼけているようで目が虚ろだ。

「おい!ゼノヴィア!!なんで俺のベッドにいるんだよ!?」

一拍間を置いてゼノヴィアは答えた。

「エージの寝顔を見ようと忍び込んだんだが……何やらうなされていたので一緒にねたんだ。
感謝してくれて構わないぞ」

エッヘンと胸を張るゼノヴィア。
そんなポーズをされると大きな胸が強調されて意識してしまう。
目を逸らしながら俺は反論した。

「大きなお世話だ!
とにかく俺は起きるからな!まだ寝る気なら自分の部屋に行け!!」

俺は備え付けられている浴室に着替えをもって入った。

「まだ早いな」

窓から外を覗くと、太陽が顔をだした位で辺りは薄暗い。
着替えを完了した俺はリビングに戻った。
無難に駒王学園の制服だ。

「朝食まで時間があるがどうするんだい?」

リビングには同じく制服に着替えたゼノヴィアが待ち構えていた。
足元にはゼノヴィアの荷物が置いてあった。

「実はグレイフィアさんに頼んで相部屋にしてもらったんだ」
「好きにしてくれ……」

俺は頭を抱えたくなった。

「それと、今日は若手悪魔の集会があるらしいから準備をしておいた方がいいぞ」
「今日!?」

俺が驚いたのが不思議なのかゼノヴィアは怪訝そうな顔をした。

「昨日部長が言っていたんだが……聞いていなかったのか?」
「初耳だ!」

魔王様から若手悪魔が集まる行事があるって聞いたけど……
今日とは聞いてないぞぉぉぉ!!

慌ただしい一日がまた始まったのだった。






列車に乗り込んで何回か魔法陣で転移して俺たちグレモリー眷族は魔王領のルシファードに到着した。
旧魔王、ルシファー様が居られた場所だとか。

「人目につかない様に移動するわよ」

列車から降りて地下の列車で会場に移動する。
部長は魔王様の妹だし、その美貌からファンが多いらしい。
あまり目立ちたくないんだろうな。

だが、地下のホームに移動する最中に俺たちは野次馬に発見されてしまった。

「リアス様ぁぁぁぁぁぁ!!」

男女入り混じった歓声が俺の鼓膜を震わせる。
歓声はリアス様だけではなく、木場、姫島先輩、なんとあのイッセーにまで向けられていた。
はっきり言うと俺以外のメンバーは歓声を受けていた。

「もの凄く負けた気分だ……」

眷族から離れてたし、俺の知名度は皆無に等しい。
魔王の妹、赤龍帝、雷に巫女、聖魔剣、聖女、デュランダルの使い手……
濃すぎるメンツなんだよな。
俺なんてグレモリー家の使用人位に認識されているのかもしれない。

俺は大観衆の見守る中、泣きそうになった。

地下鉄での移動も終了して俺たちは黒服の男たちに案内された。
そこは広大なホールで、エレベーターで上階に向かった。

「さあ、気を引き締めなさい。他の悪魔に弱みを見せては駄目よ。
私の下僕として、毅然とした態度をとりなさい」

部長の凛とした声がエレベーター内に響く。
部長に応じて俺たちは頷いた。

















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