小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

エレベーターを降りて辺りを見る。
通路には使用人の人が何人も待機していて忙しなく働いている。

「こっちよ」

部長に続いて俺たちは通路を進んでいく。
アザゼルさんに声をかけられる。

「裏切り者の捜査の件はリアス達に言うな。どこから情報が漏れるか分からないからな。
お前も気をつけて行動しろよ」
「分かってますよ。元から一人で調べる気でしたから……まだ皆が『禍の団(カオス・ブリゲード)』
と戦うのは危険すぎる」

魔王様から頂いた情報によると、『禍の団』は旧魔王派、英雄派に大きく分かれているらしい。
他にも小規模な派閥が存在するみたいだけど危険視するべきなのはこの二つだ。

旧魔王派は旧き魔王の血を引く者とその考えに共感する悪魔が集まった集団だ。
今の悪魔社会に不満があるらしい。
冥界を支配して世界を征服する事が目的だ。

英雄派は全容はまだ分かっていないが、リーダーは曹操。
『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の所有者。
俺は一度戦った事があるが底の見えない不気味な男だった。

「俺はヴァーリ達も気になるんだよな」

白龍皇ヴァーリとその仲間。人数が少なくヴァーリチームと呼称されている。
ヴァーリを筆頭にとんでもない連中が集まっている。
SSランクのはぐれ悪魔、黒歌。孫悟空の力を受け継ぐ妖怪、美猴。
そして俺の幼馴染で『鬼』、鬼山梓乃。

あいつを説得して連れ戻すのも俺の役目だ。

「そういえば、ヴァーリ達の情報は無いんですか?」

俺は隣のアザゼルさんに声をかけたが反応がない。怪訝に思い目をやると

「あれ?」

アザゼルさんは居なかった。それだけだはなく前に居る筈の部長達の姿も見えない。
考え事に夢中ではぐれてしまったのか。

どうしたものか……
今から走って行けば追いつけるかな?

俺がそんな事を考えてる時だった。
大きな物音が近くの扉から聞こえた。なにやら怒声も聞こえる。

「まさかテロか!?」

俺は不安を抱きながら扉を開けた。
そこには破壊されたテーブルや椅子が散らばっていた。
そして丁度半分に分かれて悪魔の集団が睨み合っていた。

その二つの集団の先頭に居る悪魔には見覚えがあった。
眼鏡をかけた棘がありそな女の子は大公家の次期当主、シークヴァイラ・アガレス。
チャラチャラした悪そうな兄ちゃんはグラシャラボラス家の……なんだったっけ?
ああいう奴は気に食わないから覚えてないな。

どうやらこの二人が揉めているようだ。
男が女と喧嘩腰になってどうするんだか……

俺はため息を洩らしながら二つの集団に割って入った。

「はい、そこまで……これから魔王様の前に行くのにそんなんでどうするんですか?」

俺の意見に帰ってきたのは罵倒と冷たい嘲笑だった。

「うるせぇ!引っこんでろ!!」
「貴方には関係ありませんから」

我慢だエージ……ここで暴れたら部長にも迷惑がかかる。
ふと俺を見ていたシークヴァイラさんが何かに気づいたような顔になった。

「……もしや貴方はフェニックス戦で行方不明になったグレモリー眷族の者では?」
「俺の事知ってるのか!?」

心のなかで俺はガッツポーズをした。

「これから戦うかも知れない相手を調べるのは基本です。
グレモリーはイレギュラーな集団ですから。その中で貴方はデータが無かった」

そりゃ行方不明だったしね…
勝手に話していた俺たちが不愉快だったのかチャラチャラした兄ちゃんが声を荒げる。

「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇぞ!グレモリーの眷族だかしらねぇが、邪魔すんじゃねぇよぉ!!」

本当に五月蝿い奴だな……
これで魔王様を輩出した家の次期当主なのか?

「我儘言って縁談をぶち壊したじゃじゃ馬なんてどうでもいいんだよ!
俺はそこの眼鏡に用があるんだぁ!!」

あぁ……?
コイツ今何て言ったんだ?部長を馬鹿にしたのは間違いないよな?

「………訂正しろ」

俺はチャラ男に向かって歩き出した。
身体から蒼白い魔力が滲み出る。会場は俺の行いに対してざわめき出す。

「んだこらぁ!!やんのかぁ!!」

尚も息を捲いているチャラ男。
目の前で俺は足をとめ、睨みつける。
俺の眼光に一瞬怯んだチャラ男は一歩後退した。

「訂正しろ」

もう一度警告を発する。
右手に魔力を集中させた。

「誰がんなことするか!馬鹿じゃねぇの!!」
「……そうか」

右手をチャラ男に振るう。
顎にクリーンヒットした拳を捻じる様に抉り込ませる。
チャラ男は声を上げる事もなく真上に吹き飛んだ。
天井を頭から突き破り、宙吊りになっている。
頭は上階の床を突き出てるから死んではいないだろう。

俺がアッパーカットを放つ瞬間に踏み込んだ床はヒビが入っていて衝撃の強さを証明した。
見ていた悪魔達は唖然となり声もでない。部屋に静寂が満ちた時、

「エージ!!」

扉が勢いよく開かれ部長達が入ってきた。その後には生徒会長とその眷族が。
そして……野性的なイケメンも一緒に俺に駆け寄ってくる。

ああ……やっちゃったな……
後悔はしてないからいいか。

「なんて事を「待ちなさい」……何かしら?」

部長の言葉を遮ったのはシークヴァイラさんだった。
部長は警戒した様な顔で聞き返した。

「ゼファードルは彼の主である貴女を侮辱したのです。
それに耐えかねた彼がゼファードルを攻撃したのは下僕として当然の事。彼を責めるのはお門違いかと」

俺をフォローしてくれるのか?
俺はシークヴァイラさんに感謝した。
説明を聞いた部長は安堵の表情を浮かべ、俺の肩に手を置いた。

「訳も聞かず怒鳴ろうとしてゴメンんさい……エージは私の為にやってくれたのね」
「いえ……俺が軽率でした。頭に血が登っちゃって」

そんな俺に近寄る影が一つ。

「しかし、大した魔力だったぞ。リアスの眷族にこんな猛者が居ようとは……
対戦が楽しみだ」

好戦的に目を輝かせる。
俺はまだ本気じゃないけど……本気だったらチャラ男は死んでるぜ。

「彼はサイラオーグ。私の従兄弟なの」

言われてみればサーゼクス様に似ている気がするな。

「次期に魔王様の前での決意表明があるが……どうする?」
「俺は欠席します…仮にも次期当主を殴り飛ばしたんですから」

苦笑しながら俺は欠席の旨を伝えた。
だが、グイッと服を引っ張られてしまう。塔城さんだった。

「……しっかり参加しないとだめです」

ジトーと目で訴えられ俺は怯む。
続けざまに姫島先輩も言う。

「そうですわ。エージ君が行かないなら私もサボってしまいますわ」
「姫島先輩……分かりましたよ」

俺達は魔王様の待つ広間に向かって歩き出した。
アスモデウス様に怒られないといいけど……

-44-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D 13【BD付限定版】 イッセーSOS (単行本)
新品 \0
中古 \9915
(参考価格:\4725)