小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第13章VSシトリー

ゲーム当日

俺たちグレモリー眷属はグレモリー邸の地下に集まっていた。
そこにはゲーム会場に移動する為の巨大な魔方陣が設けられていた。

「リアス、敗北をバネに今度こそ勝利をつかみなさい」
「グレモリー家の次期当主に相応しい闘いを披露しなさい。眷属の皆さんも、お忘れなきように」
「リアスお姉さま頑張って!」
「やるだけの事はやった。後はお前たち次第だ」

部長のお父さん、お母さん。ミリキャス様とアザゼルさんが魔方陣の中央にいる部長たちに檄をとばす。
俺はアザゼルさんの隣で開戦を待つ部長たちを見送っていた。

部長たちの格好はいつも通りの駒王学園の制服だ。アーシアさんはシスター服、ゼノヴィアはボンテージの様なピッチリした真っ黒な戦闘服。
因みにシトリー眷属も駒王学園の制服だそうだ。

俺が見送るなか、床の魔方陣が強く輝き出した。
転移が始まったのだ。

「負けるなよ!応援してるからな!!」

俺は転移の光に包まれていく部長たちに大きく手を振る。
そんな俺に部長は小さく手を振り替えした。

床の魔方陣が一際強く輝き、次の瞬間には部長たちの姿は無かった。転移が無事成功したようだ。

「さぁてエージ行くぞ」
「はい、アザゼルさん」

俺とアザゼルさんは要人専用の観戦会場へ移動する。サーゼクス様とグレイフィアさんは既に移動を済ませているようだ。そこには上級悪魔の方々はもちろん三大勢力のお偉いさん、他の神話体系のVIPも集まっているらしい。

俺は今からそんなところに行かなくちゃならないのか……気が重い。
昨日の怪我はすっかり回復して、部長にも朝イチで謝りにいったら許してくれた。
人間界に帰ってから買い物に付き合うのが条件で。

そんな条件でいいなら俺はいくらでも付き合いますよ!!
逆に俺からしたらそんなのご褒美以外のなにものでもないんだけどね。

「今日のお前の仕事は会場の警備だ。昨日のようにテロリストが攻めてこないとは言い切れないからな」
「分かってますよ。それにしても……凄く注目されてるんですね、部長たちのゲーム」
「それはそうだろう。お前たちは有力な悪魔であると同時にテロリストに対抗する力を持った数少ない悪魔だ。注目しない方がおかしいってなぁ」

アザゼルさんが欠伸を噛み殺しながら俺に補足する。

「そうですね……俺も参加したかったなぁ」

大体、禁手化したイッセーが参加OKなら俺だって出ていいだろ……

「イッセーが参加するなら俺も参加できるだろっ!!って顔してるな」

俺の顔をチラッと見て核心をついてきたアザゼルさんに俺は苦笑いを返した。

「いや、そんな事は思ってないですよ……」
「嘘つくな。口がひきつってる」

……俺ってそんなに表情に出やすいのかな?

「イッセーの力は強力だが、どんな能力かははっきりと分かっているんだ。対処法はいくらでもある。だが……」

アザゼルさんは真剣な瞳で俺を見据えた。

「お前の能力は前代未聞の力だ。何が切っ掛けで爆発するか分からない。俺とサーゼクスたちはそこんとこも考慮してお前の参加を認めなかったんだよ」

薄暗いグレモリー邸地下の廊下を歩きながらアザゼルさんは言う。

「忘れてました……ビックリ箱でしたっけ」
「よく覚えてたな。何が飛び出すか分からない。
まぁ、だからお前は面白いんだけどな」

悪童の笑みを浮かべたアザゼルさんについていくうちに地上に戻ってきていた。

「ところでどうやって移動するんですか?」

俺が問いただすと、アザゼルさんが懐から一枚の紙切れを取り出した。

「VIP会場への招待状だ。この紙に描かれた魔方陣を使って移動する」

アザゼルさんの説明の途中から紙切れの魔方陣が青く輝き始める。

「はぁ……アザゼルさんの事だから飛んでいけとか言うと思いましたよ」

俺は安堵のため息をついた。
が、その安心感は刹那で消えていった。

「ん?いつ俺がお前も一緒だと言った?」

笑いを堪えたような声でアザゼルさんは続ける。
ま、まさか!?

「悪いが、この魔方陣は一人用なんだ。
てめぇは自前の羽根で飛んでいきなぁっ!!ハァーッハッハッハッ!!!!」

青白い光に包まれたアザゼルさんが叫び、意図に気付いた俺は飛びかかったが、アザゼルさんを捕まえるために伸ばした腕を空をきった。

「あんのくそ総督があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

俺は恥も外聞も考えずに怒りの雄叫びをあげた。
だってあの場面であんな事する人なんてそういないでしょっ!?

「ごほんっ!エージさん、とりあえず現地に向かった方がよろしいですよ」

気付くと俺の後ろに立っていた部長のご両親とミリキャス様が白い目で俺を見ていた。
うっわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

し、死にたい……切実に……

「これは会場に向かう為の地図です。あと、警備員に何か聞かれたらこれを見せなさい」

部長のお母さんはパパッと地図とグレモリーの紋章が描かれた腕章を用意して俺に手渡した。

「あの、これは……?」
「その腕章をつけていれば警備員に咎められることなく会場に入れるはずよ」
「いや、そうじゃなくてですね……」

部長のお父様が時計を確認し、懐から紙切れを三枚とりだした。

「では、時間もないので先に失礼するわ。では会場でまた会いましょう」

優しい笑顔で部長のご両親とミリキャス様は転移していった。

「ちくしょおぉぉぉぉぉやっぱりかよぉぉぉぉぉ!!」

俺はそう叫びながらも腕章を左腕につけて翼を広げた。

「やってやるよぉ!俺が全力で飛べば、直ぐに会場につくんだからなっ!!」

勢いに任せて空に飛び出した俺は、部長のお母さんから頂いた地図を見た。
あれ?前が滲んでうまく見えないや。




○VIP会場

ものの数分で会場入りを果たした俺は、アザゼルさんから言われていた持ち場につくために足を動かしていた。

いくら俺でも全力で飛行したら少しは疲れるっての!!

俺の持ち場はVIPが集まる大きな部屋。そこの警備を担当する。
確か……この部屋かな?

他の扉より一際大きな扉を開くと、昨日のパーティー会場並みの大きさの部屋に悪魔や天使、堕天使が入り乱れていた。

すげぇ……きっと和平を組むまでは考えられない光景だったんだろうな。

昨日の会場に負けない位、豪華な内装。幾つものテーブルとその上に並べられた高級料理。
人間だったら体験できなかっただろう事を俺は連日体験しているのか……豪華だなぁ。

そして、このフロアて一番目を惹くのは中央に備えられた巨大なTVだった。そこに映し出された映像に俺は度肝を抜かした。

「部長!?」

画面に写っているのは会議をしている部長たちグレモリー眷族の姿だった。
ステージは……イスやテーブルが沢山ある屋内の様で、俺には見覚えがあった。

「……あっ!部長と買い物をした駒王学園近くのショッピングモール!!」

間違いない!ここは俺と部長がギャスパーの服を買いにきた場所だ!

「ステージが身近な場所なのは良いことだけど……この場合は相手も地形を把握してるだろうから地の利は五分五分ってとこか」
「何を一人でブツブツ呟いているのですか?」

一人で盛り上がっている俺に声を掛けてきた人物を視界に捉えて俺はまたも声をあげた。

「ロスヴァイセさん!」

なんとあの銀髪美人ヴァルキリーのロスヴァイセさんだった!
今は黒いスーツを着ている。
オーディンさんの付き添いじゃないだろうか?

「なんでここに?」

俺が聞くと、苦虫を噛み潰した様な顔でロスヴァイセさんが毒づいた。

「あんのくそジジ……ゴホンッ!オーディン様は魔王と堕天使総督と同じ部屋で観戦をしています。私は邪魔だと追いやられてしまったので、このフロアの警備をしています」

いまこの人、自分のところの神様のことクソジジィ呼ばわりしようとしなかったか?

「ところで貴方は?グレモリー眷属ならば今回のレーティングゲームに参加している筈では?」
「俺は魔王様から参加を禁じられてるんですよ。だからロスヴァイセさんと同じくこのフロアの警備をしにきました」

俺はロスヴァイセさんに事情を説明しながら、フロアの片隅に設けられた椅子に腰かけた。

「同じく観戦するなら一緒にどうですか?」
「はぁ……オーディン様の護衛もないし、お言葉に甘えさせてもらいます」

俺の対面の席に座ったロスヴァイセさん。
いやぁ、こんな美人さんと観戦できるなんてツイてるな。

「じゃあ、ちょっと料理と飲み物とってきます」
「では、私も……」
「いえ、俺がいきます。ロスヴァイセさんはここで待っていてください」

俺は立ち上がって料理を求めて歩き出した。

「ロスヴァイセさんは大人の女性のイメージだけど……警備するなら素面の方がいいかな」

適当な皿に料理を盛り付け、グラスを二つ手にとる。

「よっと……」

何回も往復するのは面倒なので皿を魔法で宙に浮かせて料理を運ぶことにした。

いやぁ、魔法って便利!
人間だったら苦労するだろう事を簡単にできるんだもんな!

「……曲芸か何かですか?」

料理運搬中の俺は声を掛けられて足をとめた。
この声は昨日も聞いた気がするぞ……?

「ルリヴェル・フォニックス!!」
「レイヴェル・フェニックスですわっ!!」

肩をいからせながら俺の前方に表れたのは昨日対面したライザーこと、トサカ野郎の妹だった。

「まったく!人の名前も覚えられないなんて!鳥のような脳みそですわね!!」
「いや、お前らにだけは言われたくねぇ」

頭の両端のドリルテールが逆立って、当人の怒りを体現しているようだった。

「で、レイヴェルはなにしてるんだ?」

俺は率直な疑問を口にする。

「会場でエージ様を見掛けたのでご挨拶をしようと思いまして。兄の眷属も居るので直ぐに戻りますわ」
「そうか……残念だなぁ。暇だったら一緒に観戦したかったのに」

上級悪魔がどんな風にゲームを分析するのか興味もあったし。

「そ、そ、そ、それはその私とご一緒に食事をしたいと解釈してよ、よろしいのかしら?」


急にレイヴェルが顔を真っ赤にして言及しだした。俺、何か変な事言ったかな?

「ああ。でも、お前は友達と一緒に来てんだろ?なら早く戻ってやった方がいいんじゃないか?」
「ちょっと失礼しますわ!」

レイヴェルはそう言うと俺に背を向けて何やら携帯電話の様な物を取り出した。

「ちょっと知り合いとご一緒するので、貴方たちでけで楽しんでなさいな。
はぁ!?ち、違いますわ!!私には好きな殿方など……」

小声で誰かと連絡を取り合っているレイヴェルの声はとても小さくて聞き取ることができなかった。
携帯らしきものをしまい、レイヴェルは俺に向き直った。
その顔は真っ赤だったが。

「連れの者にはちゃんと断りをいれたので……ご、ご、ご一緒してもよろしくてよ!!」

胸を反らしてそう宣言するレイヴェル。

うーん……塔城さんと同い年くらいだと思うけど、塔城さんよりは大きいな。
流石に部長や姫島先輩ほどじゃないけど。

「なら良かった。あっちのテーブルでゆっくり話そうか」

近くのテーブルからグラスをもう一つ手にとり、レイヴェルを連れてテーブルに向った。

「それにしても、貴方も災難ですわね」
「ん?なにが?」
「せっかくのゲームですのに、参加を禁止されているなんて悔しくありませんの?」
「ああ、その事か。そりゃ悔しいけどさ……仲間が俺の分まで戦ってくれるって信じてるし」

レイヴェルは俺の返事に驚いたような顔をした。

「随分とお仲間を信頼しているのですね」
「俺が眷属から離れている間、皆は俺の帰りを信じて待っててくれたからな。
今度は俺がみんなの勝利を信じるだけだよ」

宙に浮遊させている皿に気を配りながら俺はレイヴェルと話しを続ける。

「っていうか、なんで俺がゲームに出ないって知ってるんだ?」
「私のお父様とグレモリーのおじ様は旧知の仲なのですわ。昨日の酒の席でエージ様の不参加についてお話をしたとお父様から聞きました」
「なるほどね」

そんな会話をしているうちにロスヴァイセさんが座っているテーブルが見えてきた。
やっぱり目立つなぁ。銀髪ってだけで珍しいのに美人だし。

「すいません。遅くなりました」

浮遊させていた皿をテーブルに並べながら俺はグラスに飲み物を注いでロスヴァイセさんに手渡した。

「ありがとうございます。
……ところでそちらの方は?」

ロスヴァイセさんは俺の隣で突っ立ってるレイヴェルを見ながら俺に聞いてきた。

「そうだ、紹介しないとな」

俺はレイヴェルの分をグラスに注ぎ、テーブルに置いてロスヴァイセさんに手を向けた。

「彼女はロスヴァイセさん。北欧のヴァルキリーなんだ」
「ヴァルキリー!?」

俺の紹介にレイヴェルは驚愕したようだ。

「はい。以後お見知りおきを」

座ったままお辞儀をするロスヴァイセさん。

「ご丁寧にどうも……」

つられてお辞儀を返すレイヴェルに今度は手を向けた。

「で、こっちがレイヴェル・フェニックス。上級悪魔だ」

俺は紹介を終えてロスヴァイセさんの隣に腰を下ろした。
視線でレイヴェルにも着席を促すと、オドオドしながらも俺の隣に座った。
あれ?これって所謂『両手に花』なんじゃないか?
今の俺達はフロアの中央のテレビの真正面に俺、その左隣りにロスヴァイセさん。
右隣りにはレイヴェルが。

「素晴らしきかな悪魔。悪魔になってよかった……」

俺は自分のグラスいっぱいにジュースを注ぎ、一気に飲み干した!
悪魔になった自分に乾杯だ!!

「はぁ……こんな事だろうと思っていましたわ」

レイヴェルは達観したような表情でグラスを煽った。

「もうすぐ開戦ですよ。ルールは聞いていましたか?」

ロスヴァイセさんがグラスを手に取りながら俺に問う。

「恥ずかしながら……話に夢中で聞いてませんでした」
「はぁ……自分の眷属の戦いなのですから緊張感をもってください」

呆れたように告げて、ロスヴァイセさんは説明を開始した。

「今回のゲームは見ての通り屋内戦です。隠れる場所が多く奇襲にはもってこいの戦地です。ですが、今回のゲームには特殊ルールが設けられました」
「特殊ルール?」

俺の間の抜けた声にロスヴァイセさんは神妙な顔で頷いた。

「『バトルフィールドとなるデパートを破壊し尽くさないこと』
『ギャスパー・ヴラディの神器使用を禁ずる』
この二つが課せられました」

ロスヴァイセさんの説明にレイヴェルが意見を口にする。

「グレモリー眷属はイッセー様を筆頭に強大な破壊力を持つ悪魔が揃っていますわ。
特殊ルールの前者はグレモリー眷属の広範囲攻撃が封じられたに等しいですの」
「加えて……ギャスパーの力に制限をつけるなんてなぁ。悪魔の力と魔力だけで戦わなくちゃいけないのか」

これは不利な闘いになりそうだ………

ゼノヴィアに言ってた不利なルールが実現しちまったな。

「このルールが勝負にどう影響するか、ですね」

俺は不安な面持ちで巨大なスクリーンに映し出された部長たちを見つめた。

『定刻となりましたのでゲームを開始させていただきます。今回のゲームは三時間以内に決着をつける短期決戦形式とさせていただきます。それでは……ゲームスタート!』

審判役のグレイフィアさんの声が流れてゲームがスタートした!

いまさらっと言ったけど短期決戦形式かよ。
レーティングゲームはその都度ルールが変わるって聞いてるけど、ここまでとは恐れ入った。

「始まりましたわね」

レイヴェルがそう洩らすとロスヴァイセさんが口を開く。

「古城英志。貴方ならばこの先の展開をどう読みますか?」

俺は顎に手を当てて自分の考えをまとめてみた。

「部長は先ず、情報を集める為にギャスパーを飛ばす筈です。屋内なら尚更、相手の位置を把握している方が有利になる。
『王(キング)』の部長と『女王(クイーン)』の姫島先輩、回復役のアーシアさんは本陣で待機。
ゼノヴィアと木場、イッセーと塔城さんで二手に分かれると思います」
「何故そう言い切れるのですか?」

レイヴェルが首を傾げながら問い返した。

「俺はグレモリー眷属だから部長の戦術を知ってるっていうのもあるけど……俺が部長だったらイッセーとゼノヴィアを一緒に行動させたりはしない」

料理を口に運び、咀嚼してから俺は続ける。

画面にはデパートの物陰に隠れながら移動するイッセーと塔城さんの姿が映っていた。

「イッセーとゼノヴィアはパワーに特化した悪魔だ。相手の力を利用する……カウンター特化の悪魔との相性は最悪。
それとは逆にテクニック特化の木場と何でもそつなくこなす塔城さんはカウンターに怯むことはない。
つまり、パワー馬鹿の二人を一緒にしないでテクニックの木場とオールラウンダーの塔城さんのどちらかと組ませればカウンター特化の相手を任せて攻撃に専念させることができる」
「おぉ……流石はエージ様。そこまで考えていたなんて驚きですわ」

レイヴェルが俺の分析を聞いて羨望の眼差しを俺に送る。
……悪いけど殆どアザゼルさんの受け売りなんだよ。

「古城英志の考えには概ね同意です。ですが相手はソーナ・シトリー。その様な一般的な戦略が通じる相手ではないと思います」

ソーナ生徒会長は若手悪魔屈指の戦略家として名を馳せている。
確かにこの作戦が通じる相手かは分からない。

『リアス・グレモリー様の「僧侶(ビショップ)」一名、リタイヤ』

!?

開始早々一人やられた!?

『僧侶』ってことは……アーシアさんかギャスパー。
回復役のアーシアさんには部長と姫島先輩がついてる。
ってことはギャスパーか!!

画面が切り替わり、ギャスパーが撃破された映像が再生される。

シトリー眷属の追跡をしたギャスパーは大量の蝙蝠を一か所に集めてより多くの情報を集めようとしていた。
だが、それを狙い澄ましたようにシトリー眷属数人がかりで蝙蝠の大群にニンニクを投げつけていた。
吸血鬼のギャスパーはニンニクが大の苦手だ。
驚いたギャスパーは蝙蝠から人型にもどり、そこに強烈な魔力攻撃を浴びせられ撃破された。

「まさかあんな方法でギャスパーがやられるなんて……」

シトリー側の本陣は食品売り場。
周りの物をうまく利用した撃破だ。咄嗟にこの作戦を考えたのならやはりソーナ生徒会長は侮れない強敵だ。

それでも!ニンニクでやられるなんてギャグじゃねぇか!!
人間界に戻ったらニンニク克服の特訓だからなギャスパァァァァァァァァァ!!

また、画面が切り替わりそこに映っているのはイッセーと塔城さん。そして二人に相対する匙とシトリー眷属の女の子だった。

「いきなり赤龍帝ですか……見物ですね」

ロスヴァイセさんの目に映るのは左手に『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を装着したイッセー。
やっぱり赤龍帝の注目度は高いようで会場にいる人の視線が画面のイッセーに集中する。
さぁて……俺も成長したイッセーの戦いぶりを見ておかないとな!!

俺も姿勢をただし、イッセーの戦闘が始まるのを今か今かと待ちかまえていた時だった。

ブツンッ

急に画面が暗くなり、亀裂が入った!
なんだっ!?

突然の出来事に会場がざわめきだす。

「古城英志……これは……」

ロスヴァイセさんと顔を合わせて俺は首肯した。
それと同時に画面が破壊され、そこから黒いローブをきた集団が雪崩のように押し寄せてきた!

「よくも飽きずに……懲りない連中だな!」

俺は立ちあがって即座に神器を装着し、戦闘態勢となったその時、

『おっと、そこまでだぜ』

フロアに設置されたスピーカーから流れてきたのはアザゼルさんの声だ!
その声を合図にフロアにいた人々が転移の光に飲み込まれて消えていく。

「なっ、なんだなんだぁ!?」

テロリストたちもこの状況を理解していないようで動揺が見てとれた。
混乱する俺を笑うようにスピーカーからアザゼルさんの声。

『悪いなエージ。その会場は囮だ』
「はあっ!?」

囮!?
なに言ってるんだアザゼルさん!!

『詳しくはまた後で話す。先にそいつらを片付けろ』

それだけ言うとアザゼルさんの声は一向に聞こえなくなった。

フロアに残ったのは俺とロスヴァイセさん。
そしてテロリスト。

「なんだかわかんねぇけど、やるしかないか!」
「そうですね……後でオーディン様に詳しくお聞きしないと」

ロスヴァイセは苛立ちを含んだ声音でテロリストを睨む。

「私を忘れてもらっては困りますわ!」
「レイヴェル!?」

悠然と腕を組み、俺の隣に立っている。
さっきの転移でレイヴェルも移動したと思ったんだが。

「私には貴殿方テロリストと闘う理由があります。フェニックス家の者として、貴殿方のような輩にフェニックスの涙が渡っているのは許しがたい事態です。
よってフェニックスである私が、直々に裁きに参りました」

フェニックス家で生産される強力な回復アイテム、『フェニックスの涙』。
それがテロリストに使われているのはフェニックス家としては看過できないのだろう。
涙を創り出すのには相当な労力が必要だと聞くし……レイヴェルが怒るのは無理もない。

「普通、こんな時は男が出張ってこないか?」
「おあいにくさま、ライザー兄様は傷心で部屋から出てこないのです。他の兄は多忙ですし、私自身、テロリストに一矢報いたいと思っていましたから」

ライザー……お前の妹はお前より立派だよ。
少しは妹を見習って更正しろ。

「あんまり無茶はするなよ。俺とロスヴァイセさんでもカバーできないかもしれない」
「私はフェニックスですわよ?その力の事はエージ様がよくご存知の筈では?」
「不死身だろ……あの能力がなければ俺の一撃で勝てたかもしれないのになぁ」

俺はレイヴェルと呑気に会話を続けた。
ロスヴァイセさんが険しい顔で俺たちを叱咤する。

「お二人とも話をしている場合ではありませんよ!」

ロスヴァイセさんの言うとおり、既に俺たち三人を取り囲むようにテロリストたちが展開していた。
一斉に手を付きだし、魔力を集中させていく。

「俺はもう準備OKですよ」
「私も問題ありません」
「いつでもよろしくてよ」

俺はストレッチを入念に繰り返し、ロスヴァイセさんは呆れたように項垂れ、レイヴェルは自信満々に告げた。

ドオォォォォォォォォォ!!!!

テロリストの手から放たれた魔力攻撃が俺たちを襲う!
全方向からの集中砲火に俺たちの逃げ場はない。
だが……

ガキンッ

「この程度ですか、大したことはありませんね」

ロスヴァイセさんが俺とレイヴェルをすっぽり包み込むように防御障壁を展開していた。
俺たちとは違う神話体系のロスヴァイセさんの北欧の魔法はとても強力だ。

「一気に決めますわ」

レイヴェルがテロリストの集団の一角に向へ片手を向ける。
すると、みるみるうちにレイヴェルの手から焔が生成され業火となった!

「フェニックスの炎……その身で受けて燃え尽きなさい」

手を凪ぎ払うように動かすとレイヴェルの炎が鞭のように振るわれた。
逆巻く火炎に飲み込まれ、テロリストが悲鳴を上げる間もなく倒れていく。

……心配はいらなかったみたいだ。

「俺も闘わないと……ってあれ!?」

レイヴェルとは反対側に体を向けると、ヴァルキリーの装備を纏ったロスヴァイセさんが辺りに魔方陣を展開しながら立っていた。
その足元には魔法を受けて倒れたのであろうテロリストたち。

「他愛もない……これでは訓練にもなりません」
「そうですわね。ライザーお兄様の下僕の方が勝負になりますの」

ロスヴァイセとレイヴェルは期待外れだとでも言わんばかりの勢いで一息ついている。

あっれ〜俺なんにもしてないんすけど……

「そ、そうだね……呆気なかったな」

おい!まだどっかにいるんだろ!?
早く俺に倒されにでてこいテロリスト!!

「くっそ……ん?」

俺が辺りに視線を漂わせていると、一つの人影を発見した。
………あれは

「ふ、ふひひ……」

不気味な笑みを漏らしながらソイツはフラフラした足取りで俺たちに近づいてきた。
近付くことで顔がはっきりと見えるようになった。
俺はその人物に見覚えがあった。

「ゼファードル?」

魔王、アスモデウス様を輩出した御家の次期当主でチャラチャラしたヤンキーの様な風貌のイケメンだ。
以前、部長を馬鹿にしたので俺が殴り飛ばした相手でもある。

「…なんでこいつが?」
「古城英志……様子が可笑しい」

ロスヴァイセさんが警戒して俺に耳打ちする。

確かに今のゼファードルの様子は不気味だった。
目は血走っていて頬からは赤みがなく真っ青に近い。
足取りはおぼつかなく幽鬼のようであった。

「お……せ…だ…」

途切れ途切れに聞こえてくるゼファードルの声に俺は寒気を覚えて構えをとった。

フッ

ゼファードルが目の前から消失する。
ゼファードルが姿が消えたと錯覚するくらいの速度で移動したのだ。
だが……昨日はこいつよりも段違いに早いアーサーや美猴の相手をしたんだ。
着いていけなくはない!

身体を捻って後ろから迫っていたゼファードルの拳を受け止める。
予想以上の破壊力に俺の腕が軋む。

ミシミシ

どんどんゼファードルのパワーが上がっていく。
俺の身体に拳を捩じ込もうとするゼファードルは大きな声で叫んだ。

「お前の……せいだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

力が爆発したようなゼファードルのパワーに押し負け、拳が俺の土手っ腹にめりこんだ。

ドゴンッ!!

鈍い音を響かせ、俺の身体に衝撃がはしる。
ゼファードルから感じられる魔力は部長より大きい。

「お前に殴られたあの日から!
俺の人生は散々だ!下級悪魔に負けた恥さらしだと笑い者にされた!
バアルとのゲームにも惨敗!
これも全てお前のせいだっ!!
俺がこんなくだらなねぇ人生を歩むわけがねぇんだ!!俺のツキを奪った罪だ!死ね、死ね、死ね、死ねぇ!!!!」

奇声をあげて拳を俺に叩き込み続けるゼファードル。
やっぱりコイツまともじゃないな。完全にイカれてやがる。
そろそろやり返すか。俺も我慢の限界だ。

ゼファードルの拳を掴み、背負い投げの要領で地面に思いっきり叩きつける!

「うるせぇんだよ!!」

受け身も取らずに地面に衝突したゼファードルは急いで立ち上がったが足のふらつきが酷くなっている。

「お前のぉぉぉぉぉ!!!!」

それでもゼファードルは構わず突っ込んでくる。
俺は魔力を全身に巡らせて駆け出す。

ゼファードルと激突する寸前、俺の身体を光が包み込み次の瞬間には蒼白い鎧を纏っていた。

「お返しだ!!」

降り下ろした右ストレートがゼファードルの顔面を捉える。
ぐらついた所に追い討ちのボディブロー!

ゴズンッ!!

「ゴバアァァァァ!?」

身体をくの字に折り曲げて悶絶するゼファードル。
もういっちょ……

俺が止めの右アッパーを繰り出そうとした時ゼファードルに異変が起きた。

「ガッガァァァァァァァッゴッグゴェッ!!」

ゼファードルの口から黒い蛇のようなものが吐き出された。蛇はゼファードルの身体から出て床に落ちた瞬間、霧散して消えた。

それと同時にゼファードルは倒れ込んだ。
感じられた強力な魔力もすっかり弱まっている。

なんだったんだ?

釈然としないまま鎧を解除して俺は制服姿に戻る。

「ご無事ですかエージ様!?」

ロスヴァイセさんとレイヴェルが俺に駆け寄ってくる。
二人ともゼファードルを危険と判断して避難していたようだ。

「俺は大丈夫。あれぐらい何でもないさ」

でも理解できない……ゼファードルは若手悪魔じゃ確かにパワーがある方だった。
それでもあんな破壊力をもっていたわけじゃない。

あの黒い蛇と関係しているのか?

分からない……いったい何が起こっているんだ?

俺は未だ全貌を見せないテロリストに恐怖を覚えた。




-55-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D リアス・グレモリー ~先輩のおっぱいひとりじめフィギュア~ (PVC塗装済み完成品)
新品 \3426
中古 \3753
(参考価格:\7980)