小説『あたし達はがむしゃらに生きてくんだ!』
作者:和泉()

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一章 第二話 出会い


見知らぬ風景が後ろに流されていく。次で降りると母に言われ、あわてて定期をだした。
受験で一回、合格発表で一回。この学校を訪れただけ。

あたしは受験に失敗した。
嫌いな理科が足をひっぱり、最悪の結果になった。泣きじゃくるあたしを塾の先生達は慰めてくれたが 結果は不合格だった。第一志望だった。喪失感が強いまま、第二志望のこの学校を受験した。
結果は合格だった。隣の女の子が受験番号と合格掲示板を照らし合わせ 泣いていた。
その表情を見た友達らしき女の子も一緒に泣いていた。受験番号を握りしめて泣きじゃくっていた。不合格した時のあたしも同じ表情をしていたのかもしれない。

特に思い入れのないこの学校の空をあたしはぼんやりと仰いだ。

「新入生?」
そう聞かれて振り向く。女の子だった。短い髪はさらさらとしていて艶がある。
ぱっちりとした目。スカート丈はあたしと同じくらい。後ろには保護者もいた。
この子と同じ年だと悟ったあたしは慌てて笑顔をつくり、うん とうなずく。
ふいに風が吹いた。この子の艶やかな髪は揺れ、春の景色に映えた。
入学する生徒はこっちから行くみたい。一緒に行かない? 女の子はそういってあたしに微笑んだ。さばさばしてる子。きっと中学でたくさんの友達がいたんだろうな。
親に手を振り あたしはこの子と体育館へ向かった。
「名前・・・まだだったよね。ウチはれいな。よろしくね。」

「よろしく!あたしは楓・・・あ、楓でいいよ。」
じゃあ楓って呼ぶね れいなは笑った。
体育館に付くと鞄を開け 新品のうわばきに足を入れる。
つま先は深い青色。気に入っている。左側では在校生が生徒に封筒を配っていた。
封筒をもらい、中身を開ける。内容はクラス表と入学式の流れ、校歌の紙。
他のプリントには見向きもせずあたしは最初にクラス表を見た。
クラスはD組。出席番号21番。
中学はC組しかなかったので高校がF組まである事がなんだか不思議に思えた。


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