小説『あたし達はがむしゃらに生きてくんだ!』
作者:和泉()

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一章 第三話 D組

あたりを見渡すとれいなちゃんが居ない。封筒を手渡されたときに逸れてしまった。
周囲を慌てて見渡すが見つからない。 一年生は立ち止まらずに奥へすすんで。 
後ろから教師の声が聞こえる。人の波。
れいなちゃんのクラス知りたかったな 小さくため息を付き、あたしはクラスの席を探した。D組。パイプ椅子に張り付けられた紙を見つけた。席にはすでに数人の生徒が座っている。隣生徒に話しかけている人は居ない。皆、ケータイをいじったり、書類を読んだりしている。
あたしも出席番号が書いてある席に座る。まわりの子がしているようにケータイをいじった。
「楓!いた!」
ケータイから目を離すとれいなちゃんがいた。あたしの真後ろの席に座る。クラス表をあたしに見せて 同じD組だったんだね。 と笑った。
右手に持っていたケータイの存在を思い出した。

「ねぇ、アドレス交換しない?」

「いいよ。」
鞄からケータイを出す。キャラクターストラップついている。赤外線交換をし。なんとなく嬉しかった。教員がマイクで話す。
生徒はクラスが書いてある席に座って。プリントを確認して。
これから式を始めます。一同 礼。一斉にお辞儀をする。
淡々とした式。校長がちょっと噛んだけど隣席はまだ知らない人なので笑うのはやめた。
マーチのような校歌を在校生が歌う。中学とはやっぱり違う。
式が終わると大量の人が各教室に帰る。あたしはれいなと教室を目指した。
式が長かった。担任の先生が怖そう。たわいもない会話が続く。
階段を二階分上がり長い廊下を進む。D組はずいぶん奥の方だ。
教室のドアを開けた。木製の教卓。古びたすのこ。綺麗な黒板。使われていないTV。ここが教室なんだ。ここで毎日授業をするんだ。
出席番号が貼り付けてある机に向かう。椅子に腰かける。教室風景を見渡す。後から同じクラスの人が入ってくる。座る。会話がない静かな教室。



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