一章 七話 佐々木あゆみ
美紀ちゃんは教室の隅に行く。風景を取るのだと思った。
違った。
カチャリ ケータイカメラの音が響く。女の子めがけて。
一人。読書をしている女の子。隅で静かにしていた。
その子を美紀ちゃんは撮った。トランプをしていた巻き毛の子も便乗した。
トランプを放り出した。美紀ちゃんの所に行く。
二人ともピースをしてた。ピースして女の子の近くで撮った。
笑ってた。爆笑してた。さっきあたしと話してた笑顔じゃない。
残酷。恐怖。非情な笑顔。
「佐々木あゆみだっけ?あの子」
れいなちゃんが女の子を見て笑った。嘲笑うに近かった。
怖い。鼓動が早くなる。動脈がドクドクと言っている。
「なんかキモいよね。ブスだし。」
「わかる。地味だし。」
「話したくないよね。」
「無視しよ。」
繰り返されるひどい言葉。皆低い声。バカにした笑い声。
ケータイカメラの音。
数分前まで仲良くなりたいと思ったこの子達が急に怖く感じた。