〜第三話 修羅とは身近にいるものなり〜
た、大変だった・・・・・・
ホームルームが終わったらまずは質問攻め。
主に横山さんから大量の質問が浴びせられた。
あの人の口は無限稼働機関なのだろうか?
クラスの男子は早速ニコに話しかけに行ったのだが、
「我が眷属となり得るものは、我が決める。汝らに興味はない」
といいながら、クラスの男子を圧倒。超怖えぇ。
クラスの女子に話しかけられても、
「我が眷属となり得るものは、我が決める。汝らに興味はない」
と同じセリフで女子も圧倒。
横山さんなんかもう涙目だ。ちょっと話しかけただけで無視された。
というわけでこのクラスで唯一、小鳥遊ニコと話をしたのはただ一人。俺だけだった。
転校初日で俺の妹は一人になってしまった。
◆
夕焼けに照らされた帰り道、俺は妹に腕を組めとせがまれた。
「貴様の魔力を回復させるためだ。仕方ないことなんだからな!」
魔力なんて持ってないし仕方ないならいいよ。
と、言いたかった。
しかし言えなかった。
なにか後ろからプレッシャー、いや殺気を感じる。
おそるおそる振り返ってみると・・・・・・
鬼
そんなものよりももっと恐ろしい修羅が立っていた
後ろで仁王立ちしている修羅の名前を俺は知っている。
修羅の名前は矢岳康介。
俺の親友で、エロスで、なにより裏切りを嫌うやつだ。
雰囲気が朝と全然違う。
ヤバイ!多分殺られる!
「‥‥‥‥‥‥」
無言の嘲笑。
どうやってこの状況を・・・・・・
「やぁ!康介!俺は今美しいマイシスターとラヴラヴな帰り道デートをしているよ!」
思考が回る前にやらかしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
またやらかしたよ!俺の口!
この場にいた俺、ニコ、康介の三人は一瞬で固まった。
そりゃそうだろ!俺もドン引きだよ!こんなセリフ!
そしてラヴの発音が異常にムカつく。
おや?
おかしい。康介の表情がさっきと変わっている。
康介の顔は今まさに安堵の絶頂っていうかんじだ。
すごいイケメンフェイスで康介は僕に近づいてきた。
「なんだ妹か!こんなに可愛い妹がいるなら俺に早く教えてくれればよかったのに!」
・・・・・・どうやら、僕は康介という人物を疑っていたようだ。親友なのに恥ずかしい。
いいやつじゃないか。
妹を毒牙にかけそうなんて、俺はなんて愚かだったんだろう。
「康介・・・・・・」
「彼女だったら殺っちゃってたゼ♪」
前言撤回します。
妹もカオスなら友人もカオスだ!
ところでそのカオスな妹はなぜか顔がめっちゃ赤い。風邪でもひいたのか?
康介はニコに近づいてこう言った。
「初めまして。魔界のプリンセス。僕はあなたに忠誠を誓います!」
さすが女の子中毒康介。ニコのツボを知っている。
ほら見ろ。ニコの顔がすっごい晴れ晴れとしている。
って!
「待てやゴルァァァァァァ!!」
兄として黙っているわけにはいかない!
妹が!今!口説かれている!
これを黙って見ている兄がいるかぁぁぁぁぁぁ!!
「まぁまぁ。落ち着けって」
「落ち着いてられるかっつーの!」
康介は俺の発言を無視してこう言ってきた。
「落ち着いてください。お兄様!」
超衝撃発言。
全身に鳥肌が立った。
「お、お兄様!?」
俺より先にニコが過剰に反応した。
「納得いかない!お兄ちゃんをお兄ちゃんって読んでいいのは私だけなんだからね!」
中二病モードを解除したニコが攻めてきた。気迫が半端じゃない。
「未来のお兄様をお兄様と読んで何が悪いんだ?ニコ」
「なぜ私を呼び捨てするですか!?私を名前で読んでいいのはお兄ちゃんだけなんだからね!」
「何を言ってるんだニコ!お前は俺の未来の嫁じゃないか!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」
声を揃えて俺たち兄妹は叫んだ。
「ニコぉぉぉぉぉぉ!!愛してるぞぉぉぉぉぉぉ!!」
ダッシュで康介がニコに近づいてきた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ニコがかつてないまでに叫んでる!!
相当ビビってるよ!!
・・・・・・ハァ、仕方ないかなぁ。
俺はニコを足元から持ち上げた。
簡単に言えばお姫様だっこだ。
「お、おおお!お兄ちゃん!?」
「康介から逃げるためだ!ニコ!しっかり捕まってろよ!」
「ひゃ、ひゃい!りょうかいでしゅ!お兄ちゃん!」
なんで噛みまくってんだコイツ。
まぁ、今はそれよりも康介から逃げることだけを考えよう。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
俺がダッシュでニコを抱えながら走っていた間、
夕日のせいかニコの顔は真っ赤になっていた。
第三話 完