小説『俺の妹が中二病すぎて困る』
作者:陽ノ下 天音()

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〜第四話 ナイスキック!!〜

「きっきつすぎるだろ!オイ!」
 中二の女の子を抱えながら走ったんだ。俺は相当体力を消費している。
 康介が変質者と化した後なんとか俺たち兄弟は逃げ切った。
「お・・・お兄ちゃん」
「なんだ?ニコ?」
 頬を赤らめたニコが中二病モードを解いて俺に話しかけてきた。
「あの・・・そのね・・・」
「言いたいことがあるならなんでも言えよ。お兄ちゃんはいつでも力になってやるから」
「いや、いつものお願いじゃないの。その・・・ね」
 お願いじゃなけりゃ何なんだろうか。
「さっきは・・・あ、ありゅが・・・」
 あぁだいたいわかった。
「気にすんなよ。ニコ。」
「お、お兄ちゃん!」
 ニコの顔が明るくなった。やっぱりいい兄は妹のことくらいしっかり察してやらなきゃな。
「大丈夫だぜ。ちょっと重くなったけど全然見た目には影響出てないからな」
 ピシッ!
 そんな音が聞こえてニコの表情が固まった。
「お、おお、お・・・・・・」
「体重なんか増えてもお前は可愛いからな」
「お兄ちゃんのスケベぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
 突如ニコは泣きながら泣きながら俺の股間を蹴ってきた。
「我が妹ながらナイスキック・・・・・・グフッ」
 そう言い残してから俺は道の真ん中に崩れ落ちた。
 道行く人が俺をゴミを見るような目で見てくる。
 ・・・・・・精神と肉体へのダメージが大きすぎる。
「も、もとの原因はお兄ちゃんのせいでしょ。お兄ちゃんの料理すごく美味しいから。」
 なんかブツブツ言ってるがよく聞こえない。
 結局蹴られてから家に帰るまで俺はニコに口を聞いてもらえなかった。

       ◆

「ただいま・・・・・・」
 家って素晴らしいなって改めて思うな。
 だって敵がいないんだぜ?
 多分、明日から学校に行く足取りが軽くなることはないだろう。
 可愛い女の子が近くにいるということは死を意味するって康介が言ってたからな。
「ただいまなのじゃ!」
 ニコは怒りながら中二病モード発動。結構様になっているんだよなぁ。
 しょうがない。ニコを落ち着かせよう。
「風呂入れてやるから先に入っていいぞ」
「ほんと!?お兄ちゃんありがとう!」
 屈託のない笑顔でニコは俺を見た。中二病モードは終了。
 ちなみにニコは家事ができない。
 家事全般をニコにやらせるなんて恐ろしいこと俺にはできない。
 食事をやらせるととてつもない兵器になる。
 トーストを焼くだけという作業もニコにかかればパンを炭に変えるということになる。
 サラダを盛るだけで謎のエイリアンが誕生する。
 一番のトラウマはニコの作ったチョコだ。
 バレンタインにくれたそのチョコはシュワシュワでベチョベチョでなんか変な触手が生えていた。
 味もまぁ、チョコといえるものじゃなくぶどうジュースと洗剤とスルメを混ぜたような味だった。
 食べただけで一週間入院とかもう料理じゃないだろ。
 ついでに俺はニコが作ったチョコを絶対に残さない。
 ニコが泣くのを見たくないからだ。だから毎年俺にとっては2月14日は地獄なんだ。
 風呂掃除や洗濯もニコにやらせちゃいけない。
 水を使うものはニコがずぶ濡れになるという理由で。
 ニコがずぶ濡れになると、その・・・・・・俺の理性が持たない。
 そんな説明をしているあいだに風呂が湧いた。
「ニコ先入っていいぞ」
「いや、主から入るがいい。我は後でいいぞ」
 風呂好きのニコにしては珍しい。
 しかもなんか顔が赤い。
「お前風邪ひいてるのか?」
「ふぇ!?全然平気ニャからさ、しゃきに入っていいぞ?我は病原体ニャどに負けにゅからにゃ!」
 噛みまくりだ。
 ・・・・・・ちょっとからかってやるか。
「ほんとに顔赤いぞお前?俺と一緒に風呂入るか?体洗ってやるぞ?」
「ふぇぇぇぇぇぇぇ!!?だ、大丈夫だよ!お兄ちゃん!」
 さらに顔が赤くなった。
 年頃の女の子と風呂に入るなんてもちろんしないけどな。
「ハハッ。冗談だよ」
 そう言い残して俺は風呂場に足を運んだ。
「むぅ・・・・・・お兄ちゃんの意地悪・・・・・・」
 それにしても・・・・・・
「なんであいつ顔が赤かったんだ?」
 とりあえず、そのことは忘れて俺は湯船に浸かった。
 脱衣所でなにか音がするのは気のせいだろう。
                      第五話に続く
           

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