小説『堕ちた物真似師』
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「ゴホッゴホッ……ローグタウンに行きたいですって!?」

昼食をとっている最中、ダレンが不意に言った言葉に、ベルメールは口に含んだジュースに咽せてしまった。

「うん、新聞でみたんだけど、ローグタウンに新しく航海術に関する本がでるんだ!! 俺とナミはそれを何としてでも手に入れたいんだよ!! ……ベルメールさん、お願い!」

何時もはクールで全く子供っぽく無いが、この時だけは背が低いのを逆手にとり、上目遣いで懇願するダレン。

「行くって言ってもどうやってローグタウンまで行くのよ?」

「それは前もって漁師のマークさんにお願いしたから大丈夫。あとはベルメールさんの許可を貰うだけなんだよ!」

ここでナミが横から口をだしてきた。

「ベルメールさん! 私もローグタウンで航海術の本買いたい!」

しかしベルメールも反論する。

「馬鹿ね。無理に決まってるでしょ! それに『Mandarin』はどうするのよ?」

「少し位閉めてもいいじゃん! ケーキ一杯売れてるんだから!」

『Mandarin』とは一年前にオープンした主に蜜柑を使ったスイーツが売りの喫茶店である。
きっかけは、ベルメールの料理の腕に目を付けたダレンがベルメールに助言したことだ。

「ベルメールさん! 私もローグタウン行きたい! ナミも私もローグタウンで洋服屋さんで服をみたり、美味しい物食べてみたいから……」

ダレンはノジコによく言ったとばかりに目配せし、ベルメールに言葉を投げかける。

「ベルメールさん、一生のお願いだから、ね?」

ベルメールは黙ったまま考えていたが、少しするとため息をついた。

「……わかったわよ。あんた達も色々お店の手伝いしてくれたしね」

ベルメールはそこまで言うと、急に元気付いた様に言葉を発した。

「よし、お店も大成功してお金もあることだし、ローグタウンで楽しむわよ!!」

「おおーーっ!」

ナミ達も顔を輝かせて元気に応えた。








▼▼▼







『ローグタウン』”始まりと終わりの街”。
今から、ダレンが生まれる7年前。
海賊王『ゴール・D・ロジャー』が、死に”大海賊時代”が幕を開け、当時の人々の脳裏に、この先の荒れ狂う海を予感させた。

――そして7年の時が流れる――


大海賊時代が始まって以来、ローグタウンの表通りは偉大なる航路『グランドライン』に向けての準備の為寄港した無法者達や、商人や観光客でごった返していた。
動きやすい服を置いたファンキーなブティック『ANTIQUE HOUSE』、看板の左右にハートマークを付け、グランドラインから生きて戻れた海賊の物を取り扱っている『らぶらぶパイレーツ』、男気あふれる武器屋『ARMS SHOP』。
イーストブルーでも指折りの大都市なだけあって、多種多様の店々が表通りの両隣に連なっている。
そしてこの都市の中央に設置された場所、『特別処刑台』には、『一繋ぎの大秘宝”ワンピース”』を求め、海を出た無法者達や、特別処刑台見たさに集まった人々がこの広場に集まっていた。
そんな中、ベルメール一家は、午前中のほとんどを表通りにあるブティックや、人気スイーツ店を転々としていた。
そして昼時、一家は、レストランで絶品料理に舌包みを打ちながら、今後の予定について話している。

「これからの事なんだけど、私とナミとノジコは、この後も幾つかのブティックに行くつもりだけど、ダレンは行きたい所があるんだっけ?」

ベルメールは、昼食を食べ終えたので、水を飲みながらダレンに話を振った。

「ぶぅん……、ローグタウンには『図書館』ていう図書とか記録を収集・整理・保管している公共施設があるらしいから、そこに行くつもり」

ダレンはデザートを飲み込みながら言った。

「なんかよくわからないけど、本が沢山読める所という事ね? でも本当に一人で大丈夫なの? 表通りでもゴロツキが沢山いるから心配だわ」

ベルメールは不安げだ。

「大丈夫だって! 俺、足が速いのベルメールさんも知ってるでしょ? だから逃げらんない狭い裏道とかに行かないなら、何とかなるよ!!」

ダレンは、皆を安心させる様に自信たっぷりに言った。

「そうね……。でも、だからと言って興味本位で危ない所に行っちゃだめだからね?」

ベルメールはダレンに釘を刺すように言った。

「分かってるって! もぉ……ベルメールさんは、心配性だなぁ」

ダレンは呆れる様に首を振った。

「あんたね……、あんたの今までの行動を考えれば心配にもなるわよ! 普通3歳児がナイフを使って部屋でダーツ何てする!? 「あっ、あれはコントロールの練習でし……」 それに! あたしの銃を勝手に持ち出して猟やってたでしょ!? そんな子供を心配しない母親なんて世界中探してもどこにもいないわよ!」

ベルメールがテーブルを大きく叩いたので、テーブルから鈍い音が聞こえた。

「はい、すいません!」

ダレンは、ベルメールの怒りが再燃したので、元々小さいのに更に縮こまって小さくなった。

「いい? あたし達がいない間、少しでも変な行動したら……」

ベルメールがどす黒い空気を周りに発散させたので、ナミ達がガタガタ震えだした。

「しっしたら……?」

ダレンが震える声で問い返す。
すると、ベルメールは笑みを浮かべこう言った。

「……生まれてきた事を後悔させてあ・げ・るっ♪」

ベルメールが喋り終えると、辺りが静寂に包まれた。
ダレンが目でナミ達の方向を見ると、ナミ達は今にも泣き出してしまいそうな様子だ。
何とか震える体に鞭を打ち、首を縦に振ると、ベルメールの周りから漏れ出していたどす黒いオーラは消えてなくなり、ベルメールの表情も和らいだ。

「わかったならいいわよ! じゃあ私、会計済ませてくるわね!」

笑顔でそう言うと、ベルメールは席を立ち、カウンターに移動していった。
ダレンはまるで嵐の直撃を受けた後の様に、椅子にへばりついていた。
ナミ達はまだ震えが止まらないらしいが、震える声でダレンに言った。

「……ダッダレン! あんた変な行動しちゃ駄目だからね?」

ノジコが言う。

「……そうじゃないと、次あんたに会う時は棺桶の中だと思う。だってベルメールさんに殺されちゃってると思うし……」

ナミも同意見のようだ。

「ああ……、下手な真似するとマジで殺されるな。……気をつけるよ……」

ダレンの口から弱々しい声が漏れた。

続く

-3-
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