赤い機体から巨大な黄金色の光弾が二発放たれ、50メートル先にある、郊外と思われるあまり建物の密集していない土地に向かって弧を描きながら飛んでいく――。
着弾し、半球体に膨張、回りにある物質全てを包んでいく。
――光子ミサイルは、NPエネルギーを高密度に凝縮し、発射する光学兵器で、威力は使用する機体に内蔵する炉心のエネルギー出力に比例するが、威力だけなら地球に置ける戦術核兵器級かそれ以上の破壊力を持つ。
恐ろしいことに、それが銀河連邦、アマリーリスなどのNPエネルギーを使う組織には標準装備なのである。
ちなみにNPエネルギーが産出される前にも存在したが、そこまでの威力は生み出せず、射程距離が短く、エネルギー出力の関係上、使用する機体も限られていたため難航をきわめた兵器であった。
つくづく、NPエネルギーとは本当に素晴らしいと再認識できる。
――数十秒後、光の膨張が今度はしぼみはじめ、眩しくて見えなかった着弾地点がやっと直視できるようになった。
そこにあった建造物や森林、道路などの「元々あった」物が全て消滅していた。あるのは最低1平方キロメートルはあう広大な何もない平地であった。
“よっしゃ、あそこに着陸するぞ”
そして全機がそこに向かい、次々と着陸する。
全機が各配置し終えた時、ラクリーマは待ちわびた今から始まるであろう「自分たちの仕事」に対しての笑みを浮かべて……。
“全員、行くぞ!!作戦開始!!”
一斉に戦闘員達が降り出し、レクシーも彼女を引っ張るように降りた。
各人、身の回りに固めた重武装を展開すると一斉に密集地帯に突入していく――。
「ユノン、人生でいい経験になるぜ。俺らの仕事内容を高見の見物で見とけよ!」
「…………」
――ラクリーマがそういうが絶対に嫌だ。そんなの経験どころか悪影響だ。しかし、ラクリーマとレクシーの二人はそんなのはお構い無しで彼女を強引に引っ張っていった。
…………その都市では倒壊した建物があちらこちらにあり、まるで廃墟だ。火災も上がり、逃げ遅れた、この不運なる惑星の住民のさまざまな原因の死体、死体、死体――の海だ。
「…………」
「やっと治まった……?」
運よく助かった人達は避難していたあまり崩れていない建物から這い出し、辺りを見渡す。
がそこには……。
謎の男たちが悪魔のような笑みを浮かべて、所持していた重火器をこちらに向けていた。
「死ね!」
「なっ……」
銃口から放たれる巨大な灼熱の火炎が一瞬で彼らの身体を呑み込んで、消し炭となり、その業火は次第に建物さえも呑み込んでしまった――。
別の場所では、
「たたっ……助けて……」
「こわいよぉぉ!!」
他の戦闘員が生存者達を発見し、すぐさま追いかけまわした末、逃げ場のない路地裏に連れ込んだのだった。
「…………」
「来るなぁぁ!!さもないとぉ!!」
生存者の一人の男がそこにあった鉄パイプを持って立ち向かおうとする一方、その戦闘員は臆することなく――ただ無言で追い詰めていく。
「ひい……ひい……」
恐怖からか、止まらない震えを押さえてパイプを振り上げた。
が、戦闘員は瞬時に男の頭をグッと掴み込み、容赦なく壁に顔から叩きつけた。
グシャっと生々しい音と共に血や体液が辺りに飛散し――男はそのまま地面に倒れて動かなくなった。
「まずは一人め。次は……」
戦闘員は残りの生存者達に所持していたの巨大ライフルを向け――。
“いやあああっ!!”
女性の断末魔を響き上がったが最後、もう何も発することはなかった。
そして、ラクリーマとレクシー、ユノンは堂々と都市の中止部を歩き回っていた。どうやら戦利品を集めに探索をしていたらしい。
「あのビルに誰か居そうじゃねえか?なあレクシー?」
「同感っスね。どうします、調べてみますか?」
「いや、もう別の場所に移動する。あいつらもそろそろ戻ってくるだろう。
まあ、ここまでしたからにはキレイに片付けるとするか」
彼は、前方にある巨大な建物、ビルらしき物をを見つめた後、左腕を折り曲げて肘をそれに向けた。
折り曲げた肘の先が何と、野球ボール一つ入りそうな穴を展開、半身の姿勢で空いた右手で左腕を掴んで固定した。
「二人とも今すぐ離れな。あのビルを一撃でぶっ飛ばす!」
「えっ!?」
するとレクシーはとっさに彼女を連れて、ラクリーマは遠ざかっていった。
“シュウウウッ”
穴に青白い光が収束し――、それを建物に向けて放出したのだった。
肉眼では捉えられない速さで突き抜けて、直撃した。
閃光と共に、建物は一瞬にして崩壊、ガラガラと破片落ちはじめて、衝撃と砂ぼこりが広範囲に広がった。
「…………」
撃った瞬間、すかさずその場から離れた近くの建物に身を潜めていたラクリーマは見事、崩れさった建物を見てニヤッと笑った。
あの中に人がいたのならもはや生きていないだろうと確信する。
「……なら戻るか」
ラクリーマは通信を使ってレクシー達を呼び、合流した。
「さすがはリーダーだ。一撃で破壊するとは」
「だが、これ使うとすぐにオーバーヒートするし、まだるっこしいんだよなぁ」
そんな会話をする中、彼女はあることに気づいた。
(左手が義手だったの……)
ラクリーマの機械化された左手、義手だと今気づいたのであった。
しかし、本当の手みたいに動作することから、その義手はかなり精巧で作られている。
自分の故郷、ドグリスの技術にしてもここまで再現することはできない。
超技術で造られた金属義手だ――。
彼女は息をのんだ。
…………………………………
全員、各機に戻り、集まった。その横で、襲撃した都市から集められた戦利品が集められていた。
使えそうな機械やなにか金属素材、そして食物など、様々だった。
「よくやった。怪我人はいねえか?」
全員が横に首を振っている。――どうやらいないみたいだ。
「よしっ。ならここから違う場所に移動するぞ!」
“おおっ!!”
彼らの雄叫びが誰もいなくなった土地に響きわたる。
そして――戦利品を積み、次なる場所へ移動を開始した。
……………………………………
そして、 行く土地の町、村、都市を全て地獄へと変えていった。
そしてそこに生きとし生ける者全てを根絶やしにした。
しかし、彼らは何も思っちゃいない。これが彼らの唯一の生きる道なのだから。
しかし、これでは警察や軍隊などの治安組織が黙っちゃいないのは当たり前だ。
だが、最初の主砲でそんなものは消しとんでいる。
これも彼らの戦略なのである。
――そして最後の場所、制圧していない場所へ向かった。データを見る限り、どうやら小さな町のようだ。
“ここで最後だ。全員、早く終わらせるぞ。これが終わったらしばらくは休みだ、辛抱してくれ!!」
“よっしゃああっ!!”
さすがの連戦で疲れがたまっている彼らにとっては嬉しい知らせだ。
最後の制圧場所に着陸し、気合いを入れて、一斉に飛び出した。
「最後の制圧場所だし、俺も動こうかな!」
そう言い、ラクリーマは指をパキパキ鳴らして腕を振り回している。
そういえば、今日は彼は探索ばかりで本業の戦闘はしていなかった。
なので、身体が鈍っていたのである。
彼も戦闘員と混ざり、街へ進行していった。
――こんな小さな町が耐えられるハズがなく、完全に奴らの思うつぼであった。建物は破壊され、そこの住む人々や家畜は全て惨殺。必要なものは好きなだけ略奪など、もはや、やりたい放題であった。
それらをここにきてから直視していたユノンはもはや言葉を失った。
こんな酷いことを少しでも気にするどころか、悪そびれてないような笑みを浮かべて行使する彼らが理解できなかった。
そんな中、一人の部下がここの住民であろう、一人の子供をここに捕まえて連れてきた。
その子は酷く怯えている。暴れる気配は全くない。
「こいつ、俺の指に噛みつきやがったんですぜ!?」
ラクリーマはその子供を、無言で見つめ――。
「うっ……うっ……」
子供の瞳から涙がこぼれだした。普通の人ならそこで憐れに思って助けるかもしれない。
ユノン、彼女自身もそこまでは……と思っていた。が、残念ながら彼は『普通』ではない。
義手の四指が高速回転、いわゆる『ドリル』と化し、子供の方に向けた……。
まさか……そんな……。
そして悲劇は起こった。
彼の指は子供の顔面を貫いた。血と体液、脳髄が、彼はもちろんのこと、近くにいた部下、ユノンのところまで飛沫した。
そして、無惨に転がる子供だったもの見下ろす彼は血塗れの中、狂気とも言える笑みを浮かべた。
「うう……う……う」
一部始終を見てしまったユノンの脳裏にその光景が焼き付いてしまった。。
「ユノン!?」
限界に達した彼女は逃げ出してしまった。
無我夢中で先もわからぬ道へ逃走する彼女に対し、
「お前ら、ここで待機だ。レクシーもそこにいろ!!」
“リーダー!!”
ラクリーマも、彼女を追って全速力で走っていった。
一方、彼女は襲いかかる気持ち悪さを必死に堪えながら、彼らから少しでも離れようとする。
(あ……あんな奴らと一緒にいたら本当に気が狂いそうだ……!!戻るのは嫌だ!!)
身を隠せる場所につくとそこにうずくまり、身を隠す。
“はあ……はあ……”
タバコが吸いたい……気を落ち着かせたい……。そういえばあれから全く吸っていない。
思い出すと余計に吸いたくなった。
ポケットに手を突っ込み、漁る。が、
(なっ……ない……落とした……)
来る前に入れておいたハズが落としたのか、無くなっている。最後の手段である腕を切ろうにも、カミソリは艦内のあの部屋の中であった。
完全に絶望した。頭を押さえてぶるぶる震える。
(…………こわいよぉ……こわいよぉ……)
まるで子供のように怯える彼女の姿は今まで見たことがない。
しかし、今の彼女には手取り足取り手を貸してくれる者などいなかった。
“ザッ……”
どこからか音がし、彼女はそれに反応する。随分、遠いところから聞こえたようだが、聴覚が優れる彼女はすぐに聞き取れた。
聞こえたところはどうやら奴らから離れた場所にいる。
もしかして……生存者……?
彼女はそれを救いの手と思い、その場から走り出した。
聴覚に加え、優れる嗅覚、鼻をクンクン動かして、必死で音のした場所へ向かう。
近づくにつれて奴らとは違うニオイがする。
――生きた人のニオイだ。
彼女はそれを頼りにそこに向かった。
「…………」
ついた場所は瓦礫に埋もれた所だ。しかし、辺りには人らしい姿はどこにもいない。
間違いだったのか?いや、確かに人のニオイはした。それを辿った場所がここだ。実際、ニオイがここから強く発している。
キョロキョロ辺りを見回していた。
突然、
「!!」
なんと瓦礫がぶっ飛び、中から人が飛び出した。鍛えられた全身の筋肉と顔から、男性のようだ。
「あっ……あの!!」
気が緩み、すぐに男性の元へ向かうが、それに反して男性は彼女をグッと睨み付けた。
「あいつらの仲間だな……!!覚悟しろ!!」
「えっ!!」
彼は持っていた刃物を掲げて彼女に襲いかかった。
「ひいいっ!!」
驚いた彼女はその場所でへたり込み、男が振った刃物が空を切る。
「ああっ……うあ」
「この町を……俺らの全てを奪いやがって……絶対許さねえ!!」
「ちっ……ちが……」
勘違いされている。私じゃない、そう言いたいが喉が引っ掛かり、上手く発音できなかった。
男はまた刃物を振り上げて、足がすくんで動けないユノンに狙いを定めた。
「いやああああっ!」
彼女は目を閉じて、覚悟を決めた。
もう終わりだ――何もかも――。
(あれ……痛くない……どうして……)
彼女に痛みが伝わってこない。というより刺された感触すらない。
恐る恐る目を上げた。すると……そこには、
「! ! ?」
目の前にあの男、ラクリーマがこちら向き手を広げて立っていた。しかし笑顔ではあるが、大量の汗を流している。
「だい……じょうぶ……か?」
「ああっ……あんた……」
その光景はあまりにも異様だった。まさか彼女の盾になった……信じられない……。
しかし、彼の後ろにはまだあの男が!!
「おのれえっ!!これでくたばりやがれ!」
振り上げられた刃物には赤い血がべっとりぬれているのがわかった。――それはラクリーマの血だ。
「う……うしろ!!」
彼女の言葉に察知し、とっさに振り向き、左手を突きだした。
手首から突出した銃口から放たれた光が男の頭を貫通、男はその場でドサッと倒れた。
――死んだことを確認すると、彼は彼女に手を差し出した。
「ユノン、ケガはないか……?」
呆然としていた彼女は、彼は声に我に返った。
「あっ……あれ……?」
「あの男ならもう始末した。勝手に行動すんじゃねえよ、何かあったらどうすんだ……っ」