小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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時間を遡り、ヴァルミリオン艦内……。

「うわああっ!!凄い!!」

「これが……エミリアさんの……」

「専用機かぁ!!カッコいい〜〜っ!」

エミリアはドラえもん達に艦内の隔離された格納庫の上空にて、とある戦闘機を見せていた。

それは彼女達が乗っていた偵察機とは違い、全体が綺麗なサファイア色のカラーが施され、左右に展開された特徴的な両羽翼とスラスターとブースター。まるで無駄な部分を省いたすっきりした胴体。

こんな形は地球では到底考えつかないフォルムだ。全長は、見る限り15m前後はありそうだ。

「これはあたしの専用機『イクスウェス』よ。

あたし達はこれに乗って作戦に参加するわ」

三人はこの『イクスウェス』の勇姿に見とれていた。


「ふえっ〜〜。これはどのくらい速いんですか?」

スネ夫の質問に、何故か彼女は苦笑いしている。

「これね……はっきり言って最高速は不明なのよ……っ」


「ええっ!!どうしてですか!?」


「……実はね、あたし半分の出力しか上げたことないの……。
この子、機内にとてつもない衝撃がかかってね、テストした際にあたし……半分だけの出力でもあまりの衝撃で血を吐いちゃって……気絶しちゃった」


「「「…………」」」

その事実に三人の顔は生気を失ったように白くなった。


血を吐く……傷から血が出るとかそんなもんじゃない。
文字通りの意味で口から血を吐き、それは内臓に傷つけてしまい、下手をしたら潰れてしまう危険性が高いということである。

そんなことを引き起こす代物に自分達が乗り込むなんて……エミリア本人も耐えられないのにいくらなんでも無茶苦茶だ。
命を捨てるようなモノである。

「けどね、今作戦にはこれを使う必要があるの。
もし戦闘になったら確実に激戦は避けられないから、こちらもより強力な機体を使わないといけないのよ」


ジャイアンとスネ夫はその場でへたりこんだ。

「あっ〜あ……。これで俺たちの短い人生も終わりかぁ……」

「最後に……最後にママの手料理たべたかったなぁ〜〜」

「だ か ら、ここでドラちゃんの道具を使うのよ。ねえ、何かないかしら?」

「何か道具は……そうだ、『テキオー灯』を使おう。

これなら多分、衝撃に耐えられると思うよ」


ドラえもんはポケットから『テキオー灯』を取り出た瞬間、さっきまで落ち込んでいた二人は急に立ち上がり、キラキラした瞳をした。

「おおっ、あるじゃねえか!!」

「さすがはドラえもん!!」


落ち込んだり立ち直ったりと全く……、忙しい奴らである。



「ただ問題は……あなた達の友達の生存が心配だわ。最悪の場合も十分考えられるし……」

そう言えば忘れていた。のび太としずかの生存状況を。
二人のいるところは幾多の惑星の全てを奪う、凶暴で残虐性を特化した極悪の組織の本拠地である。

「そっそう言えばのび太としずかちゃんは……。ドラえもん、『タイムテレビ』は!」


「ちょっと待って……ええと、ええっと……ん?ああっ!!」

ドラえもんはポケットの中に手を入れたが、数秒後に大声を上げたがこれは……。


「どうした?」

「ああっ、ない、ない!!タイムテレビがどこにも見当たらない!!

裏山に出しっぱなしだったぁーーっ!」

「「ええ〜〜っっ!!?」」


これでは二人の安否を確認しようにもできないではないか!

ジャイアンとスネ夫は怒りを炎のように燃え上がらせてドラえもんに突っかかった。

「このポンコツタヌキロボット〜〜っ!!」

「こんな時に役に立たないんだからぁ!!」

「うるさぁい!!なんで僕ばかり責任を押し付けるのさぁ!」

「…………」


モメ合いとなったとドラえもん達を尻目にエミリアは呆れるように「はあ〜〜っ」とため息をつき、


「いい加減にしなさいっっ!!」


「「「! ?」」」


彼女の一喝にシーンと静まりかえった。


「ここに来る前に言わなかったかしら?「もしもの時は覚悟してね」と。

あなた達はそれを理解した上でここに来たんでしょう!?」


「けど……のび太達に何かあったら……っ」


心配し、うつむくジャイアンにエミリアは。

「……はっきり言って、その友達が生きている確率は非常に低いと思う。

奴らは命を奪うことを、まるで作った積み木を崩すかのように何とも思っていない極悪集団よ。

あの時『タイムテレビ』を見る限り……その子達は侵入者扱いされてると推測できるわ。

……あんな状況で助かるってよほどの運か勝算がない限り無理よ」

“…………”

彼女から無情な現実を突きつけられて三人は多大なショックを受ける。

もっともな正論である。だがまだ幼いジャイアン、スネ夫にとっては精神的にキツい言葉であった。


「……だけど、『確率が非常に低い』だけで『全くない』わけじゃないからね。

もしかしたら人質にされてるかもしれないし、または捕らわれているかもしれない……ということもあるから」


「エミリアさん……」


「とにかく希望は絶対捨てないこと。あきらめたらそこで終わりよ。

一緒にその友達が無事であることを祈りましょう」


彼女から諭され、励まされ、落ち込んでいた三人は次第に表情が明るくなっていく。


「……そうだね、エミリアさんの言う通りだ。

少ない可能性でも信じてみよう、二人とも!!」

「だな!!」

「エミリアさんはいいこと言うなぁ!」


「フフっ♪そうよ、元気を出して前を見ましょう。私もあなた達を全力で守るつもりだから安心して」


ようやく活気が出始めて、雰囲気がよくなった三人はエミリアと共に希望を見いだした。のび太達が生きていることを信じて……。

「…………」

しかし、エミリアはどこか浮かない表情をしていた……。

(とは言うものの……、現状況で作戦が上手くいくかしら……。あまりにも戦力的にキツいし……)

…………………………………

時間は遡り……ドラえもん達がヴァルミリオンに到着した日、何故かこちらに向かっているアマリーリスの銀河系進行阻止作戦の会議が開かれた。

――作戦室。本艦の各部隊の隊長と特殊任務を付与されたエミリアは、艦長カーマインを中心に中央部に配置されている作戦モニターを見ていた。

「うむ……っ。アマリーリスがこちらに向かっていると言うことで我々が対処しなくてはならなくなったのだが……」

「本隊に連絡したところ、こちらに『ヴァールダイト級宇宙戦闘艦』5隻、『グラナティキ級万能巡洋艦』12隻、そして新型試作機と共に援護に向かわせたとの報告が……」

隣にいた副艦長の報告にカーマインはなんとも渋い表情をとり、顎をつまんだ――。

「一体……本隊は何を考えているのだろう……。それだけの数でアマリーリスの侵攻を食い止められると思っているのか……」


援護支援にくる宇宙戦闘艦『ヴァールダイト級』はランクA級、万能巡洋艦『グラナティキ級』はランクB級のエネルギー質量しかもっていない。
ランクS級のエネルギー質量を持つエクセレクターに真っ向から挑むには明らかに戦力不足であった。

「本隊の連絡によると、別の作戦によりランクS級宇宙艦は全て使用中ということで、これだけで対処してくれ……と。


提督、これをどう考えます?」

「嘘も混じっているな。上層部はあまり、危機感を持っていないんだろう。“まあなんとかだろう”と」


「それではまるで……」

「我々は当て馬だな、我々にどれだけ被害が出ようが代わりはいくらでもいると思っている」


“…………”


全員が沈黙したままだった。これでは多大な被害と犠牲は避けられない。
アマリーリスは連邦にとってあまりにも未知数な勢力であり、どういう兵器、武装を装備し、どういう戦術で攻めてくるのかわからない。

ただわかっているのは……奴らの本拠地である宇宙艦が本艦と同等のエネルギー量と火力を有することだけであった。


「……というわけだ。あまりにも理不尽かもしれないが任務は任務だ。現状況で作戦を遂行しなければならない。
それでみんなの意見を聞きたい、何かいい案がないか?」


「はい。こちらの戦力が少ない以上、短期決戦に挑むのが望ましいと思います。
相手の艦に集中砲火して撃沈させるのは……」


一人の隊員が提案するが、カーマインは納得いかない顔をしている。

「短期決戦は私も同意だが、聞いた話によるとなんでも地球から来たあの子たちの友達が手違いがあって、そこに乗り込んだらしい。

安否が不明な以上、むやみに手を出せない」


“…………”


それから色々な意見が飛び交うが、どれも決定に至らず、難航をきわめていた。

そんな中、一人の隊員が恐る恐る手を上げた――。


「案ではないのですが……その宇宙艦のエネルギー質量がS級ならば現時点でNPエネルギーしか考えられないと思うので超新星爆発に耐えうるほどの強力なバリアを展開すると推測できます。艦に配備されている機体で近づこうものならバリアに衝突し、一撃で消滅してしまうと思われるんですが……」

「うむ……っ。そのことなんだが、本司令部直属の科学部隊の実験があったのだが……どうやら同質量のNPエネルギー同士が衝突すると中和されると結果が出ている。

なので、本艦の主砲を使用すればバリアを一撃で消滅させることができる」

「しかし、消滅させたとしてもNPエネルギーは半永久的に増加します。またバリアが復活するのは時間の問題です!」



「うむ……っ。副長、バリアが解除された場合、再展開される時間は分かるか?」

「……本艦の科学部隊長によりますと、本艦と同性能であるならば、無から艦全体を覆うまで約5分かかります」


「ということは……主砲が直撃した瞬間から5分以内でアマリーリスの本拠地に突入しなけばならないわけだ。

……そう考えると『ホルス』では役不足すぎる。

エミリア、『イクスウェス』の調整は?」


「はっ……はい。故障している箇所は見られないのですが、テスト以来全く使用していません。あたしには到底使いこなせない代物でして……」

「そこでだ、あの子たちの道具を使用する。

脱走で見せた、あの摩訶不思議な現象を起こせるのなら、必ず役立てるだろう」


「……そうですね。ドラちゃん達の力を借りれば……何とかなりそうですわ」


カーマインは両手を後ろに組み、コクッと頷いた。


「……なら、作戦はこうだな。こちらが警告し、降伏、投降に応じなければ今作戦を決行する。

……まずは主砲の発射準備に移る。
そのエネルギー収束中はこちらが無防備になるので、攻めてくるアマリーリスには支援する艦と戦闘ユニットで壁になってもらい時間を稼ぐ。
そして主砲発射し、アマリーリス艦のバリアを消滅させ、そこからエミリアとミルフィ、そしてあの子達の特別隊が5分以内でアマリーリス艦に突入し、生きていれば友達を救出、保護。そして奴らの行動阻止及び、機能停止させる。
そこから我々が次々と突入し、組織員を逮捕する――。

この作戦が賛成ならば拍手をしてくれ」


“パチパチっ……”


瞬間、大勢の隊員の手を叩く音が聞こえた。

「よし。なら作戦はこの内容で可決する。
なお、細部詳しい内容や情報はまた後ほど伝達する。

以上だ。各自解散し、各隊に戻ってくれ」

全員はカーマインに一斉に敬礼した後、ずらずらと去っていく。

エミリアもそれに乗って作戦室を出ようとした時、


「エミリア?」


カーマインはエミリアを呼び止め、彼女はすぐに彼の方へ振り向いた。

「さっきも言ったがお前にはアマリーリス艦に侵入してもらう。

自分とあの子達の分のシールドと予備のカートリッジを所持して参加してくれ」

「了解です」


「それに、あの子達の力を借りるといったが、あくまで保護対象の子供達だ。

お前ばかり無理な事を押し付けて本当にすまないがあの子達を守ってやれ、いいな!」


「はい!!命に変えてもあの子達を守ってみせます!!」


ぱっちりとした瞳とハキハキした口調からやる気は十分感じられる。
だが、彼の方は何か心配そうな表情をしていた。

「……そしてお前も絶対に無理をするな。もしも万が一、何かあったら私は……」


「提督?」

「いや、なんでない。早くあの子達の所へいってやれ」

「はっ……はい」
彼女は首を傾げて作戦室を後にした。

……………………………………

エミリアとドラえもん達は武器倉庫に向かっていた。
その理由は。

「今からあなた達にシールドの使い方を教えるわ。

これで大概の対人用エネルギー兵器、実弾兵器を防げるようになるの」


「シールド?」


「詳しくは武器倉庫内で教えるわ。私とあなた達は奴らの本拠地に直接乗り込むことになったから、死なないためにも身を守る物を持ちましょう」


「乗り込む?そのアマリーリスの艦にですか?」


「ええ。詳しい内容は判り次第みんなに伝えるわ。危険だけど力を合わせて頑張りましょ!!」


「「「…………」」」


急な不安と恐怖に駆られる三人。
死なないためと聞かれたら、やっぱり下手したら死ぬんだ……。

危険てのはわかってたけどいざそう言われたら平然といれなくなる。


「と、ところでミルフィちゃんはどこに?」



「さあ……そういえば見かけてないわね」

四人がそう話ながら前方の幅広い十字路に差し掛かった時、


「ちょっ……どうゆうことヨ!!」


四人の耳に聞き覚えのある女の子の声が入ってくる。
左側の通路にそっと覗き見るとそこにはミルフィとあの男、コモドスの二人が会話をしていた。
しかし二人の様子を見るかぎり、どうやら楽しい会話ではなさそうだった。


「コモドス……あなた……っ」

「…………」


コモドスは顔色一つ変えないで黙っている。


「コモドスそれでいいの!?
あなたはあんな人の言いなりになる必要なんかないヨ!!

自由になりたくないの?」


「……しょうがないんだ。でないと……」


二人の会話は意味深しげなことばかり聞こえてくる。


「すまない、ミルフィ……」

「ああっ、待ってヨ!!」

去っていく彼にミルフィはその場で立ち尽くしていた。


「ミルフィちゃん……どうしたんだろ?」

「さあっ……」


「……今は話かけられる状態じゃないわね。行きましょう」


四人はミルフィとは反対方向へ曲がり、その途中でエミリアは彼女の方へチラッと振り向いた。


(ミルフィ……)


その後、宙に浮きフラフラ漂いながら去っていく彼女の後ろ姿は、どこか悲しさがにじみ出ていた……。

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