「いい加減にしろよ……せっかくの俺の好意を台無しにしやがって……」
その顔はまさに阿修羅。それは連邦側だけでなく仲間であるアマリーリス側にその敵意を向けていた。
「リーダー!!のび太を人質にして何やってんすか!!?」
瞬間、レーザー砲を言った本人の足に発砲、貫かれて悲鳴を閑古、その場でうずくまった。
「うるせぇ!!キサンらは俺の仲間でも何でもねえ、俺の敵じゃあ!!」
0;敵対宣言するラクリーマに仲間は絶望のどん底に叩き落とされた。
隊員達も彼に銃を向けると少しずつ後退る。
「おい、こいつがどうなっても知らねえのか?
ククク……俺はガキだろうと容赦しねえ男だぜ……」
そんな中、のび太もワナワナ震えながらも彼にこう言った。
「ラクリーマ……お願い……こんなこと……やめてよ……」
小声でそう必死に伝えると今度は彼が彼の耳元で……。
(のび太……よく聞け……すぐに俺がお前を前に突き飛ばすから、そのまま連邦に保護してもらえ……いいな……)
(……ええ……ラクリーマは……?)
(……こんなになったのは俺が責任だ。なら俺が止めねえとな……。
のび太……お前らに出会えて楽しかったぜ……そして、二度と俺を思い出すな!!)
ラクリーマはそう言い残すとのび太を全力で突き飛ばした。
彼らの方へ行ったのを確認すると彼は顔を一変させた。
「あいつ噛みつきやがった……くそっ!!」
彼はすぐに背を向けて一目散にその場から走り去った。
しかしそれを黙って見逃すワケにはいかない連邦。
「止まれ!!止まらなければ発砲する」
大人数の隊員が彼に銃口を向けるがそれでも止まらない。
警告を無視したラクリーマについに。
――多数の光弾と実弾が彼に向かって飛んでいく。
彼に必死にかいくぐるも何発かは左足と右腕に被弾しその場で倒れ込む。
しかしラクリーマはゆっくり立ち上がり、足を引きずりながらも逃亡した。 0;
その時のび太はしずか、ユノンの元にいたがラクリーマのその姿に涙を流して取り乱していた。
「ラクリーマがぁ……ラクリーマが自分で責任を全てとるってえ!!」
「なんですって!!?」
――それを聞いたユノンは彼が段々傷ついていく姿に最早黙ってはいられなかった。口10;
「やめて……撃たないでぇ……」
ユノンは立ち上がり、そのおぼろ気な足どりで彼の方へ走っていった。
「ゆ、ユノンさん!!!」
彼女は彼の直前上に立つと彼の盾になるかの如く手を広げた。
銃の射線上にいた彼女の身体に数発の弾丸が擦り、苦痛にまみれながら震えていた。
同時に彼女の出現に驚愕した連邦は発砲をすぐに中止。
「ユノン……ユノン!!」
ラクリーマの耳にも彼女の悲鳴が届き、その場で止まり振り向いた。
「ユノンさん、ユノンさん!!しっかりして!!」
しずかは慌てて彼女の所へ駆けつけて必死にすがった。
しかしユノンはその穏やかな笑みで彼女を微笑んだ。
「しずか……頼みがあるの……これ以上、ラクリーマを……あいつを追い詰めないであげて……。
あいつ、自分で全て抱え込もうとしてるから……」
「ユノンさん……」
「どうかあいつを救ってあげて……あたし達より救われるべき人間はラクリーマなのよ……。
こんな頼りなくてどうしようもない女でホントにゴメンね……。
けど……あなた達だからこそ頼めることよ……」
「……」
「……あなたと出会えて本当によかった。あたしからしたらあなたは生まれてきてからたった一人の大切の友達よ。
だから……頼んだわよ!!」
彼女はしずかを持てる力を持って全力で押し飛ばした。
「ユノンさァァん!!」
しずかはすぐそこにいた連邦に保護されるもユノンの助けようと暴れに暴れる。
一方、ユノンは着物の中から拳銃を取り出して向かってきた隊員の足元に向かって警告発砲し、動きを止めた。
「ここから先は行かせない!!お前らみたいな奴にラクリーマを捕まえさせたりしない……させるものかぁ!!」
「バカなマネはやめろ!!あいつを庇って何の意味がある!!?」
「……あたしはねえ、アマリーリスの副リーダーを務めていた女よ。絶対にお前らなんかに屈しないんだから……」
その事実に驚愕する連邦勢。彼女は銃を彼らに向けたまままるで見下すように卑屈した笑みを浮かべ、姿勢を正した。
「ホントにガキくさい男でさ……スケベで……どうしようもないバカで……あんな男でも相当の苦労人でね。あたし達仲間のために身を挺した挙げ句、心身ボロボロなのよ。
あたしの……あたしの過去なんか比べものにならないほどに苦労してきたんだよ。
……そんな男が今も苦しんでるって時に、助けるためならわたしがどんなに腐ったオンナでも……」
彼女は豹変したかのように凄まじい殺気を放ちながら拳銃を彼らに向かって連続発砲した。
「ああっ!!」
……ついにやってしまった。その一発が不遇にもシールドが解除されていた隊員の心臓部を貫通し、即死。
彼女はこの手で直接、殺人を犯してしまったのであった。
隊員は彼の亡骸を抱き抱えるとユノンに向けてその怒りを込めた。
「キサマァァ……!!」
しかし彼女は戸惑うことなくヒステリックのように拳銃を乱射するも彼らのシールドでほとんど塞がれた。
隊員達は危険人物と断定、彼女に拳銃を向けて――発砲。
無数の弾丸と光弾が彼女の身体を次々に貫いていく。
彼女はまるでその場で舞っているようであった――。
その姿はのび太、しずか、カーマイン、そしてラクリーマ……いや全員の目に焼き付いた。
彼女はそのまま膝が折れて倒れるかと思いきや。
彼女は倒れなかった。致死量の弾丸が撃ち込まれたにもかかわらず……大量の血を吐きながらその虚ろな瞳で彼らをぐっと睨み付けた。
「……どうしたの……ほら……かかってきなさいよ……。
怖じ気づいたかこのイ〇ポ野郎どもォォ!!」
彼女の口からとは思えない下品な言葉を吐きまくる。もう正気を失っていた。
彼らは彼女の気迫に圧倒されて少しずつ後退しはじめる。
が、あのサルビエスが苦虫を噛み潰したような顔で登場した。
「ちい、こんなドグリス人の小娘相手になに臆してやがる!!
なら俺が引導を渡してやらぁ!!」
彼は弾帯から何やら懐中電灯のような物を取り出すとグッと握る。すると先から細長いまるであの戦闘ユニットのような光の刀身を形成したと同時に両手で持ち、彼女へ突撃した。
「死ねえぇっ!!」
「大尉!!」
コモドスが叫ぶも時すでに遅し、彼の放った刀身が彼女の腹部をいとも容易く貫いた。
彼女はガクガク震えて今にも倒れそうだ。
「か……かかぁ……」
「痛いか?そうだろうな。刃が完全に貫いているんだからな。ならこれならどうだぁ!?」
彼はそれを更に突き上げると彼女の口から『ゴボゴボっ』と黒い血を溢れ出て悲鳴ともつかない声をあげた。しかし、
「かか……か……かった……わねぇ……」
彼女は最後の力を振り絞り、すかさず彼を抱き締め始めた。彼は離そうとしても一向に離れようとしない。
「なにぃ!?離せぇ!!」
ユノンは震える右手ですぐにまた腰元へ手を伸ばし、取り出したのはスティック状の金属物。その先にある円いボタンを震える手でグッと押し、歯で噛み持った。
カーマインは彼女の取った行動にいち早く察知した。
彼の叫びで全員がそこから一斉に退避。しかしサルビエスだけが彼女に抱き締められて逃げられない。
「離せぇ!!頼む、誰か助けてくれぇぇぇっ!!」
(さよなら……サヨナラ……この世で一番愛した人……)
彼女の口に加えたスティックの線が少しずつ光り、それが一気に――。
「きゃあ……――」
まばゆい閃光が彼女らを包む同時に、この部屋を激震させるほどに大爆発。辺りに爆風が襲いかかった。
全員がその場で伏せている。爆風がすぐに止み、前を見ると爆心地だけが燃え上がっている。
ユノンとサルビエスの姿はどこにもなく肉片すら残ってなかった。
「…………ユノンさん!!ユノンさんは!!?」
彼女は立ち上がると青ざめた表情で、無我夢中で燃え上がる所へ駆け出した。しかし、その途中の足元を見るとひとつの拳銃が落ちていた。
グリップには人の手形のような黒い跡が残り、しずかは細い指のような盾に連なって四本でユノンが使っていた拳銃だと分かった。
「ああ……ああっ!!ユノンさんが……ユノンさんがぁ………!!」
彼女はその拳銃を前に座り込み、頭を抱えてそして――。
――彼女は泣きわめく悲痛の叫び声だけが響く。
それはこの場にいる全員の耳に突き抜け、この場を本当の絶望へと追いやった。
カーマインはそのまま膝を突き、唇が開いたままであった。
――彼女の選んだ道はこれでよかったのだろうか。
彼女はたった一人の男、ラクリーマという悪人を守るために、自ら人生の終止符を打ってしまった。
それほどまでに彼女は彼を『愛してしまった』のであった。
「こんなの……あんまりだ……」
のび太もその場で崩れ落ちて、ポタポタと涙が落ちている。
しかし一番の絶望している人間が何を隠そう、この男であった。
「……ユノン、嘘だろぉ……お前までぇ……」
ついにラクリーマは絶叫する。その顔を酷く歪め顔を両手でグッと押さえてブルブル身体中が震えていた。
「あがぎぎぎぎっ!!!ぐおえええええっ!!?」
もはや言葉ではない奇怪な叫びがのび太へ振りむかせた。
「ラクリーマ……ラクリーマァァ!!」
彼にとってもう悪夢でしかなかった。もう……守るべき者までも失ったラクリーマは……。
“ドサっ………”
まるで電源が切れたように無気力となり、その場で倒れる。
その目からは何も生気が感じられなかった。
やっと我に戻ったカーマインは動かない彼に目を向けた。
「今の内に彼を捕まえるんだ!!これ以上、負の連鎖が起きないためにも!!」
彼の命令を受け、数人の隊員がラクリーマの元へ向かい、両手を彼の両手を掴んで身体を起こした。
これで全てが終わったと誰もが思った――。
“ラクリーマヲケナスヤツハ、ダレデアロウト、ゼッタイニユルサナイ”
ラクリーマの義手『ブラティストーム』の内部機械が突然、一気に活性化を始めた。
「何だこの音は……?」
「おい、こいつの左義手、勝手に動いてるぞ!!!」
その隊員たちはいち早く異変に気づいた。本人は動いていないのに金属質の左手がまるで虫のように激しく動作していた。
手首から4つのレーザー砲を自動的に射出、瞬間に掴んでいた手を振りほどき、天へグッと突き上げた時、
誰もが予想してなかった出来事が起こった。
4つの銃口から四本の光線がたちまち近くにいた隊員達に撃ち込まれて、その膨大な熱量が彼らの身体を自然発火、一気に燃え上がらせた。
しかしそれだけにはとどまらず、今度は前へ向き、レーザー砲をグネグネと動く。カーマインは4つの銀色に光る何かを見た。
「全員、今すぐ伏せろォォっ!!」
――その1秒後、前方に無数の蒼白光線が飛来、あるもの全てが光線の餌食となった。
避けられない者全て、次々に襲いバタバタ倒れていく。
これは敵味方関係なく、無差別攻撃であった。
「しずかちゃん!!」
のび太はまだ泣きながらうずくまる彼女を抱くように身体全体に覆い被さり、光線から守ろうとしていた。
「のび太君、しずかちゃん!!『ひらりマント』!!」
二人の危険を察知したドラえもんがのび太の前に立ち、赤いマントをまるで闘牛士のように広げると生地に直撃する光線はいとも簡単に弾くではないか。
「くう……」

「ドラえもん!!」
のび太は前で盾になっているドラえもんの隙間からラクリーマを覗く。
遠くてわからないが何かがおかしい、いち早く察知した。
「ラクリーマァァァァ、もうやめてよ!!」
しかし今の彼は全く意識がなく、動いているのはなんと義手だけであった。
「お願いだからもうやめてぇぇーー!!」
彼の懸命な叫びについに、
「はっ!?」
意識が戻り、すぐに左手を注目した。
(なあ……左手が勝手に動いているだと!!?)
勝手に光線を乱射しまくる左手にラクリーマは止めようと必死だ。
「止まれ!!止まりやがれ!!!」
しかしブラティストームの異常な反発力により、右手で下げようとしても、ラクリーマの怪力を持ってしても全く下がらない。
顔中の血管を浮き出してまでの彼の顔はその凄まじさを物語っていた。
しかし、すぐにレーザー砲は何事もなかったかのようにピタッと止まり、やっと腕が下がりと同時に彼は前方を見て、唖然とした。
大多数人の隊員だけでなくアマリーリス員までもがその光線の餌食になり、まるでゴミが散乱しているように死体ばかりであった。
それにここはオペレーションセンター内である。
このエクセレクターの殆どを司るここの機械やコンピュータが全て、先ほどの無差別攻撃により破壊されていたのであった。
(俺が……全部やったと言うのか……っ)
彼はやりきれない表情をしたすぐに、何を思ったのかその場からまた逃げ去っていく――。
「ラクリーマ待って!!」
のび太はラクリーマを追いかけようとするがすぐ隣にいたドラえもんに腕を掴まれた。
「ドラえもん……」
「のび太君、いっちゃ行けない!!本当に危険だ!!」
「なんで!!?」
「なんでって……君も見ただろ!!あいつ、僕たちみんなを殺そうとしてた。
あいつは……君に何をしでかしてくるか分からない!!」
「何もしないよ!!ラクリーマは……そんな奴じゃない!!!」
「どうしてそんなことが分かるんだ!!君、おかしいよ!!
どうしてあんな悪党のために!!?」
その言葉についにのび太は泣きじゃくりながらドラえもんにブチキレた。
「違うったら違うんだあ!!ラクリーマは……ラクリーマは……僕を人質にとったのも自分が責任とるってわざとあんなことをしたんだあ!!」
それを聞いたドラえもん……いや、その場にいる全員が凍りついた。
「ここの皆はラクリーマの顔を見た!?
あんな辛そうな顔をしているの初めて見たよ!!」
のび太は両拳をギュッと握りしめて俯く。
「……確かにラクリーマやここの人達は悪人だと思うよ。僕たちが最初にここについた時、地球を侵略するって言ってたし、しずかちゃんを殺そうとしたし……それを嘲笑って……。
けど僕は早撃ち勝負で勝って、約束通りにしずかちゃんを助けてくれたうえに地球へ送り返してくれようとした!!
僕らに優しくして色んなことを教えてもらった!!
だから僕はその恩返しをしたいんだ、それをしちゃいけないの!?悪いの!?
僕は何もできずにただ地球に帰るなんてそんな薄情なことはできないよ!!」
彼の懸命な発言に全員が心を打たれる。
のび太はグス泣きしているしずかの所へ行き、こう言った。
「しずかちゃん……行こう」
「……」
しかし彼女は全く顔をあげようとしない。それに対しのび太は彼女は激しく揺さぶった。
「しずかちゃん!!確かにユノンさんが……悲しいけどラクリーマの方が一番辛い思いしてるんだよ!!」
やっと涙と鼻水まじりの顔を上げるしずか。
「ひくっ……のび太……さん……?」
「ラクリーマが……今にも泣きそうな顔をしてた……だから行こう」
のび太は優しい笑顔で手を差しのべた。
「今度は……僕らがラクリーマを助けてあげる番だよ、ね?」
しずかは身体を起こして、やっと立ち上がると涙を吹いて彼に微笑んだ。
「……そうね。本当に辛いのはラクリーマさんだものね……行きましょうのび太さん!!」
「しずかちゃん……うん!!」
しずかはユノンが遺した拳銃を持ち、それを見つめた。
(ユノンさん……安心して……あの人を、ラクリーマさんを絶対に救ってみせるわ……)
そして二人は全力でラクリーマが逃げていった方へ走っていった。
「のび太君!!しずかちゃん!!」
ドラえもんの声は届いておらず、二人はこのオペレーションセンターから姿を消した。
何とか無事であったジャイアン、スネ夫もドラえもんの元へ駆けつけた。
「ドラえもん、どうするんだよ!!」
「どうするったって……」
「下手したら二人とも……」
しかしそんな事を言い争っている場合じゃないのは三人は理解していた。
「ドラえもん、二人を追いかけよう!!それしかない!!」
「それしかないね!!」
「正直怖いけど……こうなったら僕も行くよ!!」
三人はカーマインと共に無事であったエミリアを見たが、膝をついて俯いていて一緒に行くのが無理だと悟る。
「エミリアさんがいなくて不安だけどしょうがない!!」
「うん、ならすぐにいこう!!」
三人は二人を追って走っていった。
“…………”
この中は残りわずかの連邦隊員とアマリーリス員が残されていた。
彼らはもはや茫然自失と化していた。
一方、エミリアは静かに笑っていた。まるでおかしくなったかのように……。
「ふふ……あたしって一体今まで何のために頑張ってきたんだろ……」
自暴自棄と化している彼女にカーマインは静かに手を肩に置いた。
「エミリア、まだ任務は終わってないぞ!」
「……えっ……?」
彼女は呆気をとられた顔で顔を上げた。
「お前にはまだあの子達を守って、友達を救出するっていう使命があったハズだ」
「提督……」
するてミルフィも駆けつけて二人は合流する。
「ミルフィ……」
「エミリア……まだあたし達は終わってないんだよ。あの子達を守るって大事な任務がね!!
しっかりしなくちゃエミリア、あたし達は誇りある『銀河連邦隊員』なんだからね♪」
ミルフィの明るい励ましに静かに涙を流した。
コクッと頷き涙を吹いて立ち上がった。
「……そうね!!ミルフィ、共に行動するわよ!!」
「了解!!」
二人はカーマインにビシッと背筋を正し、敬礼した。
「提督、これよりエミリア・シュナイダー大尉、ミルフィ中尉の二名は子供達の保護及び、救出の任務を続行します!!」
彼はいつも通りの優しい笑みを浮かべた。
「頼んだぞ、ふたりとも!!必ず彼らを連れて帰ってきてくれ、そしてできるだけあの男も生きて連行するように!!」
「「了っ!!」」
二人はすぐに走り去っていった。
そしてカーマインは残りわずかのアマリーリス員に目を向けてこう言った。
「お前たち、あの男の言う通りにしなさい。
これ以上、自分のリーダーに迷惑かけたくないだろ?
その気持ちが残っているのなら命を粗末にするな」
“…………”
彼の言葉についにその場に諦めて膝をつくアマリーリス員。やっと状況が穏やかになりつつあった。
「さあ各員、キツいと思うが負傷した隊員に手を貸してやれ、それ以外の者はアマリーリス員の逮捕、そして遺体の全回収の作業に当たってくれ、私も手伝う!!なお、エミリア大尉達が戻ってくるまでここで休憩及び待機だ、応援も呼ぶ!」
“了解です!!”
各作業に移り出す隊員達。そんな中、カーマインはラクリーマ達が逃げていった方向を見つめ、こんな事を思っていた。
(ふふっ、きっとあの子らのような人間が銀河連邦隊員になるべきなのかもしれんな……。
だが……ラクリーマというあの男……あれほどの器量を持ちながらどうしてこんな悪の道に進んだんだ……?
奴ほどの人間ならきっと他の分野でも貢献できるほどの器を持っているのに……)
彼はそう腑に落ちない疑問も抱いていた――。