小説『ハイスクールD×D改』
作者:ダーク・シリウス()

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集結する力



―――某室



「・・・・・うっ」


ベッドに真紅の髪の女性が呻き声を上げた。ゆっくりと目蓋を開き自分の手に感じる温もりの許を辿る。


「おはよう、ガイア・・・・・」


「・・・・・一誠」


「言っただろう?次に起きた時には俺が視界に入るようにするって」


「・・・・・ああ、本当に・・・・・約束を守ってくれたのだな」


「当り前だ。俺はそう言う男だと知っているだろう?」


「ふっ、ふふ・・・・・そうだな」


「・・・・・この時代の事はクロノスから全て聞いた」


「そう・・・・・か、クロノスが原因か・・・・・」


視線を天井に変えて呟いた。一誠は未来のガイアの頭をそっと優しく撫でる。


「オーフィスもアルビオンも皆、救出した。いまは、この時代の俺達の散らばった神器と神滅具を

回収している」


「・・・・・」


「ガイア、俺たちが『幽幻龍騎士団』という組織を結成した理由は覚えているか?」


「忘れるものか・・・・・一誠、お前の小さい頃の夢を実現するための組織だ。そして、家族を作る為だ」


「うん、そうだよ。そして、それが叶っている。最愛の人を助けれた・・・・・」


一誠は愛おしそうにガイアの頬を撫でた。ほんのりとした温もりが一誠の手の平に感じる。


「ガイア、聞いてくれ。俺は準備が出来次第、この時代の俺達、幽幻龍騎士団に敵を回した勢力と

戦うつもりだ」


「なんだと・・・・・?」


「勿論、未来の息子と娘には戦わせないでいるつもりだ。戦うのは―――俺達、過去の幽幻龍騎士団だ」


驚愕の声音をするガイア。だが、一誠の決意が固いと理解していた。一誠も反対しようが賛成して

もらえるだろうがどっちでも良い事だった。家族を傷つけたものには容赦はしない。

それが幽幻龍騎士団だからだ。


「既に冥府のハーデスを滅ぼした。後は冥界と天界、他の勢力だ」


「お前・・・・・それは本気で言っているのか」


「ああ、流石に俺は許せない。お前を、未来の俺を、仲間達を殺した勢力を許さない」


「・・・・・止めろ」


「ガイア・・・・・」


「止めろ、一誠・・・・・お前まで、過去のお前まで死んでは今度こそ我等は消滅する。

あの神滅具の前では我らは勝てない・・・・・」


必死で一誠を止めようとする。これ以上、自分の大切な存在を失わせたくないが為に。


「『ドラゴンを呼ぶ笛』。ガイアはそれを恐れているんだろう?」


「そうだ、あの神滅具はドラゴンを支配する。我とオーフィスを支配できないがサマエルやゾラード達を

支配した・・・・・!我はオーフィスと共に見たんだ!一誠たちが必死にゾラード達を呼んでも

帰ってくるのは攻撃!1人、また1人と支配されたゾラード達や

 1万のドラゴン達に殺されていく光景を・・・・・!」


一誠にボロボロと泣き叫びながら伝える。あの時の光景を脳裏に思い出して。


「我はそんな光景をもう2度と見たくない!一誠も死んでいく仲間や愛しい家族たちを見て―――『覇龍』を

超えた『極龍』になってしまって命を落としたんだ!」


「極龍・・・・・?」


「極龍・・・・・無敵の状態になって敵を殺し続ける。だが、その引き換えに効果は3分間の上に心と

命を失う・・・・・。一誠は永遠の命をたった3分で使い果たして死んでしまったのだ・・・・・!」


「・・・・・」


「我もオーフィスも必死に止めようとした!でも、一誠は心を失っていて我とオーフィスまで敵として

攻撃してきた!その隙に我等はサマエルの能力で力を奪われてこのような有り様に成った」


ガイアはいきなり一誠に拳を突き出した。―――だが、その拳は弱弱しく一誠を殴り飛ばすまでには

至らなかった。


「我はもう・・・・・真龍ではない。『D×D』でもない・・・・・。オーフィスも同じ状態の筈だ」


「・・・・・ガイア」


「頼む・・・・・だから、お前や過去の家族達まで戦う事なんて止めてくれ・・・・・!」


今まで見てきたガイアが見せない弱弱しい態度と言葉だった。自分が知るガイアは誇り高く、気高く、

自分が最も愛していた。それがこんなに変わり果てていた・・・・・。


「・・・・・今日はお前と過ごすと皆に伝えてある」


「一誠・・・・・」


「ガイア、未来の俺じゃないけど一緒に寝よう。傍にいるから・・・・・」


ベッドに上がって布団の中に入りガイアの隣で寝転がる。自分の胸にガイアを引き寄せて抱き抱える。


「ガイア・・・・・俺の愛しいガイア・・・・・」


「一誠・・・・・」


優しく、泣く幼い子供をあやすように頭を撫でて優しく温かな声音でガイアの名前を呼び続ける。


「一誠・・・・・一誠・・・・・」


ガイアもそんな一誠に甘え出す。一誠も甘えるガイアをもっと強く抱きしめる。俺は此処にいると

実感してもらうように。ガイアは顔を一誠に向けて熱い吐息を吐きながら呟いた。


「一誠・・・・・キスをしてくれ・・・・・我を・・・・・我を・・・・・」


「・・・・・ああ、分かった。・・・・・んふっ」


「んん・・・・・ふっ・・・・・ちゅっ・・・・・」


―――2人はキスをした。そして、その後。一誠とガイアは服を脱いで深く、長い間、お互いの体を

全て曝け出して愛し合った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――翌朝 某室


「おはよう」


「・・・・・お母さん」


俺とガイアは皆が集まっている部屋に入った。未来の幽幻龍騎士団はこの時代のガイアに視線を送った


「身体は大丈夫なのか・・・・・?」


「ああ、過去の一誠のお陰で力も元に戻ったぞ」


全身から膨大な量の真紅のオーラを迸った。それがこの時代のガイアの復活ともいえるオーラだった。


「そうか・・・・・父さん」


「うん?」


「ありがとう・・・・・」


「お前、口癖が『ありがとう』になっていないか?」


「そうですね、クロノス。語尾に『〜ありがとう』と付けて言わないでくださいよ?」


「するかっ!こっちは心から感謝しているんだぞ!」


少し顔を朱に染めてクロノスがフィーナに食って掛かった。場はクスクスと笑いに包まれた。

 そんな中、ヴァーリに話し掛ける


「ヴァーリ、そっちはどうだ?」


「お前と和樹が成功したんだ。俺達の方も成功しないと話にならないだろう?」


「と言う事は・・・・・」


「俺達の神器、神滅具をすべて回収した。世界旅行をした気分だったぞ」


「まあ、強敵と戦えて楽しかった」と口の端を吊り上げながら言ったヴァーリ。


「・・・・・これでケツ龍皇なんて呼ばれていなかったら尊敬できる」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!

 その名で呼ばないでくれぇえええええええええええええええええっ!』


「ルシフェル・・・・・」


「ふん・・・・・」


・・・・・この2人だけはどうにもならないな・・・・・。過去で何とかしないと。


「・・・・・まあ、それはそうとお前達にこの時代の俺達の神器、神滅具を渡そう。既に持っている奴も

いるかもしれないがお前達に相応の力だ。・・・・・悠璃」


コクリと頷き、悠璃の全身から数十の魂魄が出てきた。ヴァーリは手に持っていた槍―――

 『黄昏の聖槍』を曹操に渡した。


「俺が渡すよりお前が未来のお前の子供に渡した方がいいだろう」


「感謝する」


聖槍を受け取って曹操が1人の男に近づく。


「俺の未来の子供、曹丕。この神滅具最強の『黄昏の聖槍』を渡す。この時代の俺のように仲間を守る

英雄の子孫として生きていけ」


「・・・・・畏まりました。この曹丕、父上を超える存在と成ります」


その場で跪き、曹操の未来の子供、曹丕が聖槍を受け取った。すると、聖槍が神々しい光を輝かした。


「どうやら、お前を認めたようだな。今からこの聖槍の所有者はお前だ」


「はっ!」


「皆にそれぞれの神器と神滅具を渡すね」


そう言って数多の魂魄をクロノス達の体に入れた。そして、完全に自分の魂の一部と化と成って

クロノス達は胸を触った。


「・・・・・懐かしい、父さんの温もりを感じる」


「そうか、俺の神器『強奪』は相手の能力をコピーするか奪うと同等かそれ以上の能力を発揮する。もう、

俺が今まで奪ってきた能力は消去されただろうが、これからお前が新しい能力を手に入れ続けるんだ」


「ああ、皆を守れるような能力を手に入れる」


「・・・・・神器と神滅具は元に戻った。後は・・・・・この時代のアルビオン達だな」


俺は庭に赴く。外に出ると巨躯の体を持つドラゴン達が佇んでいた。


『過去の兵藤一誠・・・・・』


この時代の白い龍・・・・・二天龍のアルビオンが俺を見て呟いた。


「気分はどうだ?」


『・・・・・大丈夫だ、世話に成ったな』


「家族の仲間を助けるのは当然だって」


苦笑を浮かべて後ろに顔を向ける。俺達の時代のヴァーリがアルビオンの前に近づく。


『ヴァーリ・・・・・懐かしい姿だ』


「まだ俺は若いからな」


『過去のヴァーリよ』


「うん?」


『・・・・・頼むからケツ龍皇と呼ばれないようにしてくれ。今では白い龍、白龍皇の名が

「ケツ龍皇」、「白いケツ龍」と呼ばれ続けているのだ。・・・・・うううっ』


『―――うっ、ううううううっ!未来の私よ・・・・・!お前は、お前は大変だったのだな!その気持ち、

解る、解るぞ!「ケツ龍皇」と呼ばれて私の威厳が、二天龍の誇りが穢されていく

 その辛さは分かるぞぉおおおおおおおおおおおっ!』


・・・・・何て光景だよ。二天龍が人に深々と頭を下げて懇願するなんて・・・・・。過去のアルビオンも

同情して思いきり鳴き声を上げるし・・・・・。


「・・・・・気を付けるよ」


過去と未来のアルビオンが泣く光景と声を聞き、ヴァーリは本当に申し訳なさそうに言った。

そんなヴァーリに相変わらず厳しい視線を送るルシフェル。


「アルビオン、力を貸してはくれないか?」


『勿論だ。やられたままでは二天龍の名が―――』


『ケツとおっぱいの龍の間違いじゃないのかよ?』


『殺すぞ!グレンデル!』


『グハハハハハッ!』


『・・・・・私は誰に力を貸せば良い』


もう諦めモード全開だな!?本気で可哀想だよ!この時代のアルビオンは!


「ルシフェルに力を貸してくれ」


「・・・・・私だと?」


「お前は未来の俺の娘だからな。白龍皇の力を熟知している筈だ」


「・・・・・」


嫌そうな顔をするなぁ・・・・・。ケツ龍皇の娘という名前がルシフェルを根強く縛っているんだろう。


「お前しかいないんだ。白い龍アルビオンの力を振るって欲しい存在が。だから・・・・・頼む」


ヴァーリが深々と頭を下げた。滅多にしない事を俺達の前でした。さて、ルシフェルはどうする?


「・・・・・過去の父親がそこまでされたら断れない」


はぁ・・・・・と溜め息を吐いてルシフェルが折れた。


「いいよ。白龍皇になる。ただし―――」


鋭い視線でヴァーリを睨んだ。


「過去で『ケツ龍皇』なんて呼ばれないようにして。いずれお前が子供を作ってその子供が

『ケツ龍皇の子供』なんて言われたら可哀想だから」


「・・・・・気を付ける」


『・・・・・では、行くぞ』


話しは決まった。それをアルビオンは全身を白く輝かせて、光の奔流と化としてルシフェルに向かう。

白い光を全身に浴びるルシフェル。ルシフェルの全身を浴びる白い光が白銀の鎧と化となって

―――『白い龍の鎧』を纏った白龍皇となった。


「自分以外、白い鎧を纏う姿を見るのは不思議な気分だな」


『私もだ』


同じ白龍皇のヴァーリがジッとルシフェルを見詰めた。


「・・・・・そんなに見詰めないでくれる?気持ち悪い」


「・・・・・」


ヴァーリ・・・・・とことん嫌われているなぁ・・・・・。心なしかヴァーリが元気ないや。


「それじゃあ・・・・・次はファフニールだな」


「あっ、すみません。もう終わりましたよ?」


「・・・・・はい?」


龍牙に振り向くと龍牙と同じ金色の全身鎧を纏っていた存在がいた。確か・・・・・潤那だったな。


「この子もファフニールの力を、未来の僕が振るった力を受け継ぎたいと言っていましたからね。

未来のファフニールも了承しました」


「はいっ!過去のお父さんの言う通りです!」


男の声音が鎧から聞こえた。そうか、良い子に育ったんだな。・・・・・ルシフェルはしょうがないとして・・・・・。


「さて、こいつらはどうしようか・・・・・」


ある意味、こいつ等が一番問題だ。この4匹の邪龍達・・・・・。


「お前等はでかいから目立つな・・・・・」


『では、お前の中に我等を宿せば良い』


「いいのか?」


『言った筈だ。お前に従うと』


「ああ、そうだったな。それじゃあ、中に入ってもらうぞ。いずれ現世に出すからそれまで

俺の中にいてくれ」


『解った』


短く了承の言葉を言った瞬間、全身を輝かせて、光の奔流と化として俺に向かってくる。グレンデルたちも

光の奔流と化として俺に向かってくる。そして、光を浴びた俺の体の中に何かが入ったような感覚を覚えた。


『グハハハッ!此処も変わらないか!ま、どうでもいい事だがな!』


『うわっ、一杯増えたね・・・・・』


『主は良く、邪龍を宿しても平気でいられますね・・・・・感服致します』


『心が広いとか寛大とかそういうものではなさそうだな』


まあ・・・・・身体に異変が起きるよりはマシだな。


「残るは・・・・・お前達だな。この時代のゾラード、メリア、サマエル」


『過去の主・・・・・』


『懐かしい姿だねぇー』


『ええ、本当に・・・・・』


3匹のドラゴンが懐かしいそうなものを見る目で見つめて来る。


「お前達は・・・・・クロノス、フィリスの中にいてもらうか」


「俺達・・・・・?」


「ああ、問題は無いだろう?」


『そうですね、主の子供なら問題ありません』


『一匹だけ別になっちゃうけどね』


『それは私がなりましょう』


メリアが自分から買って出た。そう言ってくれると有り難いな。


『そういえば僕を宿しても大丈夫なのかな?』


「メリアかゾラードが一緒にいれば大丈夫だろう。俺もそうだったしな」


『そっか、過去のイッセーがそう言うなら、そうかもね』


『では、私はクロノスに』


『我とサマエルはフィリスだな?』


「クロノスには俺の力を全部コピーしてもらうとするか。ゾラードの無効化や浄化や他の能力が

必要と成るし」


「いいのか?」


「構わないさ」


「・・・・・それじゃあ」


クロノスは俺の肩を触れた。


「―――強奪」


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