小説『ハイスクールD×D改』
作者:ダーク・シリウス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


ドラグニル・グレモリー



冥界の空を覆い尽くすほどのドラゴンの集団。その集団の前に漆黒の龍の額に乗る紅の髪を持つ男が現れた。

その男をクロノスたちは殺意と敵意を隠す事も無く向ける。


「お母さま、お父さま。大丈夫ですか!」


「ドラグニル!どうして此処に・・・・・」


「帰ってくる時間なのにお母さまたちが帰って来ないのでどうしたのかと冥界に来たんだ!―――そしたら、

封印した筈の邪龍たちが街で暴れていて助けた住民に聞いたら『幽幻龍騎士団が復讐を!』と

教えてくれた!」


「それで、その邪龍たちを放っておいて此処に来たのか?」


「・・・・・兵藤一誠がもう1人?」


「俺は過去から来た幽幻龍騎士団、兵藤一誠だ。初めまして、この時代の成神とグレモリーの子供、

ドラグニル・グレモリー」


「過去・・・・・。じゃあ、この騒動は過去の幽幻龍騎士団が?」


「この時代の幽幻龍騎士団の復讐に協力したな。現に冥府と天界を滅ぼした。残りはこの冥界だけだ」


「・・・・・っ」


ドラグニルは拳を強く握りしめた。怒気を身体から発して一誠を睨んだ。


「この時代の幽幻龍騎士団によくもまぁ、色々とやってくれたな。恩を仇で返すグレモリー家が」


「違う!お母さまとお父さまは何も間違っていない!冥界を救おうとして戦ったんだ!俺もその1人だ!」


「人の事情はそれぞれだが、討伐に何も参加しなくても良いと思うぞ?」


「お前たちを討伐するのにどうしてもグレモリー眷属の力が必要だったんだ!幽幻龍騎士団に関わっている

悪魔、眷属、勢力を!」


「俺たちから三大勢力に攻撃を仕掛けると思ったのか?」


「上層部から討伐の令が発せられたんだ!『幽幻龍騎士団は余りにも力を持ち過ぎる。同盟を組んでいる

勢力が我々を脅かすほどの力を持ってはあってはならない事だ。さらに幽幻龍騎士団に力が集まるような事に

成り戦争を仕掛けられたら我々は太刀打ちできない。我々は何としても最悪な状況を回避すべくこれによって

幽幻龍騎士団を討伐する』。全ての原因はお前たちだぞ!」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


ドラグニルの言葉を聞いてこの時代の現魔王のサイラオーグたちに視線を向ける。


「で、当然お前たちは反対したんだろう?」


「当然だ。だが、上層部は前からお前たちを討伐する計画を企てていたようで俺たちが反対しようにも既に

準備を整えていたのだ。それも『魔王が冥界にいる全ての悪魔、眷属を率いて幽幻龍騎士団を討伐する』と

キャッチフレーズをして民を煽った。これでは反対も何も打つ手も無かったのだ・・・・・」


「事情は分かった。だが、俺たちに攻撃を仕掛けたからには覚悟をしていたはずだよな?」


「・・・・・ああ」


力無く頷くサイラオーグ。その様子にドラグニルが口を開く。


「魔王さま!いま、助けますから待っていてください!前のように俺が幽幻龍騎士団を討伐してみます!」


「お前が?俺たちを?」


「そうだ!そして既に―――」


アグレアスドームの会場に複数の魔方陣が現れた。その魔方陣はドラゴンを召喚する『龍門』であることに

一誠たちは気付く。魔方陣が一瞬の閃光を弾いたその瞬間。


ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアァアアアアアアァッ!


ギェエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!


冥界の街に暴れていた筈の邪龍たちが現れた。不敵の笑みを浮かべてドラグニルは声を張り上げる。


「お前たちの邪龍どもは俺が支配させてもらった!もう一度、あの時のように倒してやるよ!」


「ドラグニル・・・・・ッ!」


「俺に直接攻撃はできないだろう!なにせ、一万のドラゴンを従えているんだからな!」


そう言ってドラゴンを模した笛を発現して吹きだした。その様子にこの時代の幽幻龍騎士団に焦心に

駆られる。特にこの時代のガイアが慌てだす。


「まずい!あの笛の音色を聞いてはならない!―――ゾラードたちが召喚されるぞ!」


『ぐっ・・・・・!?な、なんだ・・・・・頭が・・・・・!』


『これは・・・・・!意識が奪われ・・・・・!』


『い、嫌だ・・・・・!身体が・・・・・勝手に・・・・・!』


『俺を支配するだと・・・・・・!?ふざ・・・・・けるな・・・・・!』


一誠の中にいるゾラードたちが驚愕、苦悶の声音を発する。しかし、一拍すると声が聞こえなくなった。


「ゾラード、メリア、サマエル、アジ・ダハーカ・・・・・・?」


「くそ・・・・・!また、またあの時のようにやるのかよ・・・・・!」


この時代の一誠も自分の中にいるドラゴンの声が聞こえなくなった事に苛立ち、怒る。さらに過去の

幽幻龍騎士団にいるアルビオン、ファフニールを宿しているヴァーリと龍牙の表情に驚愕の色が染まった。


「さあ、出でよ!幽幻龍騎士団のドラゴンたちよ!」


カッ!


ドラグニルの声に呼応するかのように複数の魔法陣が展開した。光輝く魔方陣が光を弾いた次の瞬間―――。


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


過去と未来のゾラードたちが現れた。


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


「また倒してやるよ・・・・・幽幻龍騎士団!今度は過去の幽幻龍騎士団を倒してこの時代の幽幻龍騎士団を

抹消してやる!冥界を救うんだ!お母さまとお父さまを助けるんだ!」


「・・・・・あー、悪いな?」


「・・・・・?」


「取り敢えず、お前の神滅具を攻略させてもらおうか」


一誠が指をパチンと鳴らした。一拍してアグレアスの上空に巨大な穴が現れた。すると、

巨大な穴からゆっくりと巨大な大地が降りてきた。


「・・・・・あれは」


「俺たちの・・・・・家」


この時代の一誠たちが巨大な大地を見て呟いた。―――巨大な大地から二つの影が降りてきた。

一誠たちの前に二つの影が華麗に着地したと思えば・・・・・マッスルポーズを決めた。


「うっふ〜ん!麗しの踊り子の貂蝉ちゃん、参上!」


「がっはっはっは!皆の巫女の卑弥呼も降臨じゃ!」


「なっ・・・・・!?」


2人の登場に目を見開くドラグニル。その様子を見て不敵の笑みを浮かべる。


「えっと、この時代の貂蝉と卑弥呼はいるか?」


「ええ!ここにいるわん!」


「ワシらに何かようかの?過去のダーリンよ」


「ああ、お前たち4人にしてもらいたい事がある」


また指を鳴らした。一誠の手のひらに魔方陣が現れて何かが出てきた。


「・・・・・マイク?」


貂蝉はポツリと呟いた。一誠は頷いて「4人に歌って欲しい」と頼んだ。


「・・・・・ご主人様、どうして私たちに歌って欲しいのかしらん?」


「頼む。お前たちの歌がゾラードたちを解放するかもしれない鍵なんだ」


「「「「・・・・・」」」」


「よし、成功したらお前たちの為に俺の等身大をプレゼントしよう」


「「「「引き受けた!」」」」


報酬に釣られた4人。邪悪な笑みを浮かべて整列する。一誠は悪魔が使っている立体映像機器を置いて

話し掛けてきた。


「歌は過去の貂蝉と卑弥呼が歌って来た曲を流す。熱唱して歌ってくれよ」


「「「「了解!」」」」


「それじゃあ、流すぞ」


機器のボタンを押すと空中に大きく映像が映し出される。そして、曲が流れだす。過去と未来の貂蝉たちは

ノリノリでその曲のリズムに乗って―――歌いだした。魂を燃やして、心を震わせて、4人は歌い、踊り、

完全熱唱をする。


「いやあああああああああああああああああああああああああっ!」


「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


「あ、頭が・・・・・!頭が・・・・・!」


「あー、久々にあいつ等の歌を聞くな・・・・・俺たち、本当に甦ったんだな」


「何か足りないと思ったらそうだ、これだった・・・・・」


未来のリアスたちが耳を、頭を押さえて苦しみ見悶えるが、未来の一誠たちが苦痛を感じるどころか

懐かしそうに歌を聞いている。


「ぐううううううううううううううううっ!な、なんて歌だ・・・・・!今まで聞いた事もない・・・・・!」


ドラグニルも耳を押さえて耐えていた。目も貂蝉たちの踊りを視界に入れないように瞑っていた。しかし、

耳の中に入り脳裏に何度も貂蝉たちのねっとりとした声がリフレインされる。だが、苦しんでいるのは

ドラグニルだけではなかった。ドラグニルに支配されているドラゴン、特にゾラードたちが頭を押さえて

苦しみ、苦痛によって暴れ出していた。―――蹲っていたグレンデルが突然、勢いよく立ち上がり


『―――いい加減にその声を止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!』


ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


激怒して思いきり歌っている貂蝉たちに殴った。


「「いやあああああああああああああああああああああああああああん!」」


「「あんまりなのじゃああああああああああああああああああああああああああああっ!」」


上空へ吹っ飛ばされ星と成った過去と未来の貂蝉と卑弥呼。肩で息をするグレンデルはギロリと

一誠を睨み怒鳴る。


『おい!てめぇよくも酷い音を聞かせてくれたなぁ!?頭がカチ割れるかと思ったぞ!

踏み潰してやろうかぁ!?』


「うん、それについては悪いと思っている。でも―――目を覚ましたか?」


『ああ?・・・・・なんで俺が此処にいるんだ?』


街で思う存分に暴れていた筈の自分がアグレアスにいる事に気づき首を傾げる。


「お前、また操られていたぞ?」


『・・・・・ああ、そういや・・・・・。―――ガキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!』


「っ!?」


思い出したのか更に怒りだして背後にいるドラグニルに振り向いた。支配していた筈のドラゴンが

自分の意を反した事に驚愕したドラグニル。


『てめぇ、性懲りもなくまた俺を支配しやがって覚悟はできているんだろうぁあああああああああああっ!』


ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


怒り狂い、ドラグニルに突貫する。


「な、何でだ・・・・・!?俺の、神滅具の能力は確かに発揮した筈だぞ・・・・・!」


焦心を抱きながらも周囲にいるドラゴンを自分に向かってくるグレンデルを襲わせる。数匹のドラゴンが

グレンデルの身体を押さえつける。―――しかし、相手は。


『邪魔くせぇぞ!クソがあああああああああああああああああああっ!』


『大罪の暴龍』の名に恥じない動きをする。自分の体に纏わりつく一体のドラゴンの頭を掴むと力任せに

引いて頭と体を分離させる。大きく口を開いてドラゴンの頭を強靭な顎で噛み砕く。拳をドラゴンの顔面に

突き出して頭蓋を砕く。翼を引き千切り、腕を引き千切り残虐な光景を繰り広げる。


「ば、バカな・・・・・!いや、また支配してやる!」


ドラグニルはドラゴンを模した笛に息を吐いて音を出す。―――だが、


『うるせぇええええええぞぉおおおおおおおおおおお!ガキィイイイイイイイイイイッ!』


巨大な火球を吐きだした。ドラグニルに来る火球は複数のドラゴンたちが吐き出した火球で相殺したが、

信じられないものを見る目でポツリと呟いた。


「・・・・・どうしてだ・・・・・。神滅具が、『ドラゴンを呼ぶ笛』が効いていない・・・・・?」


『てめぇが吹く度にあの気持ち悪い声が思い出すんだよ、クソが!まだ頭ん中が気持ち悪い声で一杯だぞ!』


頭を何度も振るいながらグレンデルは苛立つ。その言動にドラグニルは予想した。


「・・・・・まさか、『歌』で支配の音色を掻き消しているのか・・・・・?」


「―――その通りだ、ドラグニル」


一誠がしてやったりと唇の端を吊り上げてドラグニルに話し掛ける。


「ぶっつけ本番だったけど成功して安心した。ドラゴンを鎮めるには『歌声』だ。でも、二天龍はともかく

邪龍の歌なんてないから悩んだが・・・・・貂蝉たちの歌でまさか正気を

取り戻す事ができたとはな・・・・・」


視線を他の邪龍たちに向けるとギロリと睨みつける邪龍たちがいた。過去と未来のゾラード、メリア、

サマエル、アルビオン、ファフニールも正気を取り戻した。


『ひ、久々に聞いたけど・・・・・酷いよ』


『しかし、あの歌で助けられたのは変わりない』


『我等の歌があれだと思うと・・・・・悲しいです』


「さて、ドラグニル。お前の支配はこいつ等にはもう効かないぞ。―――覚悟しろ」


「っ・・・・・だが、俺にはまだ一万のドラゴンがいる!この数のドラゴン相手にお前たちは勝てるのか!?」


「過去の俺たちが何も準備もせずにこの時代に来たと思うなよ?相手がドラゴンなら対策はできる」


「な、なんだと・・・・・!」


「こっちには『龍喰者』サマエルがいるんだ。それに邪龍、天龍、龍王、神、魔王・・・・・数が

圧倒しているのなら他の方法で補えばいい」


一誠が魔方陣を展開する。すると、魔方陣から一本のドス黒いオーラを放つ槍が出て来てそれを掴むと

思いきり一体のドラゴンに向けて投げ放った。


―――ドスッ!


『ッ!?ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』


槍がドラゴンの身体を貫いた瞬間、苦痛が籠もった悲鳴を上げると地上に落下した。その光景をドラグニルは

一誠に叫ぶように訊く。


「何をした!」


「毒さ。それも『龍喰者』サマエルの毒と血で作った槍をドラゴンの体を貫くか、

体の中に入れればどうなるか・・・・・分かるよな?」


「・・・・・っ!?」


「サマエルの血はドラゴンと蛇に属する生物を死に至らしめる力がある。―――全てのドラゴンと蛇にとって

サマエルは究極の天敵だ。たかが一万のドラゴンじゃあサマエルの前では塵芥に等しい」


「―――行けッ!」


ドラグニルが前に腕を突き出してドラゴンたちに指示を出す。それに呼応して

次々と一誠たちに向かって行くドラゴンたちだが・・・・・。


「死ね」


一誠の背後に巨大な魔方陣が展開した。魔方陣から何十、何百、何千のドス黒く禍々しいオーラを放つ槍を

間も置かずガドリングガンのように放った。サマエルの毒と血で作られた槍がドラゴンたちの身体を

貫通したり刺さったりした瞬間、悲鳴を上げて次々と地面に墜落して絶命する。


「く、くそ・・・・・!だったら、お前の大事な家族を殺してやる!」


ドラゴンたちを一誠から過去と未来の幽幻龍騎士団に攻撃するよう指示した。


「やってみろ。だがな―――」


「我、目覚めるは」


『さあ、行こう!』 『行くぞ!』


「神に認められし二天龍なり」


『我等は、神に認められし天龍!』 『そして、白龍皇なり!』


「無限と共に生き夢幻と共に歩み」


『友と共に歩み!』 『友の敵を屠る為に!』


「我、無垢な真なる白龍神皇と成りて」


『我等は、真なる力を持って!』


「「「「「「「「「「汝を白銀の光輝で鎮めよう」」」」」」」」」」


『白銀の極光龍変化!!!!!』



「我、白龍皇を継ぐ者。我は天龍の力を振るい我の敵を白銀の極光で滅ぼす。我は天龍の力を振るい救済を

求める者に救済の光を注がん。我は白龍皇を継ぎ新たな未来へと導く純真の真なる白銀の白龍神皇と成りて

我は共に歩む者たちと進む!」


カッ!


「真なる白銀の極光龍神帝!」


ヴァーリとルシフェルが呪文を唱え龍と化となった。未来の匙も龍王変化し、ヴリトラになる。


「俺たちの家族は簡単には負けないぞ!」

-185-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D 13【BD付限定版】 イッセーSOS (単行本)
新品 \0
中古 \9915
(参考価格:\4725)