小説『傍観者』
作者:瑚蝶()

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(二人目)


少年はこんな世界を見ていたのだろうか?
私の二つ下の少年はこんな苦しい世界を見ていたのだろうか。
醜い世界。
人同士で殺し合い。金のために人を殺し平気な顔で人生を生きている。
本当に醜い世界。
私もそろそろ檻から出よう・・・。
少年と同じ祭壇から。
きっと、ここが檻だと知らない者は「逃げている。」とか「卑怯者。」だとか言うだろう。
けど私はここで罪人として生きている方が逃げていることだと思う。
私は世界に絶望した。
階段を上りながら私は今までのことを思い直す。私の後をついて来る者はちゃんといるこれで少年が行った事と一緒だ。
私は祭壇に上る。
少年も見ただろう底見えぬ闇が今目の前にある・・・
私の顔が笑みを浮かべるのが分かった。
カツッ
後をついて来た三番目の傍観者が屋上に着いたのと同時に私は振り向き
「さよなら。穢れた世界・・・」
と少年と同じ一言を残し落ちた。
二番目の傍観者は消えた。
底見えぬ闇に・・・

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