小説『真剣で私たちに恋しなさい!』
作者:黒亜()

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―チャイルドパレス


「それじゃあ、作戦通り頼みますよ。板垣三姉妹、釈迦堂さん。」

「へへ、任せな。」

「ところで竜兵はどうしました?」

「それが調子が悪いみたいでね。何があったか聞いても答えないのさ。まあ
外にも出てないみたいだから、不調は本当なんだろうが…」

「手数は減りますが、仕方ないですね。あとはこれを持っていってください。」

「これは……!」

「作戦に必要なんですよ。別に常に持っていなくとも、前のビルの屋上にで
も置いておいてください。あとはこのストラップも。」

「随分と用意周到だねぇ。」

「打てる手は打ちませんと。では、手はず通りに。」


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―廃ビル前


「どう?姉さん。」

「ビルの中から複数の気を感じるな。やはり大和の言うとおり、待ち伏せで
間違いないだろう。」

「へぇ、さっすが軍師。けどなー。」

「でもねー。」


翔一とモロが余裕の笑みを見せる。


「ああ、こっちには姉さんがいる。俺たちの勝利には間違いない。」


どんなに人数がいても、最強の武神の前では問題ないのだ。
まさに勝利は約束されているようなもの。


「相手はこっちを罠にかけてるつもりだろうが、逆にこっちで待ち伏せして
る奴らを潰せばユートピアの防止にも貢献できる。さらには、捕虜でも1人
囲って情報を吐かせることもできる。俺たちが利用してやろう。」

「おぉー!」

「じゃあ、最後の作戦確認だ。あの敵が沢山集まっているなかに姉さんが突
入する……終了です!!」

「ああ、軽くひねってきてやろう。久々に暴れられる、フフフ。」

「お姉さまもやる気だし、心配ないわねー。」

「言っとくけど、万が一何事もなく情報をくれそうだったら、暴れちゃだめ
だからな姉さん。」

「分かってるよ、あくまで相手が仕掛けてきたらだろ?」

「まあ心配しなくても確実にくるから。」

「でも逃げられたらまずいんじゃない?」


モロが疑問を口にするが…


「そこで仕事なしの俺たちの役目だ。」

「姉さん以外のメンバーはこの出入り口を塞いで、出てきた奴を叩く。都合
良く、このビルは裏口もないしな。出入り口はここ1つだ。」

「もしものときには私たちが戦います。」

「大和は私が守るから、安心してね。」

「正義のもとに一人も逃がしはしない。」

「アタシたちに任せて!」


頼もしい女性陣だった。


「じゃ、ぶち壊してこよう。」


川神百代はビルに入っていった。


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中には想像よりもずっと多い人間。
男女問わず、柄の悪い者ばかりが揃っていた。
中にはクスリで正気を失っている目をしている者も。


「やはり暴れられそうだな。」


侵入者を確認した輩は一斉に襲い掛かってきた。


「さあ、楽しいゲームの始まりだ!!!」


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ギャー  ウワー


「あーあー、中から悲鳴が聞こえてくるぜ。」

「姉さんが派手に暴れてんだろ。やっぱり罠だったか。」

「でも、流石モモ先輩。今のところ1人も逃げてきてないぜ。」

「僕たちの出番はなさそうだね。」


もはや勝利ムードの男性陣。
川神百代が味方だということはそれだけで1つの勝利条件なのだ。
しかし…


「よぉ。」

「っ!いつの間に!」


いきなり前に現れた全身フード。
由紀江が咄嗟に前に出る。


「バンダナの男…風間翔一ってのはアンタでいいのか?」

「ああ、俺だ。」

「へっ、お前さんを潰しに来たぜ。」


次の瞬間、辺りは殺気に包まれた。
そして、風間翔一に向かって突き出された拳は由紀江によって受け止められ
ていた。


「ほぉ、なかなかやるねぇ。お嬢さん。」

「やらせません。」

「まゆっち、アタシたちも加勢するわ!みんなでかかれば…!」

「一対一で戦う余裕があればいいがな。」

「おい!こっちにすげぇ数の不良が向かってきてるぞ!!」

「そういうことだ、さーてどうする。」

「ちっ、さっさとその強い奴を撃破して、不良に対応するぞ。」

「分かったわ。」


由紀江と全身フードが交戦する隙をついて、一子が仕掛ける。
最高のタイミングで非の打ちどころはなかった。
しかし、それは阻まれる。


「残念だねぇ。」

「新手!?]


攻撃をいなされた一子は棒ではじかれる。


「犬、大丈夫か!」

「よそ見してるヒマはねーぜ。」

「なっ…!」


ガツンとクリスの頭に衝撃が走る。
その凶器はゴルフクラブ。


「これ以上好き勝手させない。」


ヒュッと京が弓を射る。
それはまるで軌道を決められているかのように相手の元へ飛んだが…

パシッ


「うぁーあー、危ないー。」


最速で飛ぶ弓は人の手によって掴まれ、折られてしまった。


「援軍が三人も…しかも全員が強い…」

「私らは板垣三姉妹。反撃開始だよ。」

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