ロモス到着!!あッ!?偽勇者一味!!?の巻
≪SIDE:ハドラー≫
「何!?クロコダインが……!」
『はい。負傷し、退却しました』
悪魔の目玉の報告で、俺はクロコダインがエイトに敗退した事を知った。
「むぅ……クロコダイン1人では荷が重かったか。エイトは、この魔軍司令ハドラーをも傷つける力の持ち主……やはり、一筋縄では……」
『いいえ』
「ん?」
『クロコダイン様に手傷を負わせたのはエイトではありません』
「何だと!?では、一体何者がクロコダインを退けたというのだ!?」
『この少年です』
そう言うと悪魔の目玉は、眼球部分に映像を映し出した。映ったのは、青い服を来た年の頃10を過ぎた辺りと思しき、人間の小僧だった。
「ば、バカなッ!?あの“獣王”クロコダインが、こんなチビにやられたというのか……!!?」
いや、待てよ……?このチビには見覚えがある。
そうだ!デルムリン島に赴いた時、アバンの傍で喚いておったガキ共がいた。こやつはその内の1人だ。
という事は……もしや!?
「おい!このチビとクロコダインの戦闘の場面を見せろ!!今すぐにだッ!!」
『は、はいッ!』
悪魔の目玉が、記録していたチビとクロコダインの戦闘を映し出す……。
それを見て、俺は確信した。こやつが使う剣技、あれは正しくアバンが使っていた技だ。つまり、このチビは唯のガキではなく、アバンに教えを受けた雛鳥……すなわち“アバンの使徒”!
そう考えれば、油断していたクロコダインが隙を突かれて負傷したというのも幾らか納得がいく。
「だが……どちらにせよ、馬鹿な奴だ!!」
如何に相手が“アバンの使徒”であろうと、所詮は未熟者に過ぎぬはず!にもかかわらず、油断して負傷した挙句、逃げ帰るとは何たる様だ!!
「ぬうぅぅ……ッ、まあいい……」
過ぎた事をつべこべ言っても始まらん。物は考え様だ……これでクロコダインも、今度こそ油断なく本気で向かっていくだろう。
「……しかし、ちと厄介な事になった」
エイトだけでも厄介だというのに、そこに未熟とは言え“アバンの使徒”のガキまでが我が魔王軍に楯突くとは……。
これを切っ掛けに人間共が勢いづく様な事があれば、ここまで順調に進行していた世界征服の計画に遅れが出るやもしれん。
「……考えておかねばならんな」
全軍団長を招集する事を――。
≪SIDE:クロコダイン≫
「グワアアアアアアアアアッッッ!!!」
屈辱……!!
「ヌオオォォォッッッ!!!」
屈辱……!!屈辱だ……ッ!!!全身を業火に焼かれる様な怒りが迸る……。
あのダイとか言う小僧に不覚を取り、俺は根城に戻ってきた。奴に裂かれた首元の傷はすぐに塞がったが、未だにジクジクと疼き続け、この俺に敗北の現実を突きつけ続ける。
「グゥゥゥ……ッッ不覚ッ!!」
未だに疼き続ける塞がったばかりの首元の傷跡を押さえた。
「ハァ……ハァ……如何に油断していたとは言え、如何に予想外の強敵だったとは言え、あのような小僧に手傷を負わされるとは……!!」
ダイとか言ったか、あの小僧……!かつて魔軍司令ハドラー殿を打ち倒した勇者アバンに教えを受けた“アバンの使徒”……如何に仲間の助力があったとはいえ、この俺に油断があったのは事実!!
仮にも“獣王”と異名を取るこの俺が、あんなチビ助に……!!
「クッ……おのれぇッ……!!」
このまま引き下がっては“獣王”の名折れ!武人の誇りに懸けて、この借りは必ず返さねばならん!!
今度こそエイト諸共、ダイをこの手で葬ってみせる!!
「ッ!悪魔の目玉ぁッ!!」
『は、はいッ!』
「奴らの行方は分かっているかッ!?」
『はいっ。ネイル村を出発し、現在、森の北北西へ向かって進んでおります。恐らくロモス城を目指しているものかと……』
「やはりか……!」
奴らと一戦交えてから1日が経っている。おおよそ予想通りの進路だ。
ならば、寧ろ好都合というものだ……ロモス城に攻め入れば、ダイもエイトも必ず姿を現すだろう。
恐らく、今日の夜か、どんなに遅くとも明日にはロモスに到着するはずだ。
「……よぉし!」
明朝、ロモス城に『百獣魔団』の総攻撃を仕掛ける――!
「グフフッ……決着をつけるぞ、ダイッ!!」
≪SIDE:OUT≫
マァムが加わった俺達一行は、意気揚々と魔の森をロモス城目指して進んだ――。
ちなみに、俺がコマンド画面で確認したマァムの現在のステータスはこんな感じだ。
―――――――
マァム
性別:女
レベル:20
―――――――――――――
Eハンマースピア(攻+20)
E布の服(守+4)
魔弾銃
魔法の弾丸×10
―――――――――――――
力:36
素早さ:36
身の守り:18
賢さ:47
攻撃力:56
守備力:22
最大HP:98
最大MP:86
Ex:37559
―――――――――
マァム
HP:98
MP:86
Lv:20
―――――――――
ホイミ ベホイミ
キアリー キアリク
ザメハ
―――――――――
中々のものだが、やはりこの先魔王軍と戦うとなると、更なるレベルアップが必要になるだろう。
まあ、それは追々……。
俺達はマァムの案内で、クロコダインやその手下がいそうな場所を避け、道無き道を行く。
ある時は薮を踏み分け――
「痛っ!?も、もう少し、まともな道は無いのかよ〜……!?」
「まともな道は、昨日の怪物が見張ってるかも知れないから危険よ」
ある時は崖を登り――
「ハァ、ハァ……な、何も崖なんか登らなくても……んっ?」
下を見るポップ、下には登るマァム。ちなみにダイはさっさと登り切り、俺は『トベルーラ』でゆっくり上昇中だ。
「ぼ〜……」
ボコ!
「あっ!?ああぁぁ〜〜……!?」
ひゅ〜〜……グシャ!!
あ、落ちた。何やってんだか……。
とりあえず気絶したポップの足を持って昇り直し、途中でマァムにはシャツのボタンをちゃんと閉める様に言っといた。
またある時は薄い獣道を進み――
「ねえ、兄ちゃん」
「あん?」
「“ぱふぱふ”って知ってる?」
「「なッ!?」」
その後、俺とマァムはポップを張り倒した。あいつ以外に、ダイにそんな事を教えるバカはいねえ!
ちなみに、ダイには「18歳になったら、教えてやるから」と言って誤魔化しておいた……。
そうこうしている間に日が暮れ、夜になった――。
「お、お〜いッ……ま、待ってくれよ〜!ハァ、ハァ……夜になっちまったじゃねえかよ、まだ着かねえのか〜?ヒィ、ヒィ……もう野宿はごめんだよ〜、腹も減ってきたしよ〜……」
「うるさいわね、ブツブツと……!」
マァムが腰に手を当ててポップを睨む。
「ハァ、ヒィ……マァム、道に迷ったんじゃねえのかぁ?さっきから同じ所ばかりを歩いてる様だぜ〜?」
「敵に見つからない様にワザと遠回りしてるんだから、しょうがないでしょ!」
ちなみにここまでのルートは全てマァムが案内してくれた。流石に土地の人間だけあって、魔の森でモンスターと遭遇し易い道とし難い道をよく知ってる。おかげでここまで、モンスターと全く遭遇せずに来れた。
「だけどよ〜……」
まだ何か不満を言おうとするポップ。見兼ねて俺は口を出した。
「ポップ、いい加減にしろ。マァムのおかげでここまでモンスターに襲われずに来れたんだ。それともまた、あの“獣王”クロコダインとでも出遭したいのか?」
「ッ……!!ご、ご尤もで……お任せしま〜すっ」
と、ポップには言ったものの……ここで遭遇を避けたところで、クロコダインとはこの先必ず戦う事になる。そもそも俺は魔王軍に狙われている身だし、ダイもクロコダインに傷を負わせた事で奴に目を付けられただろう。
おまけに、奴が指揮する百獣魔団という軍団はロモス王国を攻めている。
そして、俺達がロモスに向かう目的も、魔王軍と戦う為だ。
対決は避けられない――。
「…………」
ダイはどうやら、その辺りの事をちゃんと分かっている様だ。頼もしい顔をしている。
「ピィー!ピピィーー!」
先に様子を見に行ったゴメが帰ってきた。
「ピピッ、ピィピピィ!」
「っ!ゴメちゃんが、『町の明かりが見えた』って!」
「抜けた様ね!」
「やったぁーー!!」
俺達はゴメが先導する方へ向かって走った――。
少し行くとすぐに森が切れ、明かりが灯る町と、その先の小高い丘の上に立つ城が目に飛び込んでくる。
半日以上掛かったが、俺達は漸くロモスの城下町に辿り着いた……。
「や、やったぁ……!やっと着いたぜ!さあっ!早くお城へ行こうぜえっ!!」
「なによ、さっきまでグデ〜っとしてた癖に……」
「フフフッ!」
現金なポップに呆れるマァムと、微笑ましげに笑うダイ。
「いざ、ロモス城へっ!GO!GO!!」
「待て」
「っとと、なんだよ〜?」
俺が止めると、飛び出そうとしたポップが半目で見てくる。
「城に行くのは明日だ。今日は町の宿屋に泊るぞ」
「ええ〜!?そんなぁ!せっかく苦労して辿り着いたってのに、そりゃねえよ!!」
「こんな時間に城に行ったって、王様に謁見なんかできる訳ないだろう。明日、明るくなってから改めて訪ねるんだよ」
「大丈夫だって!こっちには王様の知り合いのダイがいるんだからさ〜」
「知り合いだろうと何だろうと、夜寝てるところをこっちの都合で叩き起こすのは礼儀に反するんだ!いいから来いッ!宿屋を探すぞ!!」
埒が明かないので、俺は有無を言わさずダイ達を連れて城下町へ下りた――。
「あ〜あ〜、今日こそお城の温か〜いベッドで寝れると思ったのになぁ〜……ブツブツブツ」
「城は宿屋じゃねえ!何考えてんだ!?お前は!」
ボカッ!
「痛ぇッ!?」
反射的にポップを殴った俺はきっと悪くない。不敬にも程があるだろう……どういう神経しているんだ?こいつは……。
「あっ、ほら!宿屋があったわよ」
言われて振り向くと、マァムが指差す先に『INN』の看板が掛かった大きめの建物――うん、正しく宿屋だ。
「いらっしゃいませ。こんな遅くまでご苦労ですな」
宿に入ると、店主と思しきオッサンが出迎えてくれた。
「4人で泊まりたいんですが、部屋、空いてます?」
「はい。4名様ですね、一晩20ゴールドになりますが、よろしいですかな?」
「じゃあ一晩、お願いします」
支払いは俺が持つ。何しろ、ゴールドは余っているからな。懐から財布を出し、20ゴールドを受け皿に置く。
しかし、4人で止まっても20ゴールドだなんて、この世界の宿賃は安いにも程がある。メシも風呂も別料金だが、全部込みにして最高級の部屋とサービスにしても1人100ゴールドに届くかどうか――安くて気軽に泊まれる。
「へえ、値段の割には結構良い宿じゃん」
ポップが言う通り、この宿は内装も綺麗だし、ちゃんと掃除もしているらしく清潔感がある。
「それではお部屋にご案内します」
店主自ら俺達を部屋に案内してくれる。
ちなみに、こういう時の対応は宿屋によって違う。ホテルマンが案内したり、鍵だけ渡して客に自分で部屋に行ってもらう場合もある。
「えっ、魔王軍と戦っている……!?」
「うんっ!!」
世間話的に旅の目的を聞かれ、ダイが素直に答えた。
「そうそう。ま、言ってみりゃオレ達は、“勇者様ご一行”ってわけよ」
「まだまだ見習いもいいトコだけどな」
「な、なんだよ!そりゃないだろっ!?」
俺のツッコミにポップが喚くが、事実なんだから仕方ない。
その時、店主から意外な事実を告げられる。
「そりゃあまた奇遇な……。実は、もう1組勇者様達がお泊りになっておられるんですよ。今、この宿に……!」
「「「勇者ぁっ!?」」」
「本当!?」
図らずも俺とマァムとポップの声が重なり、ダイが目を輝かせる。
「ええ、あそこの部屋です」
勇者って、アバンさんな訳ないよな?あの人は、修行の旅に出たんだから……。そりゃあ、確かに勇者なんて名乗ったもん勝ちって感じがしないでもないが……誰でも彼でも名乗っちまうのは、どうなんだろうな?
「よぉしっ!」
「あっ!」
ダイが駆け出す。きっと、勇者とやらに会って話をしようとしているんだ。
「おい、よせダイ!もう遅い時間だ、明日にしろ!」
「いいじゃん!ちょっと挨拶するだけだよ」
俺の止めるのも聞かず、ダイは勇者とやらが止まっているドアを叩く。
「勇者様〜!勇者様〜!」
「おいっ!?ったくぅ……」
しょうのない奴だな……。
『なんだ!?誰だ、こんな時間に……!』
中から聞こえてきたのは、若い男の声……しかも、何となく感じの悪い声だ。
「あのっオレ、勇者様に会いたいな〜と思って!」
『帰れ帰れ!オレ達は昼間、モンスターどもとの死闘を繰り広げておるから、とっても眠いのだ!』
「むっ……ちょっとくらい会ってくれてもいいじゃないですかぁ!」
『だめだ!サインだったら、明日してやるから……!!』
サインだぁ?何か様子が変だな……。
『何よぉ?何の声?』
今度は女の声か……しかも、やっぱり感じの悪い声だ。
『妙なガキがうるせえんだよ……』
ははぁん、これはアレだな……勇者の名を騙ってデカイ面してるチンピラだな。時々いるんだよなぁ、こういう馬鹿な奴らが。
「ダイ、もうやめとけ。ここに泊ってるのは、自称・勇者の一行だ。会う価値なんかねえよ」
「う、うん……でも、どっかで聞いた声なんだよなぁ……」
「聞いた声?」
「うん……」
そう言うと、ダイは何を思ったのかドアを激しくノックし始めた。
「ねえ勇者様〜〜ッ!勇者様〜〜ッ!!勇者様ってば〜〜〜ッッ!!!」
バタンッ!
「だあああッ!!うるさぁいッ!!」
中から叫びながら出てきたのは、ドラクエ3の勇者風の格好をした目付きの悪い若い男だった。
「あっ!」「へっ?」
ダイとその男はお互いを見合うと――
「「あああ〜〜〜〜ッッ!!?」」
同時に驚いた風に叫んだ。
「“あの時”の偽勇者ッ!!」
「かっ、かっ、かかっ!怪物小僧っ!?」
偽勇者?怪物小僧?何なんだ?一体……ダイとその男が知った顔同士なのは、何となく分かったが……。
「あ〜〜ん?」
さっきの女の声が聞こえて部屋の中を見てみると、これまたドラクエ3の僧侶風の女・魔法使い風のジジイ・戦士風の男の3人がテーブルでトランプをやっていた。
共通しているのは、全員が小悪党面――女は品がない、ジジイは胡散臭い、男は禿げゴリラ――そして、一様にダイの顔を見て目を剥いた事だ。
「げえ〜〜ッ!!?」
「うわわわぁ〜ッ!?」
「ぎゃああ〜ッ!?あの時の小僧ッ!!?」
女、ゴリラ、ジジイの順に騒ぎ出す。
「お前らぁッ!まだこの町にいたのかッ!!」
「「「「ひええ〜〜っ!!?」」」」
ダイに一喝されると、4人は情けない声を上げて腰が抜けた様に窓際まで後退った。大の大人が揃いも揃って怯え様が尋常じゃないぞ?ダイの怒り様も同じく……。
「ダイ、落ち着け。一体どうしたんだ?そんなに興奮して……何なんだ、こいつらは?」
「こいつら、勇者様の名を騙る悪者なんだ!!」
まあ、そんな事だろうとは思ったが……待てよ?確か少し前に、デルムリン島が偽勇者に襲われたって話があったな……。
「ダイ、もしかしてこいつら……前に言ってた、ゴメを攫ったっていう悪党共か?」
「そうだよ!エイト兄ちゃん!」
「やっぱりそうか……」
そうと聞いちゃあ、俺も良い顔は出来んな……。
「今度はどんな悪い事をしてるんだ!?」
「ま、待て!オレ達はもう悪事からは足を洗ったんだ!!」
「そ、そうそう!今ではちゃ〜んと罪を清算してぇ、真の勇者を目指すべく頑張ってるんだから!」
偽勇者と女が媚びる様な笑顔でそんな調子のいい事を言ってくる。が、勇者と名乗ってこの宿に泊まっている時点で、まるで反省していないのは一目瞭然だ。
「頑張るって……何してるんだよ……?」
「そ、それは、だな……例えば……」
ダイが聞くと、連中は少し考え込むと語り始める。
「自分よりなるべく弱いモンスターを倒して、褒美を貰うとか……」
「魔王軍にやられたお城へ言って、片っ端から宝箱を開けるとか……」
「あと、適当な呪文を城の兵士達に教えるのも結構良い金になるんじゃわい」
「そうそう!強いフリして用心棒になって、強い敵が来たら1番に逃げ出して……と……」
「「「「…………」」」」
呆れて物も言えない……良く聞く言葉だが、まさか自分でそれを実体験する日が来るとは夢にも思わなかった。多分、ダイ達も同じ様なもんだろう。
「まあ、頑張ってるって言っても、こんなもんかな?」
「「「「アハハハハ〜〜!」」」」
「なんだよッ!!それじゃ昔やってた事と殆ど変らないじゃないかぁーーッッ!!!」
ダイが激怒するのも無理はないが、俺はもうどうでも良くなった……。こういう善人にもなれず、真の悪にもなり切れない中途半端な小悪党は、どこにでも多かれ少なかれ必ずいる。
相手にする気にもなれない。
「ダイ、もう放っとけ」
「エイト兄ちゃん!でもさぁ!」
「こんな奴らに何か言うだけ時間の無駄だ。相手にするな。それよか、俺達も部屋に行って休もう」
実際、朝ネイル村を出発してから歩き通しで、体力を消耗している。ぐっすり眠って、心身ともに休まないと。
「さっ、ダイ、行くぞ」
「……分かったよ」
渋々といった態度だが、ダイは偽勇者共を一睨みしてから部屋を出た。ポップとマァムもそれに続き、俺は最後にドアノブに手を掛けて、偽勇者共に声を掛ける。
「騒がせて悪かったな」
「い、いえいえ〜!」
偽勇者が愛想笑いを浮かべる。
ふむ、ただ騒ぎを鎮めてこのまま帰るんじゃあ、詰まらないな。少しだけ脅かしておいてやるか……。
「ああ、そうそう。最後に一応、これだけは言っておく」
「な、何でしょうか……?」
「どう生きようとお前らの勝手だが、俺達の邪魔だけはするな。万が一、くだらん真似をして俺達の邪魔をした時は……命が無いと思え」
「「「「ヒィィッ!!??」」」」
軽く睨んだだけのつもりなんだが、偽勇者共は顔を青紫色にして身を寄せ合って震え出す。失礼な奴らだな……。
「それと忠告しておくが……今後、軽々しく勇者を名乗るのはやめておいた方が身の為だぞ。このご時世だ、勇者の噂なんてすぐに人伝に広まる。そうして下手に噂と人相が広まると、魔王軍に命を狙われるからな」
「「「「ッッ!!??」」」」ギクゥッ!!
「じゃ、そういう事で。あばよ」
軽く手を振り、俺も偽勇者共の部屋を後にした――。