命を懸けた友情!!蘇れダイ!!!の巻
「……ぅ、ぅぅ……がはっ!ハァ……ハァ……」
「ハァ、ハァ……よ、よし、息を吹き返した……」
今、蘇った兵士で……何人目だったか、もう分からん。『ザオラル』を唱えた回数も、もう数えるのも億劫になった……まあ、軽く200回は超えただろう。
「うッ……」
「だ、大丈夫ですか!?」
蘇生処置と治療をサポートしてくれていたロモスの医療班員が、フラついた俺の身体を支えてくれた。
大分……生命力を消費したな。一体、どれだけ寿命が縮んだ事やら……。
「ハァ……ハァ……死者は……後、何人だ……?」
「今の者で、一先ず最後です!」
「そ、そうか……!」
一先ず、終わったか……。
だが、まだ戦いは終わっていない。今も、ロモスの兵士達と百獣魔団のモンスター達が死闘を繰り広げている。怪我人も出るし、また新たに死者も出るだろう。
「ハァ、ハァ……あんた、俺の事はもういいから……兵士達の方を診てやってくれ」
「で、ですが……あなたも呪文の連続で、相当の疲労を……!」
「俺はただ、疲れてるだけだ……!ハァ、ハァ……戦いで傷ついた兵士達を治療するのが、あんた達の仕事だろう!早く行け……!!」
「っ……分かりました!」
医療班員は、わざわざ俺に敬礼してから他の負傷者の治療へ向かった。俺は、その場に座り込み、コマンド画面で自分のステータスを確認する。
――――――
エイト
HP:104
MP:0
Lv:102
――――――
もうHPもこれだけしか残っていない……。MPに変換したHPと生命力は、どういう訳か回復呪文の類いでは一切回復しない。残るHPの全てを振り絞ったとしても、『ザオラル』は26回が限度……ここまでの『ザオラル』の蘇生率は、正確には分からんがほぼ間違いなく4割を切ってる。3割として単純計算しても7人を生き返らせるのがやっと……。
それ以上の死人がこれから出れば……もう拾い切れない。
「……ダイ、ポップ、マァム……」
今もクロコダインと死闘を演じているであろう“アバンの使徒”達……出来る事なら加勢に行ってやりたいが、生命力を大幅に消耗し、身体が思う様に動かなくなってしまった今の俺では、何の役にも立てない。それどころか、あいつらの足を引っ張る結果になる可能性の方が高い。
「……お前達3人が、力を合わせて戦えば……きっとクロコダインに勝てるはずだ……!」
ダイ達が勝てば……クロコダインが倒れれば……奴の指揮下にある百獣魔団のモンスター共も撤退するはずだ。
「エイト殿!また、死者が……!」
「っ!すぐ、ここに運んでくれ……!」
ダイ、ポップ、マァム……急いでくれ!これ以上、犠牲者が出る前に……!
≪SIDE:ポップ≫
「……小僧。貴様、自分の言っている事が分かっているのか……?」
クロコダインが、まるでオレを見定める様な目で睨んでくる。
「お、おお!仲間の敵討ちで、オレがお前をブッ倒してやるって言ってんだよ!!このワニ野郎がぁッ!!」
虚勢を張ってクロコダインに啖呵を切ったはいいが、正直、今にも足が震え出しそうだ。逃げたい……クロコダインに睨まれてるだけで、怖くて堪らねえ……!
「……」
うぅ、クロコダインが睨んでる……だけど、逃げる訳にはいかねえ。俺はもう、逃げないって決めたんだ!
「俺を倒す、か……そんな事が出来ると、本気で思うか?周りを良く見てみろ」
クロコダインは顎をしゃくって周りを示す。
「ダイも、あの娘も、ロモスの騎士達も、既に戦闘不能だ。この場に立っているのは俺と貴様だけ……つまり、戦うとなれば必然的に俺と1対1の勝負をする事になる」
「……だから、どうだってんだよッ!?」
「分からんか?貴様の様な、非力な上に未熟な魔法使いが、たった1人でこの俺に戦いを挑むなど、自殺行為以外の何ものでもないという事だ。ダイかあの娘のどちらかでも健在ならば、まだ話は違っただろうがな……」
「ぐ……」
痛いトコ突いて来やがる……。そうさ、最初からオレもマァムと一緒にダイに加勢してれば、今とは違う結果になってたかも知れねえんだ。だけどよ、今更そんな事言っても何にもならねえ。
大事なのは、今、オレに出来る最善を尽くす事だ!
「小僧、今逃げるなら見逃してやらんでもないぞ。どうせ結果の見えた勝負だ、わざわざ死に急ぐ事もあるまい?」
「ぐッ……!ふ、ふざけんな!!誰が仲間を見捨てて逃げるもんかッ!!」
クロコダインの言葉は、今のオレには絶対受け入れられないものだった。きっと、まぞっほの爺さんの話を聞く前のオレなら、クロコダインに媚び諂って逃げ出してただろうけどな。
「“アバンの使徒”には、そんな腑抜けはいねえぜッ!!」
「ほう」
「クロコダイン!俺と1対1で勝負しろッ!!それとも……オレみたいな小物を相手にビビってんのかよ!!」
「……ふん、覚悟はある様だな」
挑発したつもりだったが、クロコダインは気にした様子もなく冷静に斧を構える。
「よかろう、貴様のその勇気に免じて相手をしてやる!」
よし、形はどうあれ乗ってきた。後は死ぬ気で戦うだけだ……!
オレが使える呪文の中で、クロコダインに通じる可能性があるのは、『メラゾーマ』だけだ……オレの最強の攻撃呪文で勝負するしかねえ。正直、それでもクロコダインに通じるかどうか分からねえ……。
一か八かだ……!
「いくぞ小僧ッ!!」
「ッ!」
斧を振り上げたクロコダインが迫って来る!巨体に似合わず速ぇッ!!
「むんッ!!」
「うッ!?」
振り下ろされる斧を、オレは飛び退いて躱す。
クロコダインの攻撃はそれだけじゃ止まらない――次々繰り出される斧の攻撃を、全神経を集中してどうにか読み、身を屈め、身体を捻り、飛び退き、オレは必死で避け続けた。
「ハァ……ハァ……ハァ……!!」
バク転でクロコダインから距離を取る。
避け続けているだけだが、オレの息は上がっていた。クロコダインのあの攻撃を1発でも受けたら、いや、掠るだけでも致命傷になり兼ねない。だけど、こんな神経を集中した状態は長くは維持してられねえし、体力だって持たねえ。今は何とか避け続けられているけど、このままじゃジリ貧だ。
「グフフフ……!必死に間合いを取ろうとしているな……。貴様ら魔法使いは勇者や戦士と違って、肉体的には並の人間と大して変わらん。俺の1撃を喰らったら確実に即死だからな……」
「ッ……」
見透かされてる……!
「即ち……貴様がこれから試そうとしている呪文が俺に通じなかったら……、その瞬間が貴様の最期だ!!」
クロコダインの言う通りだ……だが、後にも先にも、可能性があるのは『メラゾーマ』しかねえ!
「っ……!通じるか通じねえか……今、見せてやらぁ!!」
マジカルブースターに魔力を込める。このマジカルブースターの宝玉は、オレの呪文の攻撃力を上げてくれる……!!
アバン先生、オレに力を貸して下さい!
「喰らえッ!『メラゾーマ』ッ!!」
オレの全力を込めた『メラゾーマ』の炎が、クロコダイン目掛けて飛ぶ――!
「ぬうッ!?」
流石に驚いたらしく、クロコダインは目を見開いて身体を硬直させた。
次の瞬間――『メラゾーマ』の炎がクロコダインに辺り、奴が炎に包まれる。
「……やったか!?」
流石に倒すのは無理でも、『メラゾーマ』をまともに喰らえば大きなダメージを受けるはず……!そうであってくれと祈りつつ、オレは炎に包まれたクロコダインを見つめた。
しかし、すぐに異変が起きる――クロコダインを包んだ炎が、急に渦を巻き始めた。
「うう!?」
ま、まさか……!?
「だああああああッ!!!」
咆哮と共に炎が吹き飛び、クロコダインが姿を現した。身体や鎧に多少の焦げ跡は出来てるが、大したダメージを負っている様子はねえ……!
「フゥゥ……見縊っておったわ。未熟でも流石は“アバンの使徒”だな……。まさか『メラゾーマ』を使えるとは思わなかったぞ……!」
「ぐっ……!!」
「まともに受ければ、如何に俺の鋼鉄の肉体を持ってしても大きなダメージを負うところだったが……、残念だったな。俺は命中の瞬間、真空の斧で空気流のバリアーを作り、直撃を防いでいたのだ……」
「う、う……」
なんて奴だ……あの一瞬でそんな冷静な行動が取れるなんて……!
心に絶望が広がる……。最強の呪文『メラゾーマ』も通じねえんじゃ、もうオレには打つ手がねえ……!
どうしたらいいんだ……!?
「覚悟はいいな……小僧!!」
「はっ!?」
またクロコダインが向かってくる!立ち止まって考えてる暇はねえ、とにかく避けねえと……!
振り下ろされた斧を躱して、クロコダインの脇をすり抜けようと走る。だが――
「ふんッ!」
「がッ!?」
クロコダインの尾が胴を直撃し、オレは吹っ飛ばされた。
「ぐッ……あ、ああああ……!!??」
痛ぇ……!全身がバラバラになっちまったみたいだ……!余りの痛みと衝撃に息が止まる……苦しい……ッ!
「ゴホッ……ゲホッ……!」
のた打ち回って何とか息は吸えたけど、その分、痛みをはっきり感じる様になっちまった。
「勝負あったな……」
クロコダインの声が聞こえた……。やっぱり、敵わなかった……オレの力じゃ……。
もう……ダメだ……。
「……ぽ……ポップ……!」
「っ!だ、ダイ……!?」
聞こえてきた声に、何とか顔を上げると、倒れ伏していたダイが必死に顔を上げてオレの方を見ていた。
「……ポップ……に、逃げろ……!」
「ダイ……!い、生きてたのか……良かった……!」
「ポップ……逃げなきゃ……ダメ、だ……」
「っ!ダイ!?」
ダイはまた意識を失ったのか、顔を伏せてしまう。あいつ、自分が死にそうだってのに……オレの事を心配して……!
「ッ!」
痛みを堪えて身体を起こす。ダイの姿を見たら、力と勇気が湧いてきた……!
ダイ、ありがとうよ……でも、オレはもう逃げないぜ。逃げないって決めて、ここに来たんだ。
そうさ、ダイはこんなのを何発も喰らいながら戦い続けてたんだ……!
「ッ……1発や2発喰らったぐらいで、おネンネしてる場合じゃねえよなぁッ!!」
「立ち上がるか……小僧!」
オレが睨みつけると、クロコダインもオレを睨むように見据えてきた。
「ハァ……ハァ……」
身体中に痛みが走ってるが、不思議と震えが止まって、頭が回る様になってきた。
クロコダインを見据えながら、オレは自分に出来る最善の手を、頭のギアをフル回転させて考える……。
どうやっても、オレのレベルじゃクロコダインを倒すのは不可能だ。今の俺の魔法力じゃあ、どんだけ頑張っても『メラゾーマ』は5発が限界……もう1発使っちまったから、残り4発。
だが、クロコダインにはあの『バキ』系の呪文が込められた斧がある。何発撃っても、また空気流のバリアーで躱されて大したダメージは与えられねえ。いや、仮に4発全部命中したしても、クロコダインが倒れる保証はねえ……寧ろ、堪え切る可能性の方が高いだろう。
クロコダインを倒せる可能性があるとすれば……今この場ではやっぱりダイだけだ。
エイトは外で、ロモスの兵士達を蘇生させるのに手一杯だろうし、そもそも呼びに行く暇なんてない。
だったら、何とかしてダイを回復させる手を考えねえと……!
オレは魔法使いだから回復呪文は使えねえ……。薬草があるにはあるが、ダイが気を失ってるし、何よりクロコダインがそんな暇を与えてくれる訳がねえ。回復役のマァムはダウンしてるし……。
「ん……?」
チラッとマァムを見た時、魔弾銃が目についた。
あれなら、離れた所に倒れているダイに回復呪文を当てる事が出来る!だけど、問題はどの弾に『ベホイミ』が詰まっているかが分からないって事だ。魔弾銃の弾は、見た目じゃあ空か、呪文が入ってるかのどっちかしか判断が出来ねえ。
マァムはどれにどの呪文が入っているかを把握しているけど、オレは気にしてなかったから分からねえ。くそッ、パーティーを組んで戦う場合、仲間の能力や装備の事を把握し、状況と照らし合わせて最善の手を考える事もパーティーの頭脳役である魔法使いの仕事だって、アバン先生が言ってたのに……!
クロコダインと戦いながら、マァムを起こして聞く暇なんてある訳がねえ。だけど、やっぱり魔弾銃以外にオレがダイを回復させる手段はねえ……!
どうする……!?どうすればいい……!?どうすればいいんですか、アバン先生……!
『波長を読み取ればいいのですよ』
「はっ……!」
思い出した……大分前に、アバン先生から教わった“魔力の波長”の事を……!
『いいですか?ポップ。呪文には系統ごとにそれぞれ固有の波長というものがあります。それを読み取る事で、敵が使う呪文を先読みしたり、伝説の武器や防具などがどの様な力を備えているのかが分かる様になります』
アバン先生はそう言ってた。
真面目にとは言えないけど、オレだって魔法使いとして修行してきたし、アバン先生やマァムの『ホイミ』を何度も見てきた。
その感覚を死ぬ気で思い出して、魔弾銃の弾に込められた呪文の波長を読み取って『ベホイミ』が詰まった弾を探す――これも賭けだが、もうこれしか方法が思い付かねえ。
「どうした小僧ぉ!かかって来いッ!!」
「っ!」
迷ってる時間もねえ!一か八か、やるっきゃねえ!!
「むぅぅ……!」
マジカルブースターに魔力を込め、炎を生み出す。ただし、今度使うのは――
「『メラミ』!!」
魔法力と体力を温存する為に、呪文のランクを下げた。そして、狙うのもクロコダインじゃねえ。
狙うのは、奴の足下の床だ!
「うおおッ!?」
『メラミ』がクロコダインの手前の床に当たり、爆発が起こる。
爆発で生じた轟音と煙が、オレを一時隠してくれる。この一瞬にしかチャンスはねえ!!
「ッ!!」
俺は全力で倒れたマァムの許へ走る。
煙が晴れる前に何とか辿り着き、魔弾銃を回収――すぐにマァムのベルトに治まった弾の先の石に指を当てて、魔力の波長を読み取りに掛かる。悪いが、マァムの介抱は後回しだ!
「……違う、これじゃねえ……!」
指から伝わって来る魔力の波長……ぶつけ本番だがなんとか読み取れる。今のは多分『メラ』系の呪文が入った弾だ。
次の弾は――
「……これも違う……!」
今度は『ヒャド』系の呪文だ。くそ、どれが『ホイミ』の入った弾なんだ……!
「こいつは……?」
今度の弾は……前のとは感じが違う。攻撃呪文じゃねえ……何か、温かい様な……優しい感じがする。
もしかして、こいつが……!
「ぬぅぅ!おのれ、小癪なぁ……!!」
「っ!」
クロコダインが爆煙を斧で振り払った。もう迷っている時間なんてねえ!!
オレはマァムの見様見真似で、魔弾銃に弾を装填し、銃口をダイに向ける。
頼む!『ホイミ』の弾であってくれ!!――祈りながら、オレは引き金を引く。
「な、なにッ!?」
クロコダインも撃ち出された呪文の弾に気付き、その行方を目で追う。
そして、弾はダイに命中し、ダイが光に包まれる――。
「や、やったぜ……!」
オレはダイを包む光を見て確信した。あれは間違いなく回復呪文の光だ。
これで、ダイが復活する……!そうすりゃあ、今度こそクロコダインを倒してくれる!
「くッ……!おのれ、小僧ぉ!!」
「っ!?」
怒ったクロコダインが、持っていた斧をオレに向かって投げ付けてきた!斧は回転しながら猛スピードで飛んでくる――オレは咄嗟に避けようとしたが、傍に倒れるマァムに気付いて抱えて飛んだ。
「うわあぁッ!!?」
間一髪、飛んで来た斧を避ける事はできた。だけど咄嗟だったから、まともに着地は出来ず、マァムを放り出して倒れちまう。
「小僧ぉーーッ!!」
「うッ!?」
先回りする様に走ってきたクロコダインに、オレは胸倉を掴み上げられ、後ろに投げ飛ばされた。
「ぐあッ!??」
受身が取れず、背中を強く打っちまった……! 痛みは大して感じねえけど、身体が痺れて、動けねえ……!
「してやられたぞ、小僧……!」
クロコダインが迫って来やがる……。まだ、動けねえ……このままじゃ、やられるな。
だけど……オレは、やれるだけの事はやったんだ。悔いがない、とは言わねえけど……少なくとも、“アバンの使徒”として恥ずかしくない働きはできただろう。
「貴様の狙いは、初めからダイの復活だったのだな……」
「ああ、そうさ……。ダイが復活すれば、てめえを必ずやっつけてくれる……。あいつは……あいつは、本当に強いんだ……。オレなんかと違ってな……!」
「……己では俺を倒せないと悟り、可能性をダイへと繋ぐ為に命懸けで立ち向かってきたという訳か……見上げたものだ」
「……へっ、へへへ……!」
「何が可笑しい?」
「そんなに……持ち上げてくれんなって。命を懸けるなんて……そんなカッコいいじゃねえよ。オレだって、出来たら死にたかねえ……。で、でもよ……!」
絶体絶命の状況だからか、返って心が落ち着いてる……。なら、せめて最後に言いたい事を言っちまおう。
「オレにだって、ちっぽけだけどプライドってもんがあるんだ。仲間を見捨てて自分だけぬくぬく生きてるなんて……死ぬよりカッコ悪りぃや、って……自分で自分が許せそうにねえくらいカッコ悪りぃや!って……そう思っただけさ」
言えた……何にも拘らずに、心の中にあるもんを全部吐き出せた。スッキリしたぜ……。
『……ポップ、修業で身に付けた力を、どうか人々を守る為に使って下さい。あなたにも、いつか分かる日が来ます……己の力の全てを尽くして、戦うことの意味が……』
アバン先生……オレ、何となくだけど分かった様な気がするよ……。先生の言ってた事が……。
だけど……ちょっと遅かったかもな……。
『私は、あなたを信じています』
ありがとうございます、先生……。
遅くなったけど、今なら胸張って言っていいですよね……オレは、“アバンの使徒”なんだって。
≪SIDE:クロコダイン≫
「むぅ……」
俺はまた、人間への認識を改めさせられた。
こんな未熟な少年までもが、友情と誇りを胸に命を張ってまで戦っている……!
これが、人間という種族……。強く、そして……優しい生き物……共に力を合わせ、喜びと悲しみを分かち合う事が出来る。
ただ強いだけの俺達モンスターとは違う。強い者が弱い者を支配するだけのモンスターに……今、俺の前で倒れる少年ポップと同じ真似が出来るか?いいや、出来るはずがない。
ロモスの騎士達と言い、このポップと言い……主君の為、仲間の為、友の為、己の持てる力を振り絞り、敵わぬ敵にも敢然と立ち向かうその姿……何と雄々しく、誇らしく、眩しい生き様だろう!
「……ポップ……俺は、お前達と戦えた事を、心から誇りに思う」
この手で殺めねばならない事が、本当に残念でならん……だが!俺は魔王軍六軍団の1つ、百獣魔団の軍団長なのだ!
魔王軍と大魔王バーン様に忠誠を誓った武人として、その忠義を貫かねばならん!!
「許せ……!」
せめて……この勇敢な人間の少年の姿を、永遠に心に刻み付けよう。そう強く心に思い、俺は斧を振り上げる。
と、その時――
カアーーーーーッ!!
「むうッ!?」
背後で強い光と、強烈な気配を感じ、俺は振り返る。
「ッ!ダイ……!!」
そこには……全身から眩い光と凄まじい闘気を放ちながら立つ、ダイの姿があった――。