第三十話
その日の夜、皆が寝静まった時間にも関わらず焚き火の前で酒をチビチビ飲んでいた。
『マスター』
「どうした?」
『誰か起きた』
「そうか……」
星の言う通り、テントから誰か出てきた。アリサだった。
「あれ?龍さん?」
「アリサか、どうした?なんか用事か?」
「え、えぇ。隣良いですか?」
「あぁ。なんか飲むか?」
「いただきます」
………………………………………
「「……………………(気まずい)」」
何なんだよこの空気は!?ヤバい気まずいんですけど!?
「あの、龍さん?大丈夫ですか?」
「あ、あぁ」
「さっきはありがとうございました。私、怖かった……小学生の時に一回誘拐されて、その時の犯人の目がトラウマになっちゃって、そう言う目をした人が近づいて来るとホントに鳥肌とかたって吐き気がして……………。だから昔の白神が怖くて、気持ち悪くて」
「そうだったのか……」
そう言って、俺はアリサを優しく抱きしめた。
「ああああ、あのっ、これはいったい!?///」
「もう大丈夫だ。何にも心配するな。だから、いつものお前でいろ。その方が皆も安心する」
「はい///」
俺は何分かわからないが優しくアリサを抱きしめ続けた。
「落ち着いたか?」
「はい。あの、相談したいことがあるんですが」
「あぁ、何でも言いな」
「実は、好きな人がいるんですけど、どう告白すればいいですか?」
「…………………………………」
「あ、あの……龍「コクりたいと?」は、はい!!」
「誰とは聞かないけどさ、少なくとも俺はお前にコクられるなら、お前らしく真っ直ぐにコクられたいな。まぁ、俺としてはだがな?」
「そうですか……わかりました。なんか吹っ切れた!ありがとうございます、龍さん」
「あぁ」
「それじゃあおやすみなさい」
「おやすみ」
こうして、短い夜が終わりを告げた。
翌朝、皆がまだ熟睡の中、俺は刀を振っていた。
「………………………………」
ハラリと一枚の葉が落ちてくる。
「フッ!!」
刀を一瞬にして抜き、鞘に戻す。鞘に納めた瞬間に葉は粉同然に散っていた。
『ナイス』
「あぁ」
そして俺のデバイス、星と他愛もない会話をする。いつもの光景だ。
「!?、誰だ!!」
近くの木の裏から気配がしたので、腰にある投擲用ピックを素早くとり、木に投げる。
スコン!!
「ひゃうっ!?」
すると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「月村?」
「は、はい……」
寝ているはずの月村だった。
「テントに居なかったのでどうしたのかな?と思ったので探してたら物音がしたので来てみたら」
「ピックを投げられたと…」
「はい…………」
「なんかすまないことをしたな………」
「い、いえ。私も鍛練の邪魔をしたみたいですいません」
「気にするな。気配を掴む良い練習になった。」
「なら良かったです。そう言えば、私が昨日誘拐された理由は知ってますか?」
「詳しくはわからないが、実験のためと言っていたのが関係するのか?」
そうきくと、すずかは表情を暗くした。
「実は私は、いえ私達月村家は“夜の一族”と言われています。要するに吸血鬼なんです」
「……………………………」
「さすがに怖がりま「ほう、と言うことは俺の教え子に吸血鬼がいると。これは自慢が出来るな」怖がらないんですか?」
「怖がる?誰を?こんなに可愛らしい吸血鬼を誰が怖がるんだ?少なくともなのはやフェイト、はやてにアリサ、そして俺達は怖がらないぞ。現にあの四人は知ってるんだろ?」
「はい」
「知って怖がったか?」
「いえ、むしろすごいと言ってました」
「だろ?だから、悩む必要はない。周りのみんなは“吸血鬼”の月村すずかじゃなくて、“月村すずか”として見てくれてるんだ。だから、これからもありのままの“今までの”月村すずかでいれば良い」
そう言って頭を撫でてやる。
「はい///」
なぜか顔を赤くしていたが、なんか俺したかな?恥ずかしいのか?
「(恥ずかしい、けど気持ちいい///)もうそろそろ皆を起こしてきますね?」
「あぁ、頼んだ」
そう言ってすずかは皆を起こしに行った。
その後、朝ごはんを食べて解散となった。