小説『Gods ~舞い降りた女神様~』
作者:ダーク根暗フィア()

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第9話 炎獄波斬!




「ギィィィィァァァァァ・・・・!!」

キリヤが振り降ろした≪戦女神の剣(ヴァルキュリアブレイド)≫の神々しい刀身が水龍を脳天から真っ二つに切り裂いた。

「やった!」

勝利を確信したキリヤと麻理。ただ1人、剣介だけは顔をしかめていた。

「待て、よく見ろ」

「ギ、ギギギ・・・・ァァ!ギ・・・・ギィィィィァァァァァ!!」

2つに切り裂かれた筈の水龍の体が1つに戻りはじめ、たった数秒で再び1つの体になった。

「そんな」

「やっぱりな・・・・。ほぼ100%水で出来たコイツみたいなタイプは斬っても死なねぇか・・・・ぐぁっ!?」

剣介の腹を襲った激しい痛み。戻った水龍がいい加減剣介を鬱陶しがって振り払おうと尾を動かしはじめたのだ。

「がぁぁぁぁぁぁ!!畜生がぁぁぁ!!」

今剣介の出血を止めているのは水龍の尾でもある。それが無くなったら即大量出血を起こして命が危うくなるだろう。

「剣介!!っ、どうすれば!」

ズッ!

「ぐがぁぁぁぁ!?」

遂に抜けてしまった尾。剣介は傷口を押さえてうずくまる。

「変換・・・・火炎っ・・・・!」

ボオッ。ジュゥゥゥ!

「うぐっ!?ーーーーーーーッ!!」

応急措置として焼いて傷口を塞いだ剣介。辺りには肉の焦げた匂いが漂う。

「ケンちゃん!?何をしてるの!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・。応急・・・・措置だ」

「それはそうだけど!」

「来るぞ!」

ドパァ!
全方位に放った水の奔流。3人は軽く吹き飛ばされ剣介は塞ぎきれていない傷口に滲みる痛みに顔を歪める。

「畜生めぇ。皆無事か!?」

「大丈夫!」

「ケンちゃんこれ!」

麻理が投げた煌めく剣≪レイヴニル≫が倒れた剣介の足元に突き刺さった。

「サンキュー!こんの野郎・・・・今からお前の核なる存在を引っ張り出してやるぜ!」

「ギィィィィァァァァァ!!」

「ケンちゃんどういう事?」

「今気付いたんだがコイツ、本体はあの体の何処かにあって、その核なる存在と今見ているコイツとはまったくの別物なんだ」

「え?よく分かんない」

「まぁ、見てろ!」

≪レイヴニル≫を引き抜き、刀を扱うように腰溜に構える。

「はぁぁ・・・・!」

ボオッ!
≪レイヴニル≫が剣介の魔力を増幅させその刀身を真っ赤に燃え上がらせる。

「今引っ張り出してやるぜ!『炎獄波斬』!」

ヒュ!
剣介が逆袈裟斬りで剣を振った。刹那、水龍に当たる事のない距離の筈なのに水龍の体の1部が大量の水蒸気を巻き上げ蒸発していた。

「ギィィィィァァァァァ!!」

驚きか痛みか、はたまた憤怒からなのか解らない大音量の咆哮。
水龍は再び体を修復させて剣介に尾を振り降ろしす。しかし水龍は既に頭からも水蒸気を巻き上げいた。

「凄い・・・・。熱波を刃として離れた場所から攻撃するなんて・・・・」

幼馴染みでも見た事の無い剣技は春だと言うのに辺りを真夏級の暑さに変えた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

止まらない斬撃。水龍は成す術なく小さくなっていく。

「オォォアタァァァ!!」

次の瞬間剣介が人間大程になった水塊に突っ込み、先程とは違ってかなりプルプルとした赤ん坊大程の水塊を庇うように抱いて走り抜ける。

「消えろ」

ボシュゥゥゥ!
振り返りざま最後の1振りで人間大程だった水塊は完全に水蒸気となり消え去った。

「ふぅ。危なかったなお前」

突然剣介が腕に抱いたプルプルの水塊に話し掛けた。何事かと他の2人が剣介に駆け寄る。

「大丈夫剣介?それにそれは何?」

「コイツか?コイツが水龍の核なる存在だ」

「じゃあ早く倒さないと」

シャン。と麻理が≪笹貫≫の先っ刃をプルプルに向ける。

「おい止めろ!コイツに敵意は無い!だからこうして助けてやったんだ!」

「助けた?」

「さっき言ったろ、コイツと水龍は別物だって。コイツに何らかの原因で同化した水魔が暴走したのが水龍。コイツはずっとあの中で怯えてた。だから助けた、それだけだ」

剣介は≪魔力変換≫で魔力を水(氷)属性に変換。残った少ない魔力をプルプルに与え、動きが活発になったのを確認してから川に放す。

「じゃあなー!スライムみたいのー!次からは自分で何とかしろよー!」

「じゃあねー!」

「さようなら」

プルプルは去り際に小さな人型となって剣介達に手を振った後、川に消えた。

「・・・・さて、帰るか?俺もそろそろキツいしな・・・・」

フラフラと足元がおぼつかない剣介に≪レイヴニル≫を渡し、魔力が回復したのを見て麻理が剣介をおぶる。

「あっ、おい!やめれい!馬鹿者!」

「なによー?折角私がおんぶしてあげてるのにー」

「だから止めろと言っておるのだ!よっと。おっとっと」

麻理の背中から飛び降りた剣介は腹を押さえながらも今日の夕飯のメニューを考えていた。

「キリヤ帰ろうぜ、さっさと帰って体洗いてぇしな。そして今日の夕飯は肉じゃがだ!」

「肉じゃが?」

「まだまだ昼だが食材買いに行くぞ!てな訳だ、じゃあな麻理!」

「さようなら」

腹の怪我を気にせず走り去っていく剣介。その後を追うキリヤ。
2人の姿はあっという間に見えなくなった。

「・・・・あ、あの娘誰か聞くの忘れた」

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