どうでもいい作者の一言!
今日は学校の先生が授業中にぎっくり腰になってた。
いきなりえび反りダンスするから・・・・。
第11話 化け物の眼
「ブリュンヒルデ姉様はーーいや、私意外に居たヴァルキリーは皆死んでしまったの」
『ヴァルキリー』(Walküre)。主神オーディンの命を受けて、天馬に乗って戦場を駆け、戦死した勇士(エインヘリャル)を選びとって天上の宮殿ヴァルハラへと迎え入れる役割を持っている。この勇士達は、ラグナロクでの戦いに備えて、世の終わりまで武事に励むという。
ヴァルキリーは何人も居て、正確な人数は解っていない。
「どういう事?そもそもヴァルキリーは何人居たんだ?」
「20くらいかな?」
「何で死んじゃったんだ?戦争でもあったのか?」
「えぇ、あったわ。今から18年前に巨人族とのね」
「何で?」
「分からない。急にアースガルズに攻めてきて、とう・・・・オーディン様達が撃退したと聞いたけど、エインヘリャルも何人も消滅して、行方不明も居たわ。そして其処で戦った姉様、ヴァルキリーも命を落とした」
「成る程な。悪い事聞いちまったな、ごめんキリヤ」
申し訳無さそうに立ち上がってキッチンに向かう剣介。
炊飯器の隣に置かれたドリップ式コーヒーメーカーを手前に引っ張り出してコップを2つ食器棚から取り出す。片一方のコップは何度もコーヒーを飲んできた為か、底が少し茶色い。そしてもう片一方のコップは今日買ってきた新品だ。
「なぁ、その戦いの後にキリヤが産まれたって事だよな?姉が死んでいるって聞いて、悲しかったか?」
「分からない。姉を見た事が無いし、その話を聞いたのもこの間だから。この剣の事も」
「そうか・・・・。キリヤ、どうしてこの家に俺しか居ないか知ってるか?」
「そう言えば」
「俺の両親は居ないんだ。父親は俺が産まれてすぐに失踪。母親は3歳まで育ててくれたが俺の魔法を見て手放した。その後祖父母に5歳まで育てられたが、やっぱり俺を捨てた。この家に」
「何でそんな」
「化け物の眼・・・・」
コーヒーを淹れ終わった剣介がキリヤの前にコップを置き、自身も座る。
「化け物の眼?」
「これだよ」
コーヒーに写っていた自身の顔を見ていたキリヤが顔を上げる。
剣介の瞳は能力者が能力を行使したときに決まって起こる、黒眼と白眼が反転した眼になっていた。
「怖い?」
「ううん。怖いと言うより、可哀想。剣介の綺麗な瞳がこんなのになって・・・・。これは、私達のせいでもあるかも知れないのね」
「綺麗なって・・・・と言うより、何でキリヤ達のせいなんだ?」
「18年前の戦争。それで行方不明になったエインヘリャルが産まれる前の314人に宿って剣介達、能力者が産まれたの。でも、これはあくまで仮説」
「314人、それが能力者の数か。意外と少ないな」
「でも行方不明になったエインヘリャルは315人なの」
そう言えば。と首を傾げる剣介。それが仮説である理由だろう。
「誰だその1人は。死んだのか」
「死んだとしたら分かるわ」
「ふぅん。まぁ、良いや」
「ごめんなさい。あんな戦争が無ければ・・・・」
「謝ることはない。第一、キリヤがその戦争を否定したらそのお陰で産まれてきた俺等を、今、こうして出会えたきっかけを否定することになる。それに、キリヤは戦ってないし誰も悪くない。この世には避けられない衝突も在るんだから」
そう言うと剣介は瞳を閉じ、深呼吸をしてからまた目を開く。
眼の色は元に戻っていた。
「ほら、早く風呂に入っちまえ。食器は片付けておくから」
「ん」
短く返事をし、キリヤはコーヒーを一気に飲み干す。
「剣介」
「ん?」
「・・・・ありがとう」
そう言うとキリヤは風呂場に走っていった。
「ったく、家で走るなって言ったのに」
ピンポーン。ピンポンピンポンピンポンピンポーン。
不意に家に鳴り響くインターホンの音。
「こ、この鳴らし方は・・・・」
この鳴らし方に覚えがある剣介はインターホンのモニターを見ずに玄関へと向かった。
玄関には膝上まで守るキリヤの純白のサイハイレッグアーマーが薄暗いながらも存在を強調している。
「・・・・いかん。隠せん」
どうやら純白のそれを隠そうとしていたらしいが無理だったようた。
「ちょっとー!居るんでしょ!」
ドンドン!
遂にインターホンを押すのに飽きたらず玄関ドアを殴り始めた。
「うわ!止めろ!ドアが吹っ飛ぶからマジで!」
玄関ドアが重々しく開いた。
「もー!居るんだったら早く開けてよー、ケンちゃん」
「麻理・・・・何の用だよ」
剣介の肩を破壊した張本人が膨れっ面で立っていた。