第15話 ラブレター!
「剣介、帰ろ。私お腹空いたしだからこれ貰うね」
本日最後の授業も終わり、昼に食えなかった(発狂した男子共の強襲、理不尽な暴力のせい)学食のパンを取り出したら今度はキリヤにパンを持っていかれた。
「あっ、おい。俺のパン・・・・」
「ご馳走さま」
「よく噛んで。じゃなくて、人の物に手を出すのは良くないぞ。俺だから良いが他の人にはやるなよ」
「はーい。ねぇ、お腹空いたから買い物行こ」
「はいはい」
剣介が疲れた半目(殴られて腫れたのもある)を擦りながら教科書をバッグに詰めているとはらりと何かが落ちる。
「何だ?」
「ほう。Loveletter(←発音が本物)か。やるなぁ剣介」
左胸の校章を左人差し指で撫でながら突然の登場、剣介の親友・裕二が鼻唄混じりでラブレターを拾う。
「裕二、お前何か企んでるのか?」
「違う違う」
否定する裕二だが表情はかなりニタニタしている。
「剣介、ラブレターって?」
「ふむ。Loveletter(←発音が本物)とは女が男に勝負を申し込む時に使う果たし状だ。しかも稀に男が他の男を罠に嵌める時にも使われるから最善の注意が必要なんだ」
「なんて事教えてるんだお前は」
「そ、それじゃあ剣介は誰かと戦うの・・・・?」
「あぁ。前に俺の親友、苗字は挙げないがYAGATA裕二って言う奴がまんまと引っ掛かってな。行ったらケツバットをーー」
「おい、誰だか隠せて無いだろ。しかも変な風に教えるなっての。キリヤさん、ラブレターは相手に好きな想いを伝える時に使われる物なんだ」
「好きな想い?じゃあつまり剣介の事が好きな人が居るって事?」
「まっ、そんなところ。開けてみるか?」
「気を付けろ」
「何にだよ・・・・」
ビッ!
ハートのシールで何とも可愛らしく封をしてあったラブレターを裕二はあろうことか縦真っ二つに切り裂いてしまった。
「あ、しまったな・・・・力みすぎた」
「力むものか?」
「でも取りやすくなったぞ」
「本当だ!」
「2人共なに馬鹿なことやってんのさー。こうやって取るものでしょうにー」
此方も突然の登場、麻理がラブレターのシールを剥がし、皆が知っているように開けて半分になった手紙部分を取って見せる。
「「・・・・それだ!」」
「ホント、馬鹿よねー2人共。で、ケンちゃんはこれを読むの?」
「ふむ、そうだな。ここまで来たのなら処分しかあるまい」
「今の流れで!?」
(嗚呼。やっぱりツッコミが出来る人が居ると良いなぁ)
「・・・・私が読み上げるわ。『初めましてこんにちは。突然ですが私、貴方に大事なお話が在ります。体育館裏に4時半に待っています。2年5組 西条 静音』」
「体育館裏だと!?くっ、やっぱり危険だ。本作戦は以上で終了とする!撤退だ!食糧は此処で放棄、装備は出来るだけ身軽にしておけ!」
剣介がバッグを持ち、早急に帰ろうとすると麻理がその怪力で机を軽々しく持ち上げて片手で剣介に投げつけた。
「ごるふぁぁぁぁ!?何だよ麻理!」
「行ってあげなさいよケンちゃん。多分その人待ってるよ」
「分かった!行くからこの机を退かしてくれぇぇ!」
まるで潰されてジタバタもがく黒きGのような剣介を裕二とキリヤが救助、埃を払うと剣介の胸ポケットから壊れたサングラスが落ちた。
「なんてこったぁ!」
「何事か!騒がしいぞ!」
刹那、教室のドアが開き、太陽の何十倍はある光が押し寄せて来た。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ%@○△※☆#%□¥♂♂♂♂ーーーーーーーーー!!!」
◇
「・・・・」
体育館裏。小さな池で泳いでいる金魚を眺める1人の女子生徒が居た。
西条 静音。腰まで伸びた黒髪。制服のスカートから覗く脚はすらりとしていて上品な出で立ちで正に大和撫子の言葉が似合う。
「・・・・まだかな」
左手首の腕時計を確認する。彼女が待っているのは勿論剣介。しかし待ち合わせの4時半迄は8分もある。
(あぁ、どうしよう。凄い胸がドキドキする・・・・!)
いよいよ顔も熱くなってきた静音は水面に写った自分を見て、身だしなみを整える。
「大丈夫、落ち着いて私」
「お待ちどうさま」
「お待ちど・・・・え?」
静音が振り返るとガチガチに緊張した剣介が立っていた。