第16話 剣介パニクる!
「お待ちど・・・・え?」
静音の目の前でガチガチに緊張した剣介。本来は「お待たせ」や「待たせてごめん」が当たり前たが、まさかの「お待ちどうさま」に静音は思わずすっとんきょうな声を出してしまった。
「あっ、いや!お待たせです!」
「い、いえ。私も今来たばかりで」
(やべぇ。思いの外緊張する・・・・。良く考えてみたら俺ラブレター貰ったの初めてだ・・・・はっ!?俺今凄い緊張してる!)
「え、えと。今日はいい天気ですね」
「そ、そうですね」
因みに空は雲に覆われた灰色。
(私今凄い緊張してる!な、何か会話をしないと!)
「え、えと。今日は何色のパンツですか?」
(わぁぁ!私なんて質問してるの!?)
「真っ赤な炎が目を引く黒いトランクスです」
「な、中々奇抜なパンツですね・・・・。私のは質素な白です」
「やはり白は妥当ですか」
「そうですね」
((・・・・何かパンツで打ち解け始めてきた。パンツ万歳!))
◆
「ケンちゃん、何話しているんだろ?」
「気になったりしてます?」
「な!?そ、そんな事無いわよ!」
「そうですか。私は・・・・とても気になります」
「そ、そう・・・・」
剣介と静音が居る位置からおよそ10m校舎側の花壇。まるで運動会の整列のように色毎に1列に並んだ色とりどりの花に身を隠す2人の女子生徒が居た。
1人は迷彩色の双眼鏡で2人を監視、もう1人は誰もが知るチョココロネを頬張っている。
「ねぇ、何でキリヤさんは私に付いてきたの?」
双眼鏡で監視していた麻理がチョココロネを頬張っているキリヤに質問をぶつけた。
「だから言ったじゃないですか。とても気になりますって」
「何が気になるの?」
「解らないんです。さっき剣介が手紙の女の人が待ってるっていう場所に行くって言った時、良く解らないんですが凄く嫌だと思ったんです」
「・・・・」
「変なんですよ。この前剣介に抱き付いた時だって、胸が張り裂けるくらい心臓が強く脈を打っていました。今日だって朝に剣介と学校を見て回った時も剣介にはバレて無かったんですけど凄く顔が赤い時があったりして・・・・。私、あの水龍の時から剣介を意識しているようで・・・・麻理さん、私は病気何でしょうか!?」
「・・・・えぇ。病気よ。それも、とても重い病気・・・・私もかかってる。そして彼処でケンちゃんと話してる女の子も」
麻理が双眼鏡から目を離し、少し赤らめた顔で頭を掻く。
「それは!病院に行けば治りますか!?」
「行っても無理。薬局でもこれに効く薬も無いわ」
「そんな・・・・。あの、何て言う病気なんですか?」
「・・・・聞いたこと無い?『恋』よ」
「こ・・・・い?」
◆
「へぇ。静音さんはあの仮装大会(1年生の時にハロウィーンに先生も交えて皆で仮装した日。学年性別を問わず人気)の時にカボチャを被って転んだあの娘でしたか」
「はい。光明さんは血まみれの人に仮装してましたよね」
「そうでしたね」
(仮装じゃなくて直前に強力なアンデッドの大群と殺りあった時の怪我なんだよなぁ、あれ)
「それで、今までパンツの話やら仮装の話やらしてましたが、俺を此処に呼んだのはこの為?」
「ち、違いますっ」
静音が椅子から立ち上がり池に向かって歩き出す。
剣介もその後に続いて歩く。すると静音が池の前でくるりと振り返る。
「お話があるんです!」
「?」
「あ、あのっ!私、初めて逢った(仮装の時に転んだのを剣介が助けた)時からずっと好きでした!そのっ、つ、つつつ、付き合って下さい!」
「ーー!?す、好きぃ!?」
口を目の前の池の金魚ようにパクパク空け閉め。顔は真っ赤に紅潮し、話してる時に何ともなく見れていた静音の顔も直視出来ず俯いてしまう。
それは静音も同じで剣介を見れず、俯いてしまっていた。
その後、何分経ったのか暫くしたところで剣介が口を開いた。
「お、俺もーー」