小説『Gods ~舞い降りた女神様~』
作者:ダーク根暗フィア()

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第26話 2人の英雄




何時もと変わらぬ平和な日常。
男女生徒がやいやいと笑いあい、話しながら校門から校舎に歩いていく。

「キャァァァァァァァァ!!」

そんな中、河口北東高等学校に響き渡る悲鳴。

「うわぁぁぁぁ!此方に来るなぁぁぁぁ!」

「ヤメテェェェェェ!!」

「終わったのか・・・・俺達の平和は・・・・!」

「奴が・・・・現れた!」

河口北東高等学校に、黒い恐怖が現れた。



「遂に姿を見せたか・・・・!」

「頼むよ剣介!お前じゃないと対抗出来ないんだ!」

「うん。それは分かってるけど、やる気しないなぁ」

「其処を何とか!」

「剣介、何の話?」

「キリヤ、ちょっと待ってて。・・・・場所は?」

「1階の体育館側男子便所だ。数は俺達が確認したのでは3匹。此処と、此処と、此処だ」

「上出来だ」

机に広げた1階の体育館側男子便所のマップを頻りに指差しながら焦った様子で話を進めていく剣介とその他の生徒達。

「奴等との戦いもこれで2年目・・・・今日こそ決着をつける!」

「だから剣介、何なの?」

「暗黒卿との戦いだキリヤ。奴等は何より素早く動き、高い生命力と隠密性を兼ね備えている。奴等は常に人間の敵であり驚異!」

「人間の敵であり驚異・・・・」

「剣介、お前1人に背負わせて済まないけど・・・・」

「気にするな。奴等の速度には俺が一番ついていける。麻理も奴等が苦手じゃなきゃ頼もしいが・・・・」

剣介が顎に手を当てて悩む。
すると剣介の右隣に居た脇ノ沢夜久(わきのさわ やく 通称・脇役)が剣介の肩を叩く。

「何?」

「僕も行くy「駄目だ。前にもそんな事言って逃げたろ?」

「私に行かせて剣介。その暗黒卿を私が倒してみせるわ」

「「「「おぉーーー!!」」」」

キリヤが「ふふん」と胸を張ると色んな意味で男子が沸いた。

「麻理に勝ったキリヤさんなら大丈夫か?」

「頼もしいぜ!正直、女子に奴等を任せるのは気が引けるがやむを得ないしな」

「んむぅ・・・・まぁ、人手があるのは悪いことじゃないし・・・・。キリヤ、暗黒卿を見ても逃げない?」

「私はヴァルキリーよ。どんな敵が来ても逃げないわ」

「あ!馬鹿ーー」

「ヴァルキリー!キリヤさんはその称号に相応しいよ!」

「あ・・・・そうなる・・・・?」

剣介の心配を見事に裏切ってクラスメイトはヴァルキリーを『称号』として認識。
もっとも、此処で女神の方として認識したとしたならば馬鹿か能力者でしかないが。

「じゃあーーー、兎に角行くか?」

「りょーかい!」



それから8分後、暗黒卿が出現したトイレは完全に閉め切られ、妙な緊張感で張りつめていた。

「剣介・・・・漸く気付いたんだけど、暗黒卿って言うのは・・・・」

カサカサ・・・・。

「あぁ。人類の敵だ」

カサカサ。

「あのテレビでよく言ってる黒い・・・・」

カサカサ!

「Gだ。来るぞ!」

カサカサカサカサカサカサカサカ!!
遂に姿を見せた3匹の『黒いG』。その黒く光沢のあるボディに長い触角。カブトムシのように頑丈な造りではなく羽は剥き出し。ここまでくれば判るだろう。
知ってた?実は界面活性剤をぶっかければGは気門が塞がれて即死するらしい。あ、でも即死だったか気絶だったか分からんけどどのみち気門が塞がれてたら死ぬ。

「むん!」

デルタ隊形で迫ってきたGの先頭に対G用近接戦闘兵器≪SURIPPA(右足)≫を降り下ろす。

ベチン!
しかし、それは虚しく足下のタイルへ。

「キリヤ!」

「いやぁぁぁ!気持ち悪いぃぃぃ!」

フォン!フォン!
俺の後ろでいつの間にか≪戦女神の剣(ヴァルキュリアブレイド)≫を涙目で振り回すキリヤ。

「ち!屈したか!」

カサカサ!

「えぇい!奥の手だ!必殺、界面活性剤!とぅ!」

バシャアッ!
俺は遂に奥の手である界面活性剤を含んだ洗剤をGに向けてぶちまける。

ブゥゥゥゥン!
しかし見事にそれを飛行して回避するG。

「読まれている!?」

ブォン!
だが剣介はすぐさま右手の≪SURIPPA(右足)≫を飛んだGに投擲。
流石にこれは回避出来ずに1匹目のGが≪SURIPPA(右足)≫と天井に挟まれて圧殺。

ヒュガ!
すると突然俺の鼻先をキリヤの≪戦女神の剣(ヴァルキュリアブレイド)≫が掠めた。
その鋭い刃先には壁に押し付けられ、無惨に貫かれたGがピクピクと痙攣している。
2匹目刺殺。

「・・・・汚い」

「助かった!ありがとうキリヤ」

(ん?キリヤの剣、俺の≪レイヴニル≫と同じような文字が彫ってある・・・・。そういや何処の字だ?見たことない・・・・)

「剣介上!」

「!」

ブゥゥゥゥン!
最後の1匹、俺が前回も殺し損ねたリーダー格のGが降下アタック。
しかし俺はそれを脊椎反射の横っ跳びで寸前に回避。

ズル!
だが、俺は甘かった。
今さっきぶちまけた界面活性剤が俺の足から摩擦を奪った。
そう、滑ったんだ。

「!」

「剣介!」

Gが空中で瞬時に俺方向に方向転換。最G最早の動きを超越しきっている。
ーーだが、俺も負けん!

「ヌァァァアアアア!!」

キュッ。
何とか踏ん張った右足を軸にして迫り来るG目掛けて回し蹴り。

フォン!
Gはそれも当然のように回避。
だが、まだ終わってない。

「ふん!」

今度は勢い余った左足の遠心力を利用して一瞬宙に浮き、軸にしていた右足でローリングソバッド。

ブッ!
遂に捉えたGを踏んづけたような感覚。
俺は勢いを殺さず界面活性剤が反射させる便所の床に右足を叩き付けた。
上履きと床に挟まれて行き場を失ったGの中身が飛び散る。

「3匹目っ、踏殺!」

「やったの?やっと、終わったの・・・・?」

「あぁ、終わった。俺達が、人類が勝ったんだ・・・・」

「やった・・・・!ゴキ〇リ怖かったぁぁぁ・・・・」

「平和が戻ってきたんだ」

その後、俺達は『英雄』と讃えられ、学校の便所は平和となった。
・・・・だが、奴等は常に人間の生活する所に居る。そう、皆の足下にも居るかも知れないぞ。暗黒卿、Gが・・・・!

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