小説『Gods ~舞い降りた女神様~』
作者:ダーク根暗フィア()

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第2話 神


神と聞いて想像するのは人それぞれだ。オーディン、ゼウス、etc.
それらは全て宗教の違いや国の違いによって異なる。と言っても形はどうであれ、神を信仰する者は近年減り続け、神話も今ではただの昔話程度にまで人々の意識から消えていっている。
現状では世界の98%に北欧神話が伝わっていて一番神を信じられている。しかし、今も言ったように信仰する人間が減っているのだ。
それはつまり、人の祈りを力とする神々が衰えているのだ。
その事から、人が住まう世界、ミズガルズに普通は存在しない筈の悪霊や魔物等の悪しき者が生まれてしまう。そしてそれを討伐するのが能力者だ。
そして今、此処神々が住まう世界、アースガルズの大きな神殿。

「ぬぅ。いかんな。我らの力が衰えきっておる。このままでは何時巨人族の者が進行してきてもおかしくない」

「オーディン、どうするんだ?流石の俺でも全ての人間の信仰心を思い出させるのにはちょいと難しいぞ」

「ロキ、キリヤを呼んでこい」

「はいよ」

ロキはその輝く外套を翻すと神殿の外に歩いていった。
暫くするとロキは1人の美少女を連れてきた。
純白の鎧ドレスを纏った彼女は金に輝く長髪でその瞳はエメラルドの宝石のようで思わず魅入ってしまう。

「御呼びでしょうか」

「キリヤ、いきなりですまないが今ヴァルハラに居るエインヘリャル(死せる戦士)は何人だ?」

「2658人です。その内、18年前の巨人族との大戦で消滅したエインヘリャルは60人、巨人族に捕らわれた者が18人、行方不明が315人です。つまりーー」

「2265人だな。もう少し簡潔にまとめられるようにな」

「すみません」

「いや良い。しかし、その数では悪霊や魔物、悪魔からの攻撃からミズガルズを守れんな」

「左様であります。そこでミズガルズの能力者を頼ってみるのはどうでしょうか?」

キリヤが方膝ついた状態から立ち上がると持ってきた袋の中から1つの水晶球を取り出し、オーディンに差し出すと其処に複数の人間が写っていた。

「人間?」

「彼等は人間の中でも突出した力を持った能力者です。その数は314人。行方不明になっているエインヘリャルとほぼ同じです。私の考えではあの時にミズガルズに落とされたと思われるエインヘリャルがその時に人間の腹にいた子供、現在17程の人間に憑依、その子供が特別な力を持って産まれてきたと思われます」

「彼等は戦えるのか?」

「勿論です。現に彼等はミズガルズに最近から現れだした悪霊や魔物等を討伐しております。実力は充分かと」

「ふむ。ーーキリヤ、その者達と接触を試みてくれ。良いか?なるべく神であることは隠してくれ」

「はい」

「ではーー」

「?これは?」

オーディンから渡された指輪を見たキリヤは「これは何ですか?」と言わんばかりに首を傾げる。

「ビヴロストに向かえ。それは何処からでもビヴロストを開くことができる宝具だ」

「ありがとうございます」



アースガルズ、ビヴロスト前。

「キリヤ様。オーディン様から話は聞きました。どうぞ此方へ」

ゴツい鎧に身を固めたアースガルズの見張り役ヘイムダルが黄金のパルチザンの刃を足元に突き刺すとたちまちビヴロストを護る霧が晴れ、虹の橋が姿を現す。

「キリヤ様。オーディン様から言伝てです。最低でも3ヶ月はミズガルズを視察してきて欲しい。どの事です」

「分かりました」

ヘイムダルはキリヤと握手を交わすと「お気を付けて」と耳打ちした。

「?分かってますよ。貴方もお気を付けて」

カツーン・・・・カツーン・・・・カツーン。
キリヤがビヴロストを歩く音が段々と遠退いていく。

「・・・・貴女はまだお若い。どうかお気を付けて」

(申し訳ありません、オーディン様。貴方様のお名前を勝手に使ってしまって)

その直後ヘイムダルがビヴロストに走ってくる足音に気付いて振り返るとヘイムダルよりも一回り背が大きいヘイムダルのよく知る友人、巨人族のニグストが小包を持って立っていた。

「ヘイムダルさん!」

「やはり彼等が・・・・」

「オーディン様に頼まれて行動しています!例の場所へ!」

「分かりました。何としてでもそれを届けて下さい。さぁ、早く!」

「ありがとう!」

張りかけた護りの霧の中をニグストが走っていく。そしてヘイムダルが護りの霧を完全に張るとまたもや誰かが走ってきた。
ニグストと同じ巨人族でニグストと共に遊びに来ていたアルバンデだ。

「ニグストは!?」

「・・・・ニヴルヘイムに。行きますか?」

「頼む」

ヘイムダルがパルチザンを足元に突き刺すと、突然アルバンデが背後からハンマーを取りだし、ヘイムダルに攻撃する。しかし、気付いていたヘイムダルは首を傾げる事でハンマーの攻撃を避けると腰の短剣をアルバンデの首に当てる。

「やはり、貴方が巨人族の手先でしたか。アースガルズもあれも渡しません!」

「これでもか?」

アルバンデのハンマーがドロドロの液状に変わると瞬く間に短剣へと姿を変えた。

「それは!?」

「あばよ」

ガッ!
鈍い音を立ててアルバンデの短剣がヘイムダルの鎧を貫く。

「ぬぅ!?これは、毒か!」

「ふん。神も毒には耐えられんか」

アルバンデがヘイムダルを蹴りどかしてパルチザンをしっかりと突き刺すと護りの霧が全て晴れる。

「さぁ、次はお前らの番だ。俺はあれを追う」

「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

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