「ルリちゃーん!ごはんできたぞー。」
キッチンでサンジが叫んだ。
「ん。」
ルリは小さくうめくと、立ち上がってうーんと伸びた。
そして、話す準備もできた。もう本当のことを言ったら船を降りるんだ……
毛布を丁寧にたたんだ。
すぅと息を吸うと、キッチンに足を踏み入れた。
「みなさんっ!おはようございます!」
「えらい力はいってんな、ルリ。人間姿になって……」
「うおーーー!ルーリちゅわああん!」
サンジが目をハートマークにしてルリを見た。
ルフィは、どういうわけかルリに背を向けた。
「みなさん。聞いてください。」
その瞬間、クルーたちがルリに開き直った。
「きっと……きっと昨日私が暴れまわったのでしょう。この傷がその証拠です。」
まかれた包帯を引きちぎっていった。大きなバツ印が現れる。その時の一瞬、ルリの顔がゆがんだ。
サンジがゾロをにらんだ。ゾロはサンジに目を向けることなくルリの傷を見つめていた。
「私は……満月の夜の記憶がありません。でも、何か私の身に変異があることはわかっています。自分でも何が起こっているのかわからない。周りが荒れ果て、人は死んでいます。だから、私はまたそうなってしまうと前日からわかっていて、仲間になれないと思ったので、出て行ってしまいました。本当にすいません。だから、あなたたちの仲間にはなれません。ごめんなさい。」
「なんでそのことを早く言わねェんだよ!」
ルフィがルリの言葉をさえぎって言った。
「どれだけ仲間に迷惑かけたと思ってんだ!メリーー号がどれだけの傷を負ったと思ってるんだ!わかってたなら言えよ!それで勝手にお前だけが抱え込んで、急にいなくなって俺たちは心配して戻してきちまった!こんなことになるってわかってたんなら言えよ!!!」
ルフィの変わりようにルリは言葉を失った。けれど、一生懸命に自分の言い分を続けた。
「……違う!違う!私はこんな突然の変異で友達をなくして、嫌われて、とても悲しかった!悔しくて!けれど私にあなたたちは優しくしてくれた!こんなにいい人たちに私は絶対に嫌われたくないと思った!もしも私が本当のことを話したとして、その瞬間優しくなんかしてくれないと思ってたから絶対に言わなかったの!」
「黙れ……」
「あなたたちに私の本当の気持なんかわかんない!だって……だって!あなたたちにはとてもいい人たちに囲まれてるんだから!私の気持ちもわからずに、無責任にそんなこと言わないで!」
「黙れって言ってんだろ!ルリ!お前周りをよく見ろよ!俺たちは昨日お前の変貌を目の前で見てんだよ!ゾロなんか、お前に怪我まで負わされてんだ!けどなァ、ちゃんと今まで通りに接してるだろ!俺たちは絶対にお前を裏切ったりなんかしない!嫌いになったりなんかしない!だって、俺たちは『仲間』だろうが!」
その言葉を聞いた瞬間、ルリは泣き崩れた。
まだ仲間っていうわけではないけど、とてもその言葉はうれしかった。
「ルリ……こいつらはいいやつだよ。あたしは海賊なんか大っ嫌いだけど、こいつらなら許せる。優しいし、面白い。強いし仲間思い。だから絶対に裏切ったりなんかしないし、ルリを嫌いになったりなんかしない。仲間になってもいいんじゃないかしら。……ねっ?」
「俺はルリちゃんがはいってきてくれれば大歓迎だが?」
サンジはたばこの煙をはきながら言った。
「俺も入ってほしい!なぁ、ゾロ!」「おう。」
「シシシシシッ!ルリ、どうすんだ?」
ルフィのその笑顔は、ルリを歓迎し、一生守るという笑顔だった。
「私を、仲間に入れて!」