一番最後に食べ終わった後、バルコニーへと出た。
天気がとてもよく、潮風がルリの毛並みを撫でていく。
「ったく。カヤにもらったメリー号が。」
後ろを振り向くと、トンカチで柵を直しているウソップが目に入った。
「ウソップさん。私も手伝いますよ。」
「おうルリ。サンキューな。」
ルリは転がっているトンカチとくぎを見て思った。
(これ……人間姿になんなきゃ無理な仕事じゃーん!)
ウソップを罰が悪そうに見た。
(いまさら無理ですなんて言えないよね……)
ルリは周りをキョロキョロと見渡す。サンジは幸いにもいなかった。
しかし、トンカチを持ったままルリは固まった。
「ん?どうした。」
「あの……どうやってやればいいんですかねぇ……?」
あは、あは、とひきつった笑顔を見せた。
「簡単だぞ。くぎを打ちたい場所において、くぎを打つだけだ。」
「簡単なんですね。よかったです。」
ルリはトントンと軽快なリズムでたたいた。
「でもなー、ルリ。気を付けないと―」
「?」
ウソップは手を開いてルリの顔の前に突き出した。
「自分の手を打って痛い目あうぞ……」
「ヒィィィッ!」
真っ赤に膨れ上がった指を見てルリは絶叫した。
ルリは汗を流しながらゆっくりと少しずつ勢いをなくしながらくぎを打つ。
もちろんそんな調子でやっていればくぎは絶対に刺さらない。
「はっはっはっ。ルリはおもしれェなァ!」
気づけばルフィが真後ろでルリを見ていた。
「ルフィさん。」
「そんなに怖がってちゃァできねェよ。いいか。よぉく見とけ。」
こうすんだ、というとトンカチを振りかぶった。
「いってェェェェェ!」
見事に親指にクリティカルヒットした。ルフィは目に涙をためてのたうちまわった。
「いやああああッッ!」
さらにルリを怖がらせただけだった。
「どうしたんだ、ルリちゃん……」
タイミングの悪いときにサンジが食器洗いを終わらせてやってきてしまった。
「ルリちゅわああああああんッッ!」
「ぎゃああああああッッッ!」
サンジが目をハートマークにしてルリを追い掛け回した。
相変わらず人間姿で逃げている。それだけ嫌だったら猫姿に戻るべきだ。
もっとも。ルリは自分が猫姿に戻っていることを忘れている。
「ナミちゃああああんッッ!どこぉぉぉ!?たーすーけーてぇぇっ!」
死に物狂いでナミを探し回った。
「あんのバカめ。猫にもどりゃァいいだろうが……」
ゾロがその様子を腕を組んでみていた。
「それにあのエロコック。マジでエロいな。」
「ああん?だぁれがエロコックだクソマリモめ。」
「お前だ。」
「あんだとコラ。」
その場でゾロとサンジのケンカが始まった。
(ふぅ。助かったァ……)
ルリは猫姿に戻り、二度とサンジの前では人間姿にならないことを誓った。