「あああ〜。もう少しいたかったぜ、ウィスキーピーク……」
サンジが土足のままテーブルに足を置いてタバコの煙を吹いた。
ナミはフンッというと今日の新聞を眺める。
ルリは、そんなサンジとナミを交互に見て、ははっと苦笑いをした。
あの時、正直ウイスキーピークは楽しくなかった。
お酒は飲めるけど、ゾロやナミのような酒豪ではないし、人間にいちゃいちゃ体を撫でまわされるのは好きではない。
屋根の上でぐちゃぐちゃになった体を丹念にブラッシングして、月を見た。
上弦の月より少し太ったような月。満月まであと少しと言ったところだろうか。
自分の耳についた不思議なものと、左足についたバンドのようなものをまじまじと見た。
「……ウソップさんのことは本当なのかな。」
ルリはウソップの顔を思い出した。相変わらずウソっぽい顔だ。
「満月の夜には妖怪になることはないんだろうけど。」
そうして、そっと妖怪に変化した。
自分の影を見た。ハァとため息をつく。
「そういえば、急に静かになったな。」
屋根からすとんと飛び降りた。さすが猫だ。これだけの高さから華麗に降りる。
目の前には、酔いつぶれたとみられるサンジ、ウソップ、そしてナミとゾロ。お腹を丸くして眠るルフィ。
「さ、3000万ベリー!?」
ブワッと毛が逆立った。後ろから大きな声が聞こえる。きっとルフィのことだ。
「殺してしまえば3割も値が下がる……」
(えっ、ど、どういうこと……?殺す?てことは……ル、ルフィさんが危ない!)
「なァ、あいつら寝かしておいてくれねェか……」
ルリの耳がピクリと動いた。屋根の上を見上げる。
「ゾ、ゾロさん!」
そういってハッと口を押えた。ここで声を出せばルリの存在がばれる。
「相手になるぜ、バロックワークス!」
(え、なに?バ、バロ?)
そのまま耳を澄ましてゾロの言葉に耳を澄ます。
聞けば、ここは賞金稼ぎが集まり、ここに来る海賊を金にしている、ということだ。ゾロもスカウトされたことがあるという。
ゾロの過去についてルリは聞いたことがない。いったい何をしていたのだろう。
「サボテン岩に……また一つ墓標が増える。殺せ!」