ルリは静かに話し始めた。
「わたしは妖怪です。ほら、ご覧のとおりしっぽが二つに分かれているでしょう。猫又というんですけど。」
自分の体の2倍の長さがあるようなしっぽをゆらゆらさせた。
「もちろん、人間にだってなれますよ。」
「マジかッ!」
ルフィが興味深々に聞いた。
そういうと、小さい猫の体からゆっくりと人間の姿に変わり始めた。
「メロリーン!」
サンジが目をハートにした。
ナミが呆れてため息をつく。ゾロは冷ややかな目で哀れなサンジを見つめた。
しかし、それも無理はなかったかもしれない。
猫姿の時とかわらない赤と青のすんだ切れ長だが優しさを感じる目に、真っ黒で柔らかそうなサラサラのセミロングを下のほうで二つに結んだヘアー。猫のように細長く白い手足を尊重する淡い黄色のワンピースを着ていた。もちろんルリのトレンドマークでもある水色のスカーフも。天使のような女の子が立っていた。
「フフフッ。サンジさんは面白いですね。」
また猫の姿に戻る。
サンジは悲しそうに指をくわえながらルリを見た。
「ただ……。」
ルリははっとした。
満月の夜のことを話そうとしてやめたのだ。
みんなわたしの本当の正体を知らないのだから、無害だと思われているからこんなに仲よく接してくれているのではないだろうか。もし本当のことを話したとして……もう仲よくしてくれないかもしれない―
「どうした?ルリ。」
ウソップがルリの目の前で手をヒラヒラさせていた。話が途切れ放心していたから不審に思ったのだろう。
「あっ、いえ、なんでもないです。」
ニコッとほほ笑んで見せた。何事もなかったかのように。
本当のことを話すのはやめよう。
ゾロは切れ長の目でそんなルリの様子を見ていた。
「えっと……あなたたちがいて、優しく看病してくれたおかげで命は救われました。あのまま拾ってくれなければ死んでいたかもしれません。本当にありがとうございます。何かお礼をさせていただけませんでしょうか。」
「じゃあ……」
ルフィがゆっくりと立ち上がった。
「俺たちの、仲間になれ!」
船の中はしばらくざざぁんという波の音だけが響いた。